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スポーツは言語〜UNDOKAIを通じて学んだこと〜

2024.12.24

スポーツは言語〜UNDOKAIを通じて学んだこと〜

2022年7次隊 東ティモール派遣 
職種:体育 
大坂 嘉奈子

 私たちはこれまで東ティモールの体育教育の向上のために、「UNDOKAI」を計2回実施してきました。3回目となる今回、陸上短距離4大会五輪出場、リオ五輪男子4×100m、リレー銀メダリストの飯塚翔太(ミズノ)選手と豊田裕浩コーチ(中央大学)が東ティモールを訪問し、UNDOKAIに参加して頂きました。

 UNDOKAIを企画した当初はまさか飯塚選手が東ティモールに来られることなど全く考えていなかったため、今回の訪問は夢のようでした。

 UNDOKAIを実施するにあたり、事前準備含め約3ヶ月かけました。資料・道具作成、ミーティング、各参加校への説明を大学生が実施、事前に当日の動きの確認などをおこなってきました。「飯塚選手が訪問されるから実施する」のではなく、われわれが実施するイベントに飯塚選手が参加するという形で今回実施しました。前日に体育隊員と飯塚選手、豊田コーチで簡単な打ち合わせをおこない、私たちの考えや目的を共有し、共通理解を得た上で本番に臨みました。

生徒たちと一緒に走る飯塚選手(ミニ陸上教室にて)

そしてUNDOKAI当日。

 UNDOKAI開始の1時間ほど前に、飯塚選手と豊田コーチによるミニ陸上教室を実施していただきました。当日の参加人数が直前まで分からなかったのにも関わらず、その場で臨機応変に対応され、早く走るために必要な体の使い方をシンプルにわかりやすく指導していただきました。東ティモールの子どもたちは恥ずかしがりな子やシャイな子たちが多く、始めは緊張した様子でしたが、飯塚選手と一緒に走ったときに彼らの表情が輝き始めました。その様子は普段の授業で見たことがない表情だったことを今でも覚えています。

 ミニ陸上教室終了後、いよいよUNDOKAIが始まります。

 UNDOKAIには体育隊員が活動している中学校1校と高校3校、計4校の生徒約60名と、これまで一緒にUNDOKAIをしてきた体育学部の大学生(5名)が運営メンバーとして参加しました。加えて多くの隊員も手伝いに来てくれました。

 日本から今回のために作成していただいたミズノのロゴと中央に大きく「UNDOKAI」の文字、日付、飯塚選手と豊田コーチの氏名が入ったオリジナルのハチマキをつけ、いざUNDOKAIへ。

 障害物競走・玉入れ・綱引き・リレーの4種目を実施し、全種目、飯塚選手に参加していただきました。障害物競走は両足ジャンプから始まり、ハードルを飛び越え、タイヤを転がし、吊るされているパンを口で取ってゴールします。最後のパン食いで使用するパンは料理隊員の配属先の焼きたてパンを使用しました。パンは大人気で、また食べたいという声が多くあがりました。このような形で普段あまり関わることがないほかの職種の隊員とコラボすることができて嬉しく思います。

料理隊員が作ったパンを使用した障害物競走

 どの競技も盛り上がりましたが、一番盛り上がりを見せたのは「綱引き」でした。飯塚選手が参加した学校が綱引きで優勝した時の盛り上がりは、まるで日本のUNDOKAIでした。生徒とともに喜びハイタッチをする様子がとても印象的でした。
 そして、UNDOKAIの定番といえばやはりリレーということで、最終種目でリレーを組み込みました。室内で実施したこともあり、長い距離が取れずカーブが多めになってしまいましたが、それでも飯塚選手の走りは圧倒的で会場にいたすべての人たちの心を掴みました。

一番の盛り上がりをみせた「綱引き」

 会場は予想以上の盛り上がりをみせて、大成功を収めました!

 責任感や協調性、チームワークや仲間を思いやる気持ちを身につけてほしいと思って始めたUNDOKAI。始めてみれば、説明などいらないくらい子どもたちは自然に楽しんでいました。私たちがやりたかったことを飯塚選手とともに実現できたように思います。

 東ティモールの公用語はテトゥン語です。飯塚選手はテトゥン語を話すことはできませんし、今回参加したティモール人のほとんどは日本語を話すことはできません。しかし、UNDOKAIやスポーツ、競走・勝負を通じて間違いなく彼らの心は通じ合っていました。それは、飯塚選手が積極的に子どもたちに話しかけ、全力で競技に取り組む姿勢が彼らの心を動かしたのだと断言できます。

「スポーツは言語」を飯塚選手が証明してくれました。

 飯塚選手は「また東ティモールに来たい。その時は、陸上競技場でリレー大会を行いたい」と言っていただきました。いつかまた飯塚選手が東ティモールを来訪し、本当にリレー大会ができる日が来ることを期待したいです。

 今回、飯塚選手が東ティモールに訪問し、UNDOKAIを実施できたことはこの国に、ひいては子どもたちにとっても私たちの今後の活動にとっても大きな一歩になりました。
 UNDOKAIを実施するこができた次の課題はいかに"継続"していくかです。次の課題に向けて私たち隊員も活動に取り組んでいきたいと思います。

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