jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

北中米太平洋沿岸部における巨大地震・津波複合災害リスク軽減に向けた総合的研究

プロジェクト名
北中米太平洋沿岸部における巨大地震・津波複合災害リスク軽減に向けた総合的研究

協力形態
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

テーマ
災害リスク軽減

プロジェクト対象国
エルサルバドル、メキシコ

プロジェクト対象地域
アカフトラ(エルサルバドル)
マンサニージョ(メキシコ)

協力期間
2024年4月~2029年3月

カウンターパート機関
エルサルバドル国立大学(UES)
メキシコ国立自治大学(UNAM)

その他協力機関:
ホセ・シメオン・カーニャス中米大学(UCA)、環境天然資源省環境監視総局(MARN/DGOA)、総務省市民防災局(DGPC)、
国立防災センター(CENAPRED)。

日本側実施機関
京都大学


プロジェクトの背景
 エルサルバドルは複数の地殻プレート上に位置し地震活動が盛んな地域であ る。近年では 1986 年と 2001 年に発生した地震が大規模な被害をもたらし、特 に 2001 年 1 月と 2 月に発生した 2 度の地震では、併せて死者 1,259 人、約 150 万人が被災し、経済損失は 19.4 億米ドルに達したと言われている。更に、地震 に伴う津波被害もこれまで数多く発生しており、特に 2012 年には、ウスルタン 沖で M7.3 の地震に伴い、2m の津波がヒキリスコ湾に到達し、100 人を超える 負傷者、及び多大な経済的被害をもたらした。
 一方、メキシコも、西部太平洋側で太平洋プレートの下にココスプレートが 沈み込んでいることから、海溝型巨大地震とそれに伴う津波のリスクが世界で 最も高い地域の一つである。2017 年 9 月 7 日には南部チアパス州沖合を震源と する M8.2 の地震が発生、また 9 月 19 日に首都近郊のモレロス州を震源とする M7.1 の地震が発生し、371 人が構造物の崩壊等によって死亡、4,000 人が負傷 し、両地震による経済損失は 20 億米ドルに及んだと推計されている。2022 年 9 月 19 日にメキシコ中西部ミチョアカン州沖合で発生した M7.6 の地震では、コ リマ州及びメキシコ市内で数名が死亡した他、メキシコの沿岸で最大 79cm の 津波を観測している。このように、メキシコにおいても、地震観測と地震・津 波に係るリスク軽減策を講じていくことが求められている。
 これまでの当該国の政策や JICA の協力等によって、地震・津波災害に対する エルサルバドルとメキシコの防災能力は向上しているものの、両国の太平洋沿 岸部には持続的発展に不可欠な物流拠点となっている国際港湾都市が形成され、 これらの地域においては地震・津波による直接的な被害のみならず、火災や化 学物質の流出、津波による被害の拡散、サプライチェーンを介した地域的・地 球規模的経済被害が懸念されている。係る事由から、本プロジェクトでは、エルサルバドルのアカフトラ市、メキシコのコリマ州マンサニージョ市を対象に、 地震と津波に対する減災対策として、工学的リスク軽減策と避難戦略・リスク コミュニケーション手法を新たに開発し、相手国の政府や地方自治体、民間企 業の防災施策へ反映することを目指している。


目標
【上位目標】
総合的複合災害リスク評価結果に基づく被害軽減策が、相手国 政府、及び地方自治体、民間企業の防災施策に反映される。

【プロジェクト目標】
地震・津波シナリオに基づく総合的複合災害リスク 評価手法が開発され、工学的リスク軽減策と避難戦略・リスクコミュニケー ション手法が政府、地方自治体、民間企業に提案される。

期待される成果
成果1:中米海溝の地震発生帯すべり挙動の解明。
成果2:地震・津波に起因する港湾都市の複合災害リスク評価。
成果3:減災対策能力の向上と社会実装の提案。

活動内容
成果1に係る活動:中米海溝の地震発生帯すべり挙動の解明。
1-1. 海底地震・測地観測による沈み込み帯浅部すべりの解明。
1-2. 陸上地震・測地観測による沈み込み帯深部すべりの解明。
1-3. 温度構造モデリングに基づくプレート境界べり挙動の物 理的解明。
1-4. 地震発生シミュレーション。

成果2に係る活動:中米海溝の地震発生帯すべり挙動の解明。
2-1. 地震のハザード評価。
2-2. 津波のハザード評価。
2-3. 暴露データ(危険物施設・貨物・経済活動関連施設)の収 集と脆弱性の評価。
2-4. 地震・津波火災、化学物質流出、サプライチェーンを介し た経済被害を含めたリスク評価。

成果3に係る活動:減災対策能力の向上と社会実装の提案。
3-1. 工学的対策による複合災害リスク軽減効果の評価。
3-2. 効果的な避難計画の策定。
3-3. 実装のためのマルチステークホルダー向け普及セミナー。
3-4. リスクコミュニケーションツールの開発と実装。