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看護と調査を通して“健康を自分で守る力”を育てる

2025.05.22

帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。
今回は、コミュニティ開発隊員としてNGO Humana People to Peopleへ派遣された平野美晴さんにお話を伺います!看護師としてのキャリアを活かして、どのような活動をされたのでしょうか?


早速ですが、平野さんの主な活動内容を教えてください。

Humana People to Peopleは地域の人々の生活改善を目的としたNGOです。
主にHIV/AIDS罹患者の支援やSTDs(性感染症)の啓発、若年層のエンパワメントを行っています。
私はその中でもKweneng East地区のヘルス部門に所属して、主にAIDSの患者さんに対する服薬指導や生活支援、性感染症の啓発活動を行いました。

2年間の活動の柱は大きく分けて3つ「フィールド調査」「健康に関するセルフケア能力の向上」「若年層への保健衛生に関する啓発」と設定しました。

ボツワナにはデータや統計が不足していて、新しい取り組みを提案するにもその元になるエビデンスがありません。ですのでまず地域住民へ家庭訪問を行い、生活水準や経済状況の調査を試みました。

セルフケアの向上に関しては、健康に関する個別の指導やワークショップ、お便りの配布を行いました。
本当は前述したフィールド調査で得たデータを活用して、より需要に即したお便りを作成したかったのですが、データ収集が予想より難航して十分なデータを集められなかったことが残念です。

若年層への啓発では、モホディツァネの学校を中心に保健衛生関連の指導や性教育を行いました。
特に、信仰上の理由で通常の学校に通えない子どもたちのための場所であるOSET(Out of School Education and Training / 非学校教育・研修)では頻繁に授業やアクティビティを実施しました。
当初、性教育が初めてだった生徒たちの理解度は9%ほどでしたが、最終的に43%まで上げることができました。


ありがとうございます。平野さんは看護師としてのキャリアがありますが、今回はコミュニティ開発隊員として協力隊に参加されました。 これまでのキャリアと、協力隊に参加した理由を教えてください。

協力隊に参加する前は、都内の救命救急センターで働いていました。
救命救急センターという性質上なのか、JICAの国際緊急援助隊*に登録していたり、参加の経験がある人が多かったんです。
その影響もあり、医療従事者として国際協力へ参加することに興味を持ちました。
*海外で発生した自然災害や人為的災害に対して派遣される人的支援のこと

元々は2020年2次隊で看護師としてボリビアに派遣予定だったのですが、新型コロナの流行に伴って派遣中止となってしまいました。
2022年に再挑戦を決めたものの、当時はコロナの影響で看護師職種の要請が極めて少なかったんです。
その中で、看護師の資格を活かして活動できる要請をボツワナで見つけ、コミュニティ開発として募集されていた今回の要請に応募しました。


活動する上で大変だったことはありますか?

私の要請が募集された時点ではとあるHIV/AIDS啓発プロジェクトのメンバーとして私のポジションが予定されていたようなのですが、配属されたときには「もうすぐそのプロジェクトは終わる予定だ」と言われてしまいました。
結局そのプロジェクトは4回ほど期間の延長を繰り返しましたが、関わっているプロジェクトがいつ終わるのか、いつまで続くのかが分からない状況は不安でしたね。
プロジェクトが延長になるたびに少しずつ同僚が雇えなくなって減っていってしまったこともあり、孤独に活動している期間が長かったことも精神的にきつかったです。
そういった唐突な周りの変化に、精神的に振り回されることが多かったですね。

また、コミュニティ開発という職種の特徴でもありますが、配属組織がイコール日々の活動先ではありません。あくまで活動する先は地域コミュニティであり、自分で外部の協力者を見つけなければなりません。
ボツワナの人々は穏やかで、表面上はウェルカムですが、実際に信頼関係を築くにはもちろん時間がかかります。
「私」という個人を見てもらい、信頼してもらうのには苦労しました。


ボツワナの好きなところを教えてください

ボツワナの人たちは誰かを助けることに躊躇いがありません。
道やコンビ(ローカルバス)乗り場が分からず困っていて、助けてもらったことは数えきれません。
特に印象的だったのは、断水や停電のときに水やろうそくを分けてもらったことです。持つ人は、持っていない人に当たり前のように分け与えてくれます。
様々なトラブルに直面したとき、周りにいる知らない人が必ず助けてくれました。そんな純粋な優しさが好きですね。

また、動物の豊かさも好きなところですね。
この2年間を通して、ボツワナの様々な場所を旅しました。
BIG5という、危険で同時に貴重な野生動物の代表を指す言葉がありますが、それに含まれるライオン、バッファロー、サイ、ゾウ、ヒョウの全てを見ることができました。
ボツワナの中でも彼らに会える場所やタイミングは限られているので、会えてよかったです!


これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!

協力隊として活動する中で、本当に様々なキャリア・志をもつ人たちと出会いました。
様々なバックグラウンドをもつ人たちとの関わりを通して、人として成長するとてもいい機会になりました。
私は同期と呼べる人がボツワナにはおらず、はじめは不安な気持ちもありましたが、協力隊の期を超えた縦のつながりにいつも支えられていました。
活動もはじめは難しそうに感じるかもしれませんが、現地の人もみんな助けてくれて、やってみるとなんとかなることも多かったです。思い切って挑戦してみてください!


インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)

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