ボツワナの教育に残せるものと、ボツワナから受け取るもの
2025.04.24
帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。
今回は、障害児・者支援隊員としてトロクェントロッケンにあるNGO アイ・アム・スペシャル・エデュケーション・ソサイエティへ派遣された上野大輔さんにお話を伺います。
上野さんの主な活動内容を教えてください。
通所型障がい者支援施設を運営するNGOのアイアム・スペシャルで障害児・者支援隊員として活動していました。施設には年齢別に分けられた2つのクラスがあり、私は主に各クラス担任のフォローを行いました 行っています。
施設では主に整理整頓や買い物の仕方、洗濯や調理をはじめとするライフスキルの向上と、体の動かし方やものづくり、そして挨拶や自己紹介といった簡単な会話などの活動に取り組んでいます。
協力隊としての大きな目標は、障がい児・者の自立につながる活動が現地スタッフにより継続的に実施されることです。
毎日一緒に活動することはもちろんですが、道具や本、動画の活用を提案することでスタッフが経験の幅を広げられるようにサポートしていました。
また、施設全体で20名ほどの小規模施設なので、一人ひとりに合った1対1の支援や声かけを行いました。
協力隊に参加されたきっかけを教えてください。
元々海外に興味があり、日本とは違う新しい視野を得るために参加しました。
実は今回が2回目の参加で、1度目は約10年前にフィジーへ派遣されました。この時は小学校教育隊員として、算数の指導を中心に活動していました。
ただ、家庭の事情で任期を短縮することになり、やや不完全燃焼のまま途中で帰国したんです。
日本へ帰国して現場に戻ったのち、特別支援学級の担任や通級指導教室の担当をする機会を得ました。
そして改めて今回、協力隊をやり切りたいという思いで、要請を障害児・者支援に変えて参加しました。
ボツワナと日本の現場の違いや、それらにどのように対応したのか教えてください。
これはNGO独特かもしれませんが、先生の入れ替わりが激しいこと、そして先生たちが非常に若いことが挙げられると思います。
赴任当初、施設には担任がおらず、アシスタントスタッフしかいませんでした。
数ヶ月経って、大学を卒業したばかりの新卒の先生や、大学で教職課程を履修中の先生が入ってきました。
そしてそれらの先生の多くは大学の卒業を控えていたり、公立の学校での雇用の空き待ちをしていて、数ヶ月で施設を去ってしまいます。なかなか先生が成長しにくく、ノウハウや知見が蓄積されにくい環境だと思いました。
それでも、自分と縁のあった先生たちが他の場所に行ったときに、自分との経験を通して少しでも自信をつけてくれたらという思いで活動しましたています。
関わった先生たちが配属先に長居しないとしても、旅立った先で力を発揮することで、回り回って自分の活動がボツワナの教育に貢献できていたら嬉しいです。
若い先生たちは、知識はあるものの実際の経験が不足しています。
道具を使い慣れていないので、道具を取り入れて活動をするイメージが沸かなかったり、やり方が分からず腰が重くなりがちです。
そこで、一緒になってまずやってみることを促し、備品や本を活用することに慣れてもらいました。ストレッチをやるだけだった運動の時間に、倉庫に眠った道具を引っ張り出してフラフープやトランポリンを取り入れたり、寄付されたまま眠っている絵本や図鑑に、空いた時間で触れてもらうようにしました。
しばらくすると、先生たちからの新しい提案も増えたように感じます。
ボツワナに来てよかったと思う瞬間、出来事はありますか?
日本にいるだけでは得られない視野を得られたのは、ボツワナに来てよかった理由の一つだと思います。
カリキュラムがなく、全て0から考えるボツワナでの活動の中で、人に会ったら挨拶する、名前を言う、名前を書く、物がいくらなのか認識するといった基本の大切さと、それができることは当たり前ではないということを改めて感じました。
日本だとルールをつけた外遊びやボール遊びに幼少期から慣れていること 方が多いので、小学校でもある程度体を動かせる子どもが多いのですが、ボツワナの子どもは運動する機会が非常に少ないです。ですので、体を動かし慣れていない利用者が多いです。
ものづくりにしても経験がないので、紙を半分に折るのも難しいという人もいます。
体を動かすのも、手先を使って何かを作るのも当たり前に出来ることではなく、成長の過程で触れていないと難しいのだと気づきました。
それらの基礎的な力をしっかりつけてあげることが、私たちにできる最も重要な支援のひとつだと思います。
また、ボツワナの雄大な自然に触れられたことも大きいです。
子どもたちが教科書や動画でしか見たことのない世界を、自分の言葉で伝えていきたいです。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
自分は2回目の応募を考えているときに新型コロナが流行してしまって、応募したくてもできなかった時期がありました。なので、挑戦してみたいと思っている人はぜひ、行けるなら思い切って行ってみることをおすすめします。
海外に住んで、そこに住む人と生活する感覚は体験してみないと分かりません。
ボツワナでの生活を通して、日本のいいところにもたくさん気づくことができます。
迷っていたらぜひ挑戦してみてください。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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