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子どもたちに”実験という体験”を届けたい(後藤高明 職種:小学校教育)

2025.11.18

帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。今回は小学校教育隊員として、首都ハボロネのキャンプ小学校へ派遣された後藤高明さんにお話を伺います。長年の理科教育の経験を、ボツワナでどのように生かされたのでしょうか?


後藤さんの主な活動内容を教えてください。

全生徒850名規模のキャンプ小学校で、理科と算数の学力向上を目指して活動しました。1年生から7年生まで4クラスずつあり、理科は3年生以上、算数は全学年を担当しました。

理科の課題は「実験」でした。ボツワナの教科書にも実験単元はありますが、赴任当初、先生方にリサーチしたところ、ほとんど行われていませんでした。そもそも教科書が不足しているので、先生が教科書の内容を黒板に書き、生徒がそれを写すだけで終わってしまう状況だったのです。そこで私は、実験の指導に重点を置くことにしました。

日本では授業は45分で、内容によっては理科の実験は2コマ連続で行うのが一般的です。時間割も詰まっているため、きっちり時間内に終わらせる必要があります。一方、ボツワナの時間割はあってないようなもので、内容が一区切りするまでやるのが一般的。一つの単元にじっくり時間をかけられる点は良いところだと感じました。

日本での長いご経験を経てボツワナへいらっしゃいましたが、協力隊に応募したきっかけを教えてください。

小学校と中学校で理科を教えていて、定年退職をきっかけに協力隊へ応募しました。実は数十年前、協力隊には大学を卒業したときに応募したのですが、教員採用試験に合格したため辞退したという過去があります。

私は海外に限らず、新しいことや自分が体験したことがないことを経験したいと思うたちで、海外の日本人学校での勤務も経験しました。そこでは、帰国する協力隊の剣道隊員から引き継いで、現地の人にしばらく剣道を教えるという機会がありました。学校での勤務だけでなく、現地の人と新しいことをやるという経験が非常に楽しく、そこからいつか必ず協力隊に行こうと思っていました。


ボツワナで活動する上で大変だったことや、日本の現場との違いはありますか?

大きな違いは現場の先生たちの経験値の違いです。理科の教え方や実験のやり方を知らない先生が多く、私が実験をすると私に任せて教室を出て行ってしまう先生も多かったのです。そこで、学習指導案を作成することにしました。授業の内容を1〜2枚のペーパーにまとめて配ることで、ただ授業を見学するだけでなく私が何を教えているかを理解してもらい、かつ「ここであなたに意見を求めるよ」と先に伝えておくことで、先生の参加も促しました。先生方には実験はもちろんですが、グループでの話し合いや協力の仕方、子どもたちへの発問の様子も見てもらいたかったのです。なかにはグループ学習の補助に入ってくれる先生も出てきました。

実験を教科書で読むだけなのと、実際にやってみるのでは大きな違いがあります。例えば教科書には水の沸点は100℃と書いてありますが、ハボロネでは100℃を待たずに沸騰します。それはハボロネが標高1,000mほどの位置にあり、気圧が低いためなのです。こういったことも、実際にやってみないと分からないですよね。

こうした活動の結果、3〜7年生のうち、途中で先生が何度も代わるなどの問題があった6年生を除く全てのクラスで理科の成績がアップしました。全員が50点以上を取ったクラスも出たんです。先生も喜んでくれて嬉しかったですね。


ボツワナの好きなところを教えてください。

一言でいうと平和なところです。もちろん犯罪もありますが、自然災害がほとんどなく、人口が少ないこともあっておおらかで、ストレスフルな人をあまり見ません。この2年の間に1966年の独立以降初めての政権交代が起こりましたが、暴動が起きるわけでもなく平和的に移行したのには驚きました。

また、困ったら助けてくれる、親切な人たちにも恵まれました。特に印象的なのは大雨と突然の突風で家の屋根が飛んでしまった時です。予想外のトラブルに家は大変なことになりましたが、近所の人が総出で助けに来てくれて、大家さんもすぐに避難用のホテルを用意してくれました。

大らかすぎるあまり、時間にルーズな側面など困ることももちろんありますが、それよりも彼らの優しさが多く記憶に残っています。

これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!

協力隊に関しても、それ以外のことでも、少しでも気持ちがあるなら一歩踏み出してみてください。まず一歩踏み出さないと、何も変わりません。実際にここまで来てしまえば、いいことも悪いこともすべて思い出になります。うまくいかないことがあっても意外となんとかなります。ただ、くれぐれも無理はせず、ストレスをためすぎないようにやってみてくださいね。

インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)

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