任期終了隊員に帰国直前インタビュー (横沢あゆみ 職種:ソフトボール)
2024.06.03
アフリカ大陸の南部に位置するボツワナ共和国では、現在30名のJICA海外協力隊員が活動しています。そんな中、コロナ禍明けに派遣された隊員が、5月9日に2年の任期を満了して帰国しました。
帰国直前に、現役隊員からボツワナで過ごした日々についてインタビューさせていただきました。
本記事では、ソフトボール隊員としてボツワナソフトボール協会に派遣された横沢あゆみさんのお話を紹介します。
早速ですが、横沢さんの主な活動内容を教えてください。
首都ハボローネにあるナショナルスタジアムを拠点にして、ボツワナのソフトボールナショナルチーム男女のコーチやクラブチームの指導、若手アスリート育成プログラムでの指導をしていました。また草の根スポーツ開発プロジェクトに参加し、5歳〜15歳の子どもを対象にソフトボールの指導もしました。
以前は日本の実業団でソフトボールをプレーしていました。実業団を引退した後もソフトボールに関わりたい、海外に行きたいという気持ちがあり、海外でソフトボールができる方法を探していました。その中で、JICA海外協力隊を知り応募しました。
日本とボツワナのソフトボールに違いはありますか?
一番大きな違いは競技に対する考え方です。
ボツワナでソフトボールは非常に人気のあるスポーツです。ただ現状、ソーシャルスポーツとしては発展していますが、競技スポーツとしてはまだまだです。
日本では基礎から練習を始めて実践に移っていきますが、ここでは初心者も、基礎を学ぶことなく実戦から始まります。競技としての指導方法や環境が確立されていないため、選手育成が難しいです。
また、ボツワナのソフトボール界にはプロの選手はいません。全員本業があったり無職だったりして、ソフトボールだけで食べていける人はいないです。
ボツワナで、スポーツだけで生活できるのはサッカーや陸上などの本当にごく一部の選手だけになります。
なので日常的に試合に向けて練習しているクラブチームがなく、国代表チームは国際大会であっても試合の1ヶ月前から本格的な練習を開始するので十分な準備期間がありません。その中で世界大会で勝つことはとてもハードルが高く、難しいです。
一方、幅広い年齢層がソフトボールを楽しんでいたり、勝っても負けてもダンスをし、歌を歌ったりするところはソフトボールを純粋に楽しんでいて羨ましく思うこともありました。そこも日本との違いです。
ボツワナに来てよかったと思う瞬間、出来事はありますか?
帰国する直前に、男子選手の一人から長文のメッセージを受け取りました。そこにはコーチ(自分)との活動を通して彼が内面、外面共に成長したことへの感謝が書かれていました。
外面は技術的な面を指していると思います。内面については彼に直接聞いたわけではありませんが、自分がコーチとして関わった中で何か人間性的な部分の学びを感じメッセージにしてくれたのだと思います。
ソフトボールをやる以前に、時間を守ること、ソフトボールを好きでいなければ上手くなれないこと、競技を尊敬しなければならないこと、グラウンドがあることや審判がいること、競技を支えるものすべてを尊敬しなければならないことなどはよく伝えていました。
これらが少しでも彼らに伝わっていたなら、ボツワナに来てよかったと思います。
また、現地の人に求められる存在になれたことも大きいです。
先日、AYUMI YOKOSAWA's FAREWELL GAMESという自分の送別試合を開催していただきました。始球式に登板したり試合に選手として出場したり贅沢な1日を過ごしながら送り出してもらい、2年間を通して彼らといい関係を築くことができたんじゃないかと感じています。
帰国後のプランを教えてください。
派遣前はカンボジア人の技能実習生の日本への送り出し機関で働いていて、そこに再度就職する予定です。また、カンボジア代表の野球・ソフトボールチームへの指導にも関わる予定です。
ただカンボジアではまだソフトボールの代表チームがなく、帰国後最初の仕事が代表チームの選考会になります。技能実習生たちもこれから日本という外国に羽ばたこうとする人たちなので、ボツワナで活動した経験を活かしたいです。海外でマイノリティとして過ごした経験など、彼らに伝えられることがあるんじゃないかと思います。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
協力隊で活動する上で、理想主義が強いと大変だと思います。なんでこうじゃないの?と思うばかりだと、どうにもならないことが多くてしんどくなります。実際に現場を見て感じて、自分がやれることを全力でやる方が2年間を充実したものにできる気がします。
2年間を通して大切だと感じたことが3つあって、「『我慢』じゃなく『上手に流す』こと」、「変えられることに目を向けること」、「活動に捉われないで有意義な時間を過ごす」ことです。
日本ではこうだったという考えは海外では通じないので、相手に自分の考えを押し付けてはいけません。違いにストレスを感じて我慢するより、ある程度のところで割り切って流す必要があります。大半の人はここで生まれ育ってここで培ってきたものが当たり前なので、無理に変えようとしても変えられません。気持ちを切り替えて、自分が変えられることに力を注ぐのがいいと思います。
また、せっかく海外に来たからには、配属先の活動だけに注力するのではなく、ここでしかできないことにたくさん挑戦してみると充実すると思います。自分に向き合う時間を作ることもお勧めします。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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