「共創」で広がる養殖の未来ー世界銀行「PDC2V」×JICA「PREPICO2」、世銀の支援により3地域で種苗生産を支援(2025年9月)ー
2025.10.01
2025年9月上旬から中旬にかけて、JICAコートジボワール事務所は、世界銀行「食料バリューチェーン開発プロジェクト」(Projet de Développement des Chaînes de Valeur Vivrières:PDC2V)と連携し、内水面養殖の種苗(稚魚)生産に関する共同セミナーを実施しました。本セミナーは、世銀が資金提供し、JICA技術協力プロジェクト「養殖魚バリューチェーン開発を通じた内水面養殖再興計画プロジェクト」(Project for Revitalization of Continental Fish-Farming through development of the aquaculture fish value chain phase 2:PREPICO2)から技術移転されたカウンターパートが講師として参加する形で実施されました。対象3地域(Aboisso、Abengourou、Gagnoa)のうち GagnoaはPREPICO2の協力対象外であるものの、世銀との共創を通じて、日本(JICA)の協力による開発効果と知見が水平展開された事例となりました。
本セミナーでは、稚魚の生産、飼料(餌)の準備及び給餌方法、飼育・水質の管理、飼育記録の方法等、実践的な養殖技術に係る知識について、講義と実習を通じて学び、民間の種苗生産者や公的種苗センター関係者など、最大3回のセミナーを通じて計109人が参加しました。当日は、JICAのPREPICO2を通じて技術移転を受けたコートジボワール動物・水産資源省(Ministere des ressources animales et haluetiques:MIRAH)のカウンターパートが講義を行いました。
本研修のポイントは、PDC2Vの資金支援と、PREPICO2の技術支援を組み合わせ、世銀による投資の効果をJICAの技術で支える体制(資金×技術の共創)を構築したことです。また、PREPICO2の対象外地域であるGagnoaでも研修を実施し、プロジェクト対象外地域への開発効果・JICAが持つ技術的知見の水平展開を実現しました。
今後は、共同研修のみならず、PDC2Vの資金支援を受けた養殖事業者の事業拡大計画に対して、PREPICO2が技術支援を行う予定であり、さらなる共創の深化が期待されます。
JICAは、「共創(Co-Creation)」を通じて、現地の行政、住民、民間、そして国際パートナーと対話と実践を重ねながら課題解決に取り組む姿勢を大切にしています。今回のように、ともにアフリカの開発協力を目指す他機関の資金とJICAの技術協力が補完し合うことで、単独では生み出せない成果を現場にもたらすこと、それぞれの強みを持ち寄って、現地の変化をともに支えることが、私たちの目指す共創のかたちの一つと考えます。
JICAコートジボワール事務所は、今後も実施中のPREPICO2を軸として、引き続き水産養殖に関わる行政や開発パートナー、民間と連携しながら共創を広げ、コートジボワールにおける食料安全保障と持続的な経済発展に貢献していきます。
コートジボワールを含むギニア湾沿岸諸国では、地理・経済・文化的背景などから伝統的に魚食嗜好が強く、安価かつ安定した動物性たんぱく質の供給源として魚の干物・出汁などが好まれています。他方、当国では、国内の水産物生産量(漁獲・養殖)が需要を満たせないことから、水産物輸入に大きく依存しています。事実、国内の水産物需要(消費量)約70万トンに対して、国内生産は約9.2万トン、養殖は約8,500トン規模にとどまり、約86%を国外からの輸入に依存しています(2023年)。内水面養殖(海面ではなく内陸の水面で行う水産養殖)は、当国の食料安全保障・持続的経済発展の実現や、貿易収支の改善や雇用創出の観点からも重要な分野として注目されていますが、制度的環境の未整備、資金・優良養殖資材へのアクセス不足、養殖事業者の生産・経営能力の不足といった課題により、ポテンシャルを活かしきれていない現状があります。
こうした背景のもと、JICAは2021年より、コートジボワール政府(MIRAH)と協力して、PREPICO2を実施しています。PREPICO2は、主に南東部6州を対象に、種苗生産や養殖技術の普及、経営管理、流通改善などを包括的に支援する技術協力プロジェクトとして、内水面養殖業の振興を通じて、養殖魚生産量の増加を目指しています。
一方、PDC2Vは、世界銀行が支援する農業バリューチェーン開発プロジェクトであり、主に農業セクターの競争力向上と雇用創出を目的としていますが、キャッサバ、野菜、養殖の3つの優先開発サブセクターを対象に、有望な事業計画への資金支援(Fonds à Coût Partagés:FCP)やインフラ整備などを展開しています。
2024年、PREPICO2とPDC2Vは協力覚書(MOU)を締結し、両プロジェクトが持つ強み―PREPICO2の技術支援と「現場」での経験、PDC2Vの資金と広範囲でのプロジェクト活動―を補完的に活用することで、より広域かつ持続的な効果の創出を目指す共創体制を構築しました。今回の共同セミナーは、その連携の具体的な第一歩となりました。
PREPICO2による講習
実習の様子その1
実習の様子その2
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