二度目の協力隊で挑んだ「技術移転」の再チャレンジ(井口昭夫 職種:小学校教育)
2025.11.24
帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。今回は小学校教育隊員として、メツィモタベのセラメン小学校へ派遣された井口昭夫さんにお話を伺います。協力隊は二度目だという井口さん。どのようなモチベーションでボツワナへいらしたのでしょうか?
井口さんの主な活動内容を教えてください。
メツィモタベという町のセレメン小学校に、小学校教育隊員として派遣されました。私は主に算数を担当し、先生の指導技術と子どもの学力向上を目指して活動しました。セレメン小学校には幼稚園から7年生まで約950名の児童が通っており、幼稚園には週1回、小学校には2週間に2回ほどの頻度で、全28クラスの授業を受け持っていました。
特に力を入れたのは、たし算・ひき算で使う「さくらんぼ計算」や、かけ算の九九の指導です。ボツワナでは指を使って計算することが多く九九を教えないため、計算に非常に時間がかかってしまいます。そこで、計算方法に慣れてもらえるよう、貸し出し用計算ドリルを合計950冊ほど作成し配付しました。内容は各学年の進度に合わせ、ボツワナの教科書だけではなく日本の問題集も参考にし、7種類のバージョンを作成しました。同じ単元でも問題を変えて何度も練習できるように工夫しました。
また、先生たちへ指導法を共有するためのワークショップも行いました。授業を見せるだけでは、どこがポイントなのか、私が何をしているのかが分からないまま終わってしまいがちで、なかなか彼らの授業に反映されません。私が直接クラスに入れる時間も限られているので、担任の先生が日常的に教え続けてくれなければ、せっかく導入した計算法も定着しません。結局は、長く子どもに関わる担任の先生がどれだけ本気で向き合うかが重要です。
ひとつ後悔があるとすれば、ワークショップを開始した時期が遅かったことです。ワークショップをもっと早いタイミング、例えば1年目の前半から始められていれば、さらに先生たちも動きやすかったかもしれません。
あわせて「日本と日本人」というテーマで国際理解の授業も実施しました。ボツワナと日本は距離があり、日本について知る機会は多くありません。日本はこんな国で、自然があって…という紹介を通して、異文化に触れ、子どもたちのアンテナを伸ばしてもらうことが目的でした。
協力隊に応募したきっかけを教えてください。
実は派遣されるのは今回が2回目です。1回目は約40年前、パラグアイへ体育隊員として派遣されました。パラグアイには派遣期間の延長も含めて3年間いましたが、先生の代わりに働くばかりで、技術移転ができなかったという心残りがありました。
前回は中南米への派遣でしたが、アフリカにも強い興味がありました。子どもがまだ小さい頃は「家庭内総合的学習」と称し、2週間ほど子どもと海外を旅するのが我が家の恒例行事で、アフリカを旅先に選ぶこともありました。しかし、短い滞在では生活者としての視点や現地の人との深い繋がりは生まれづらかった。だからこそ、しっかり住んで、友達を作り、その土地に馴染んで暮らしてみたかったんです。
定年後にも新しい学びをしたいという気持ちと、1回目の派遣時に達成できなかった技術移転に再挑戦したいという想いに背中を押され、応募を決めました。
ボツワナで活動する上で大変だったことや、日本との違いはありますか?
生活に慣れるまでの1年目は大変でした。雨が降ると雨漏りして虫もわくし、教育省から支給された冷蔵庫は故障していて冷凍しか使えないし…。小さなトラブルが積み重なって、なかなか落ち着きませんでした。活動先でも先生たちと親しくなれず、日本とは違う時間感覚や、口約束がなかなか守られない文化にも直面しました。その環境に順応するまでには時間がかかりましたね。
ただ、そんな環境にも次第に馴染んでいきました。家に虫が入らない対処法を覚え、プライベートでも会える信頼できる友人ができたことで、暮らしやすさは大きく変わりました。
子どもたちもピュアで人懐っこく元気をもらいました。私の直毛が珍しいのか、小さい子たちだけでなく、高学年の7年生の生徒にまで髪の毛をよく触られていましたね。
ボツワナの好きなところを教えてください
ボツワナの気候や自然が好きです。雨が少なく晴れている日が多く、空気が乾いていて爽やかな気候です。それが影響しているのかは分かりませんが、明るく、よく笑い合う人が多い印象です。
そのなかでも、お互いをリスペクトし合える友人と出会えました。お互いの場所で頑張って、5年後にまた会おうと約束できる友人と出会えたことは、本当に嬉しいです。
前回は3年間パラグアイにいましたが、残念ながら一生付き合える友人はできませんでした。任地が日系人の多い移住地だったため、語学の壁がない楽さから、活動時間以外はパラグアイ人との関わりが減ってしまったんです。その後悔があったからこそ、今回は「現地の人々と交流する、現地の友人を作る」ことを意識していました。
これから協力隊に参加する隊員や応募を考える方へのメッセージ、アドバイスをお願いします!
私は任期中に首のヘルニアの治療のため一時帰国し、結果として約2ヶ月ほど活動が止まってしまいました。この経験から、何より「健康」は大切だと実感しています。
また、派遣されても文化の違う環境では思い通りにならないことがたくさんあります。思い通りにならない時こそ、どう動くかが大事です。一生懸命、誠実にやるだけやって、それでもダメならいったん諦める。そこで切り替えて次に活かせるかどうかが重要だと思います。
インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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