ボツワナの作家たちの世界を拡げるために(松澤咲会 職種:コミュニティ開発)
2025.10.03
帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。今回はコミュニティ開発隊員としてセロウェ県庁へ派遣された松澤咲会さんにお話を伺います。地域の起業家たちと共に、どのような活動をされたのでしょうか?
松澤さんの活動内容や、取り組んだことを教えてください。
セロウェ県庁で、貧困削減を目的とした小規模ビジネス支援を行いました。最初から順調にいったわけではなく、1年目はなかなか思うように活動が進みませんでした。しかし2年目にコミュニティディベロプメント課(自治体運営を担う課)からホームエコノミクス課(家政課)へ異動したことをきっかけに、本格的に貧困削減プログラムに取り組むことができました。
活動の柱は「調査」「スモールビジネス支援」「市場拡大」の3つです。調査では、部署のモニタリングに同行し、地域の水耕栽培やファームなどを訪問しました。
スモールビジネス支援では、アーティスト、養蜂家、テイラーの3名を支援しました。。例えば、寄付用に布のテディベアを制作していたアーティストは観光向けの商品へと発展させ、養蜂家は廃棄されていた蜜ろうを活用してリップバームなどの化粧品を開発しました。テイラーは余った布の切れ端から、手に取りやすい小物を製作しました。こうした取り組みを通して、低コストで新しい価値を生み出す方法を一緒に模索しました。また、新商品を販売する際には価格設定や利益の考え方についても指導しました。
ボツワナには「技術を持っていても市場が小さい、あるいは存在しない」という課題があります。私自身、外国人として暮らすなかで「ボツワナらしいお土産が少ない」と感じていました。その課題に向き合うため、セロウェの起業家たちの商品をJICAボツワナ支所で販売し、新しい市場を開拓しました。さらに、任地セロウェの観光地であるカーマライノサンクチュアリでの販売も目指しましたが、残念ながら任期中には実現できませんでした。今は現地スタッフに託しており、将来的な実現を期待しています。
これまでのキャリアと、協力隊に参加したきっかけを教えてください。
私は現職参加で、勤務先を休職してボツワナに来ました。日本ではメーカーで資材調達を担当していました。高校時代から国際協力に関心があり、大学では日本語教育を専攻しました。就職後も「いつか国際協力で海外に行きたい」という思いは消えず、電車広告などで協力隊の募集を見るたびに気持ちが強くなっていきました。社会人としての経験を活かせる「コミュニティ開発」という職種で、協力隊に参加しました。
ボツワナで活動する上で大変だったことや、日本との違いはありますか?
トラブルが起きたときに、必要な情報にアクセスできないことがよくありました。例えば長時間の断水についてどこで情報を得ればいいのか分からなかったり、長距離バスが道中で急に止まった際に何が起きたのか分からなかったり…。多くのローカル情報は住民同士のネットワークやFacebook、あるいは現地語のツワナ語で共有されるため、最初は苦労しました。それでも、ボツワナの人たちはとても穏やかで親切です。困っているときは、近くにいる人や近所の人が自然に助けてくれました。
ボツワナでの生活を一言で表すと?
「豊か」な生活です。東京で働いていた頃は常に時間に追われていましたが、ボツワナでは自分のために使える時間がたくさんありました。料理をゆっくり作って食べる、裁縫を楽しむといった何気ないことが心を満たしてくれました。ボツワナの人たちは時間の流れにもとても穏やかで、時には日本人としてハラハラすることもありましたが、人間らしい生活を送るなかで「自分の時間を大切にできることこそ豊かさだ」と実感しました。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
私が大切にしていた言葉は「情けは人の為ならず」です。1年目に活動がうまくいかなかったとき、転機となったのは他部署の職員の手伝いでした。彼女の裁縫トレーニングの事務作業をサポートしたことで、後に異動する部署との縁ができたんです。そのときは自分の活動と直接つながらなくても、後から何かの形で返ってくることもあるかもしれません。現地の人々との交流を楽しんで、なんでもやってみると良いと思います。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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