楽しさ×学びで成長を促進すると同時に、支え合う文化から学ぶ
2025.04.24
帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。
今回は、小学校教育隊員としてラモツァへ派遣された菊地純奈さんにお話を伺います。
早速ですが、菊地さんの主な活動内容を教えてください。
首都から車で1時間弱のラモツァという村にある、シハ小学校で小学校教育隊員として活動していました。私は主に算数を教えています。
2年間で、大きく分けて3つの分野に取り組みました。
1つ目は算数の基礎学力の向上です。中でも掛け算の習得を目指しました。
毎日の授業のうち15分ほど時間をもらい、グループ練習や練習したい段に分れての練習、定期的なテストなどを実施しました。
週1回の口頭テストや月1回の筆記テストを目標に頑張ってくれる生徒も多かったです。
掛け算は割り算や分数など他の計算にも応用できるので、小学校のうちに重点的に取り組む必要があります。
そして最終的に、掛け算の口頭テストの合格率は中間報告時の33%から、68.4%まで上がりました。
これにより、継続して指導すれば子どもたちの力はつくという結果が出たと思います。
2つ目は、学ぶことが楽しいと思える指導の工夫です。
着任当時は、座ってひたすら先生の板書を写す”チョークアンドトーク”の形式で授業が行われていました。それだと、なかなか内容が定着しないことも多いです。
ですので、身体を使って覚える工夫を取り入れました。
具体的には、指を使って数を数える文化がなかったため、自分の指を使って数を認識するやり方を教えたり、歌を作ってリズムで覚えたりするなどです。
授業開始前に準備体操をして、心と体の準備をするのも、授業への集中を促すには効果的でした。
最後は、算数科における基礎学力の重要性について現地教員に理解してもらうことです。
ただこれは難易度が高く、先生たちに指導法を見せる機会は作れたものの、先生自ら新しい方法を取り入れてもらうことは難しかったです。
一方で、時間を測って問題に取り組ませることや、図形の名前を実際の模型を使って覚えさせるなど、部分的に取り入れてくれる先生がいました。
協力隊に参加されたきっかけを教えてください。
小さい頃、社会科の教材に載っていたのをきっかけに協力隊を知りました。
その時は漠然と協力隊に行きたいと思っていたのですが、親から「何の技術もない状態で行ってどうするの?」と言われたんです。
いま考えると子どもに対してちょっと現実的すぎる気もしますが、新しいことを知るのが好きで、勉強も好きだったので、学校の先生になって協力隊に行こう!と考えるようになりました。
勉強の楽しさを知らないなんてもったいない、勉強の楽しさを伝えたいと思ったんです。
そして満を持して2019年にボツワナへ派遣されたのですが、新型コロナの流行をきっかけに4ヶ月で帰国することになってしまいました。
ただ、その4ヶ月間でボツワナが肌に合うと感じたので、再赴任の際も他の国ではなくボツワナに帰ってきたいと強く思いました。
念願叶い、またボツワナで活動できて嬉しかったです。
ボツワナと日本の違いを感じたエピソードがあれば教えてください。
ボツワナには「なんでもシェアする文化」があります。食べ物はもちろんのこと、所持している雑貨やお金など当たり前のようにシェアします。
特に学校だと大人も子どもも文房具の貸し借りが多く、なんでも貸してと言われることに当初は慣れませんでした。大切にしているものの所在が分からなくなることもありました。
ただしばらく生活してみると、ボツワナの人たちには物が”誰かの所有物”であるという感覚が薄いだけなのだと気づきました。
借りたことを忘れてしまうだけで悪気はなく、ちゃんと言えば返してくれますし、逆に自分が何かを忘れたときにも当たり前のように貸してくれます。
それが分かってからは気が楽になりました。子どもも貸し借りに慣れているので、滅多にトラブルになりません。
逆に、日本人は人に迷惑をかけないよう予備を持ったり、自分で解決しようとする文化なのだと気付かされました。
ボツワナの好きなところを教えてください。
人が優しいところです。子どもたちも愛情深く、素直に愛を伝えてくれて、2年間で一生分の「I love you.」と「O montle.(ツワナ語で”綺麗だね”)」をもらったと思います。
人のこともよく見ていて、少し疲れていたり落ち込んでいると変化にすぐ気づきます。
そして、ちょっとした変化を見逃さずに声をかけてくれるんです。
自分はそういう時に声をかけるのを躊躇ってしまいがちなのですが、ボツワナの人は「あなたのことを気にしているよ」という気持ちを伝えるのが上手だと思います。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
私のボツワナ生活では、人との別れが突然やってくることがありました。
サポートしてくれていた人や信頼していた人が急にいなくなってしまうと、精神的なダメージが大きかったです。
人を頼ることはハードルが高く感じてしまいがちですが、誰か一人に集中して頼るのではなく、勇気を出していろんな人に頼ってみるのが大切だと思います。
2年間と聞くと短く感じるかもしれませんが、私にとっては充実した価値のある時間でした。少しでも惹かれているならぜひ協力隊に挑戦してほしいです!
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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