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Hau nia Tasi, Hau nia Timor(私の海、私のティモール)

2024.06.14

Hau nia Tasi, Hau nia Timor(私の海、私のティモール)

2023年度3次隊/東ティモール・環境教育
實 亜里紗

 毎年6月8日は国連が提唱するWorld Ocean Dayです。この日、東ティモールでも“Hau nia Tasi, Hau nia Timor(私の海、私のティモール)”という海洋プラスチックゴミの啓発イベントが首都Diliで開催され、環境教育隊員である私も、配属先の環境総局の同僚と一緒に参加しました。

 参加目的は、ゴミのポイ捨てに対する啓発活動、並びに分別ゴミ箱の紹介でした。ゴミ箱は配属先の環境総局と一緒に作成したものです。東ティモールはまだゴミ収集所および回収システムが十分整っておらず、日常的にゴミを道端にポイ捨てする様子が散見されます。首都のDiliにおいて特に目に入るのはプラスチックゴミで、ポイ捨てされたペットボトルが道路、川や海岸に溢れているのは日常茶飯事です。一説によると、ゴミ収集所以外にポイ捨てされているゴミの量は、全体の45%にのぼるとも言われているほど、ゴミのポイ捨ては同国において深刻な問題となっています。

子供たちに分別ごみ箱を紹介する様子

海岸に打ちあがっている多数のプラスチックゴミ

 私の所属する環境総局は、東ティモール国内の学校やコミュニティを訪問し、環境教育に関する出前授業を行っています。私も時々授業を担当するのですが、現地の方や子どもたちとの交流から、彼らがポイ捨てする原因は教育機会の不足によってもたらされているのではと感じてきました。例えば授業を通じて、プラスチックゴミは自然分解されるまでに数百年もの時間を要すること、海の中で粉砕されマイクロプラスチックになり、その誤飲等によって多くの海洋生物が影響を受けていること、そして最終的に人間の健康被害にまで及ぶこと・・・。これらの事実を伝えると、大人も子どもも真剣に耳を傾けてくれます。そしてゴミのポイ捨て、特にプラスチックゴミのポイ捨てが、環境に対しても住民に対しても悪影響であるとすぐに理解します。とある小学校では、授業後に生徒たちと一緒に校内のゴミ拾いをした際、生徒たちが皆両手いっぱいに拾ってきたゴミを自慢し、一生懸命に1つ1つ分別する様子を見せてくれました。その時の光景が今も強く印象に残っています。

両手いっぱいのゴミを抱える子供たち

拾ったごみと一緒に記念撮影

 今回のイベントにおいても、最初は分別ゴミ箱を見て戸惑っていた子どもたちが、少し説明を聞くと、ゴミ箱に貼ってあるデザインを見ながら、しっかりと紙とプラスチックを分けて捨てることに協力してくれました。どう分別するのか耳打ちしながら相談する子どもたちの姿は楽し気でもあり、ゴミを捨てる子供たちは自慢げでもあり、同僚も私も自然と笑みがこぼれました。
東ティモールには、少年に助けられたワニが少年とともに世界を旅し、太陽が昇る東の果てでワニの命が尽きたときティモール島になったという伝説があります。イベント中、ラモス・ホルタ大統領はこの物語に言及しながら、「東ティモールは海から生まれた国であり、海がなくては東ティモールは存続できない。自然を自分たちの手で守ることは、自分たちの祖国を守ることなのだ」と述べていました。このイベントが、子どもたちが少しでも自分を取り巻く環境問題について考えるきっかけになればと思います。

ペットボトルはペットボトルのゴミ箱へ

ゴミ分別してハイタッチ!


 正直に言えば、東ティモールのゴミ問題はポイ捨てのみならず、処理施設やリサイクル企業の不足など、多くの課題が併存しているのが現状です。ですが、この国の環境問題に立ち向かい、豊かな自然と海を守り、未来に残そうと奮闘している東ティモール人の方々が多くいることも事実です。そして子どもたちも少しの知識ときっかけを提供すれば、環境問題を考え、自分たちなりに取り組もうとする素直な心を持っていることに、今までの活動を通じて実感してきました。私自身、環境教育隊員としてこの国のために何ができるのか、まだまだ考えあぐねる日々ですが、東ティモールの同僚や友人と一緒に、ワニから生まれたこの国が自然と共存しながら発展していく様子を傍らで応援していきたいと思います。

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