七夕フェスティバル――ヘアアレンジで将来の美容師が収入体験
2024.07.22
2023年7次隊 山内ゆりか
美容の力、特にヘアアレンジで、現地の美容師の収入源の選択肢を増やして収入向上し、同時にヘアアレンジを通して顧客の自己肯定感も高める――。これこそが、私がJICA海外協力隊のコミュニティ開発隊員として東ティモールに来ることを決意した理由です。
私は東ティモールに派遣される前に美容業界で働いており、日本の美容サロン業界におけるヘアアレンジのニーズの高まりやスタイルの多様化を現場で感じてきました。私自身もヘアアレンジがきっかけで自分に自信を持てるようになったことから、ヘアアレンジを通じた自己肯定感の向上と美容師の収入向上に大きな可能性を感じていました。
東ティモールは、約4人に1人が1日$2.15以下で暮らす絶対貧困ラインにいます※1※2。美容師の収入向上の1つの方法として、ヘアアレンジの可能性は日本のみならず、途上国でも効果的なのではないかと考えていたため、それを証明したく東ティモールで活動することを決めました。
※1 生きるうえで必要最低限の生活水準が満たされていない状態(World Vision)
https://www.worldvision.jp/children/poverty_18.html#d0e9d87eb78fa54e47cd213ca7606442
※2 東ティモールの人口の24.4%が絶対貧困(World Bank)
ttps://data.worldbank.org/country/timor-leste
東ティモールでは、運よく、女性のエンパワーメントを主軸に置いて活動しているヘアサロンに出会うことができ、現在は、美容師2名と、そのサロンが運営する美容師のトレーニングコースに通う学生10名の計12名にヘアアレンジを教えています。小国ならではのご縁のめぐり合わせもあり、ショッピングセンターで子ども用の屋内遊び場を経営している方から、ヘアアレンジのイベント開催のお声がけをいただきました。実施予定時期が7月と決まりカレンダーを見たところ、今年の七夕が偶然にも日曜日だったため、ヘアアレンジの他にも日本の七夕文化を感じられるようなイベントにすることにしました。
サロンでの活動様子
七夕イベントのフライヤー
イベント実施が決まってからは、美容師と美容学生に向けてイベント用のヘアアレンジ集中講習の開始です。イベント当日は4スタイルのヘアアレンジから好きなヘアアレンジを選んでもらって施術する流れに決め、時間内にクオリティを保ったままヘアアレンジできるような練習をしました。
彼女たちは、私がヘアアレンジしている手元を動画に撮って家で自主練習をしてきたり、授業の休憩時間を返上して練習に励むなど、非常に熱心に取り組んでいます。
ヘアアレンジ集中講習の様子①
ヘアアレンジ集中講習の様子②
このイベントにおいてもう1つの大きな目的がありました。それは「彼女たちが自分のスキルでお金を稼ぐ体験をする」ことです。特に、美容学生はまだ自分でお金を稼いだことのない人がほとんどのため、彼女達が目指している美容師という職業の素晴らしさを感じてもらうためにも、お店のオーナーに当日来場するお客さまにヘアアレンジを施す彼女たちの技術に対して報酬を出してもらえないか交渉しました。
2024年7月7日、いよいよ七夕イベントの日がやってきました。イベントでは3つのブース、七夕にちなんだ折り紙を折る『折り紙ブース』、願い事を短冊に書いて笹に飾る『笹飾り体験ブース』、そして彼女達の『ヘアアレンジブース』を用意しました。イベントは大盛り上がりで、約100名の方が来場し、日本の七夕を感じながらヘアアレンジを通してより素敵な自分に出会う瞬間を創ることができました。ふと会場を見渡した時に、大人も子どもも、会場にいるみんながヘアアレンジをしていて、目頭が熱くなりました。あんなに多くの方がヘアアレンジで可愛くなっていった日は東ティモールで初めてだったのではないかと思いました。あの光景はこれから先も私の中で色褪せることはないでしょう。
イベント後、彼女たちは人生で初めてのお給料を受け取り、「自分のスキルでお金を稼ぐ」経験を積むことができました。詳細な金額は伏せますが、理解あるオーナーのおかげで、現在東ティモールにおける終日単発アルバイト相当額の報酬を受け取ることができました。
当日の給与明細
私の東ティモールでの任期はのこりあと1年です。このまま行動し続け、少しでも多くの「ゼロ→1」を創り出して彼女達が美容師として輝く機会を作るとともに、ゆくゆくは彼女たち自身でそのきっかけも創り出していけるように、収入向上とともに自立促進のお手伝いをしたいです。直近の目標は、彼女達とヘアショーを実施したいと考えています。
「ヘアアレンジは美容師の収入向上と自立に寄与し、エンパワーメントにもなる」と私は自分の経験から強く信じていますが、東ティモールでの活動を通して示し、体現したいと思います。
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