ボツワナで見たごみ分別教育の難しさと必要性(伊藤きらら 職種:環境教育)
2024.10.02
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アフリカ大陸の南部に位置するボツワナ共和国では、現在31名のJICA海外協力隊員が活動しています。そんな中、2名の隊員が7月25日に2年の任期を満了して帰国しました。
帰国直前に、ボツワナで過ごした日々について現役隊員からインタビューさせていただきました。
本記事では、環境教育隊員としてトロッケン県庁に派遣された伊藤きららさんのお話を紹介します。
早速ですが、伊藤さんの主な活動内容を教えてください。
調査・教育・開発の主に3つの軸で活動していました。
まず『調査』では、継続的なゴミの減量化とゴミ分別を目的とした廃棄物管理システムを開発することを目標に据え、1日にどれぐらい、どんなゴミが出ているのか調査しました。
『教育』では、地域住民に向けて環境教育を実施しました。はじめは大人へ授業をしていたのですが、次第に子どもへの教育にシフトしました。私は配属組織にとって初めて派遣されたボランティアだったこともあり環境教育が全く実施されていなかったので、0から始めました。
最後の『開発』では、ゴミ分別を目的とした地域住民共用のゴミ置き場の建設を企画しました。残念ながら私の派遣中には完成しませんでしたが、現在建設中です。
2年間を通して、ボツワナ国内の他の隊員と協力する機会も多くありました。クリーンアップキャンペーンと題してゴミ収集のキャンペーンを実施したり、他の隊員の配属先で出前授業を実施しました。
これまでのキャリアと、環境教育を選んだ理由を教えていただけますか?
環境問題について、学生時代から開発途上国を訪れる中で強い関心を持ち、意識的に取り組んでいましたが、元々、文系だったので学問として取り組むことはなかったもののずっと自分の力で貢献したいという思いがありました。
一度目に派遣された*コスタリカに行く前は人材系の会社でコーディネーターとして働いていたのですが、自分の中でずっと国際協力の現場で環境問題に取り組みたいという気持ちがあり、思い切って退職して協力隊に挑戦しました。
*伊藤さんは2019年4月からコスタリカに派遣後、2020年3月に新型コロナ流行に伴い帰国。2022年7月より任国を変えボツワナに派遣された。
活動する上で直面した困難や、それを乗り越えた方法があれば教えてください。
派遣された当初は地域住民、大人に向けて環境教育をしていましたが「ゴミの分別をしたらお金を貰えるのか?」と言われるばかりでした。まずは配属先のカウンシルの職員にゴミ分別の方法を指導しようとした際にも、お金を貰えないなら取り組みたくないという人が多かったです。そもそも子どもの頃にゴミ分別やポイ捨てについて学んでいないので、大人になってから意識を変えることは非常に難しいです。
そこで、子どもへの環境教育にシフトすることに決めました。
しかし、学校で環境教育を始めた際、いざ学校で分別表記のついたゴミ箱を置いても意味がなかったのです。教育がまだ行き届いてないので、ゴミ箱を設置しても結局どのゴミもごちゃ混ぜにされてしまいました。
それにより本来の用途として設置するのではなく、授業の中で敎育用として使用することに決めました。
ボツワナに来てよかったと思う瞬間、出来事はありますか?
トラブルによりしばらく配属先に行けなかった時期があり、しばらくぶりの活動に少し緊張していた日がありました。そんな中、同僚たちは無邪気な笑顔で「おかえり!」と迎えてくれたんです。優しい人たちだなと改めて感じました。
またボツワナ人たちはみんな、月曜日に出勤しても朝から笑顔なんですよね。そんなところも素敵だなと思います。
帰国後のプランを教えてください。
環境問題について専門的に学びたいと思い、環境系の人材育成プログラムやフィールドワークの運営、自治体に政策提言を実施する環境NGOで勤務する予定です。
そして、来年からは環境マネジメント学の研究のため大学院への進学を検討しています。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
不安を恐れずに挑戦してみてください、絶対に世界が広がります。
私はサブサハラ以南のアフリカを旅行したことがなく、協力隊として初めてこの地域に来ました。
日本とはもちろん全く文化が違って、日本にいるだけではわからない、日本の良いところも悪いところも両方見えてきます。自分の価値観も変わり、かけがえないの無い一生もののたくさんの出逢いがありました。ボツワナに来て本当によかったと思います。
2年間は長いです。活動しなきゃ、何かやらなきゃと思ってついエンジン全開にしがちですが、ペース配分が大切です。何もしていないような感じても、実際は居るだけで小さな変化をもたらしているので、焦らず自分のペースを大切に活動してみてください。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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