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転換期にあるボツワナとともに(殿川広康支所長)

2026.01.20

アフリカ、アジア、大洋州、北米、中南米、中東、欧州と、JICAは世界中に拠点を置いています。今回は、JICA海外協力隊としてボツワナに派遣中の隊員が、JICAボツワナ支所の殿川広康支所長へインタビューを行いました。日本から24時間をかけて辿り着く国・ボツワナで、JICAはどのような活動をしているのか、また支所長から見たボツワナについてお聞きします。

1. これまでのキャリアと、 JICA ボツワナ支所長としての役割を教えてください

日本の電機メーカーで勤務した後、途上国や海外に関わりたいと思い、中途採用でJICAに入職しました。ネパールやフィリピン、セントルシア事務所での勤務を経験したのち、2024年4月にボツワナへ赴任しました。現在は支所長として勤務しています。

ボツワナ支所は規模が小さく、日本人4名とボツワナ人5名で運営しています。そのため、支所長も必然的にプレイングマネージャーの役割を担うことになり、業務は支所のマネジメントを中心に、協力隊を含む技術協力や円借款の案件形成、隊員や専門家のサポートなど、多岐にわたります。

隊員や専門家など、ボツワナ支所に関わる人たちをつなぎ、相乗効果を生み出していくことも役割の一つです。また、隊員をはじめとして、ボツワナで活動している方々のことをもっと発信していきたいと思っています。


2. JICA ボツワナが取り組んでいる事業を教えてください

日本政府が定める国別援助方針に従い、いくつかの事業を進めています。その中でも力を入れているのが「産業の多角化」です。ボツワナは世界有数のダイヤモンド産出国ですが、それゆえに経済がダイヤモンド産業に依存しています。数十年以内に枯渇すると言われているダイヤモンドに頼らない経済構造を目指し、新しい産業の振興を支援しています。

特に中小企業の振興は大きな課題で、資金協力と技術協力の双方を組み合わせて行っていく予定です。直近では「観光産業促進のための協力」として、日本から専門家を派遣し、マカディカディ塩湖周辺地域の観光商品開発や観光統計の整備を支援しています。

ボツワナには塩湖や国立公園などの雄大な観光資源があり、国を支える一大産業の一つですが、その価値を十分に活用できているとはいえません。また、観光関連のデータは十分に活用できる形で提供されていません。魅力的な観光商品が開発され、政府や観光事業者がデータを活用できるよう支援しています。

また、再生可能エネルギーに関する事業にも取り組んでいます。ボツワナは他の多くの国と同じく、石炭をはじめとする化石燃料を主な電力源としています。再生可能エネルギーは現状、全体の11%しか使われていませんが、政府は2030年までに50%まで増加させることを目指しています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの民間投資を促進するため、専門家を派遣し、民間投資の阻害要因になっている課題の解決を支援しています。

協力隊事業では、産業の多角化に加えて、「貧困削減および生活の質の向上」にも取り組んでいます。ボツワナはアフリカの中では高中所得国に位置しますが、依然として失業率が高く、都市と地方の経済格差も大きいです。そうした格差の是正のため、支援を行っています。


3. 所長として働くなかで、ボツワナという国をどのように感じていますか?

今この瞬間を切り取ると、ボツワナは大きな転換期にあると感じています。ダイヤモンド産業に支えられて順調に発展を遂げてきましたが、人工ダイヤモンドとの競合、ダイヤモンドの枯渇、需要の減少など、さまざまな課題を抱えています。今後、ダイヤモンド産業が大きく飛躍することは難しく、これまでのように依存し続けることはできません。

ボツワナは他のアフリカ諸国と比べても社会福祉が充実しており、社会セクターへの投資が多い国です。しかし、財政状況の悪化により政府の社会セクターに対する予算削減も起こっています。限られたリソースのなかで新しいやり方を見つけるため、協力隊や専門家の技術支援を活用してもらいたいです。産業の多角化にあたり、JICAのような開発パートナーが果たす役割も今後さらに大きくなっていくのではないでしょうか。そしていずれ、現在の公的部門に頼る経済構造から、民間主体の経済構造へと転換していく必要があります。

4. ボツワナの好きなところを教えてください

ボツワナの方々は、自国をとても大切に思っていると感じることが多いです。陸上のテボホ選手のオリンピック金メダル獲得など、近年の大きなニュースの際には、特に強いボツワナ愛を感じました。失業率は高いものの、国外へ出ていこうとする人は比較的少ない印象です。また、道ですれ違うとあいさつや会釈をしてくれるなど、初対面の人にもフレンドリーでとても心地よいです。先月、日本に一時帰国しましたが、顔見知りでないご近所の方とは目を合わせず、あいさつもしないことが多く、少し寂しく感じました。日本の皆さんにも、安全で、人が穏やかなボツワナという国が地球の反対側にあることをもっと知ってほしいです。


5. 最後に、読んでいる方へのメッセージがあればお願いします

ボツワナと日本は物理的に遠い国です。ボツワナの方々にとっても、日本はあまり馴染みのない国だと思います。そんな遠いボツワナで活動しているJICA海外協力隊や専門家の日本人の存在を、ボツワナの皆さんにもっと知ってもらえたらうれしいです。また、日本の方々にもボツワナのことを知ってもらいたいと思っています。今後も、ボツワナで活躍する日本人について発信していきます。

◼︎ インタビュアー帰国に際して

ボツワナに派遣された2024年から、「帰国隊員インタビュー」と称してJICA海外協力隊隊員へのインタビュー記事を企画・執筆してきました。今回が帰国前最後のインタビューとなりましたので、コメントさせていただきます。気づけば2年間で20人へインタビューを行い、今回の殿川支所長で21人目となりました。

ボツワナで皆さんが描いた十人十色の軌跡を贅沢にも直接聞くことができ、またJICAのソーシャルメディアという場所で執筆できたことは、活動とは別軸でまた一つ忘れられない経験となりました。また、いつかこのインタビューが、これから協力隊やボツワナにいらっしゃるどなたかの後押しになれば大変うれしいです。今回が、私が執筆する最終回となりますが、同じマーケティング隊員の金子さんが引き継いで執筆していきますので、ぜひ今後も読んでいただけたらうれしいです。


インタビュー・文:藤井ゆきこ(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)

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