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シャーガス病制圧のための総合的研究開発プロジェクト

プロジェクト名
シャーガス病制圧のための総合的研究開発プロジェクト

協力形態
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

テーマ
保健医療

プロジェクト対象地域
サンサルバドル

協力期間
2018年4月~2024年3月

カウンターパート機関
エルサルバドル国立科学研究センター(Centro Nacional de Investigaciones Cientificas de El Salvador: CICES) (教育科学技術省)(協力省庁:保健省)

その他協力機関:
エルサルバドル大学医学部、薬化学部、CENSALUD、保健省血液銀行・国立衛生研究所、国立ロサレス病院、国立サンタ・ヘルトゥルーディス病院、ホセ・マティアス・デルガド大学微生物学部、エルサルバドル・エバンヘリカ大学、エルサルバドル自然史博物館。
日本側実施機関
群馬大学大学院保健学研究科、大阪公立大学大学院医学研究科、東京大学医学部循環器内科、慶應義塾大学薬学部、 高崎健康福祉大学薬学部等


プロジェクトの背景
 エルサルバドル共和国(以下「エルサルバドル」という)では、人口の約 3.4%(約 23 万人)がシャーガス病に感染しているとされており、他の中米諸国(平均約 2.0%)と比較し感染者が多い(WHO, 2006)。シャーガス病の病態は未だ解明されていないことが多く、現存するシャーガス病治療薬は慢性期の病態に効果が低い、副作用が強い、長期投薬が必要、母子感染の予防に使用できない等の課題を抱えている。
 エルサルバドル政府はシャーガス病を含むベクター媒介性感染症(媒介虫によって広がる感染症)の撲滅を優先課題に掲げ、JICA の支援のもと「シャーガス病対策計画プロジェク ト」(2003 年 9 月~2007 年 9 月)、「シャーガス病対策プロジェクトフェーズ 2」(2008 年 3 月~2011 年 2 月))を実施し、媒介虫、媒介虫対策や住民参加型監視システムの構築を行い、新規感染者やサシガメの生息家屋率の低減という大きな成果を挙げた。また、その後CICESを対象とした「シャーガス病治療薬開発プロジェクト」(2011 年 8 月~2013 年 8 月)を実施し、本SATREPSは「シャーガス病治療薬開発プロジェクト」の後継であり、エルサルバドル国内におけるシャーガス病治療薬開発を進めるための課題である基礎生命科学研究に係る支援を、日本の大学との協同研究という形で継続するために実施された。


目標
【上位目標】
エルサルバドルにおいてシャーガス病に関する研究開発が進展する。

【プロジェクト目標】
エルサルバドル側研究機関のシャーガス病に係る研究開発能力が強化される。

期待される成果
成果1:シャーガス病の原虫側病原因子候補が同定される。
成果2:シャーガス病治療薬候補(IMD化合物、GTN化合物、BZL誘導体、その他)の臨床開発に向けた基盤が強化される。
成果 3:植物資源よりシャーガス病治療薬のリード化合物が獲得される。

活動内容
成果1に係る活動:シャーガス病の原虫側病原因子候補が同定される
1-1. エルサルバドル国内の媒介昆虫、血液バンクと病院の臨床検体、およびや近隣諸国の媒介昆虫から原虫を分離し、遺伝子解析により株・種の分類を行う。
1-2. 1-1のデータに基づいて分子系統樹を作成する。
1-3. 1-1のデータをトリパノソーマ遺伝子データベースに記録する。
1-4. Y株及び種々の株のルシフェラーゼ発現原虫「光る原虫」を作成する。
1-5. バイオイメージングにより原虫の感染部位や原虫量を検出できるシャーガス病慢性期動物モデルを構築する。 
1-6 シャーガス病感染動物モデルの実験、維持、管理に関するマニュアルを作成する。
1-7. 病原因子の候補遺伝子をCRISPR/Cas9でノックアウトした原虫を作成し、KO原虫感染マウスにおける病変を解析する。
1-8. エルサルバドルにおいて成果1に掲げられた研究テーマを進めるための研究計画を立てる。

成果2に係る活動:シャーガス病治療薬候補(IMD化合物、GTN化合物、BZL誘導体、その他)の臨床開発に向けた基盤が強化される。
2-1. エルサルバドルの流行地分離株を用い、 in vitroおよびin vivo により、IMDまたはGTN化合物の既存薬のと併用による抗原虫効果を検証する。
2-2. in vitro アッセイ系を用い、IMD 化合物(IMD-0354、IMD-1041、IMD-560)の作用 機序を解析する。
2-3. 1-5で構築した慢性期動物モデルにおけるマウス血液中原虫数、バイオイメージングによるはっ発光強度、 組織内原虫数、病理変化との相関を解析し、IMD-0354、 IMD-1041、IMD-560とGTN化合物の薬効を評価する。
2-4. BZL誘導体等やその他の化合物を合成し、抗原虫作用を検証する。
2-5. GTNの誘導体を合成し、抗原虫作用を検証する。
2-6. GTN候補化合物の細胞への透過性を測定し、薬物動態試験に必要な情報を得る。
2-7. 化合物の分子作用の順序を特定することができる。
2-8. GTN化合物および/またはIMD化合物の最終候補について、毒性試験等を行う。
2-9. エルサルバドルにおいて成果 2 のテーマに関する研究を進めるための研究計画を立案する。
2-10. プロジェクトの内容や成果に関する情報を、製薬会社や関係機関(近隣諸国を含む)と共有する。

成果3に係る活動:植物資源よりシャーガス病治療薬のリード化合物が獲得される。
3-1. 文献レビューから入手可能な抗原虫作用を示す植物を40-50種類に絞り込む。
3-2. 植物材料を用いてエキス、フラクションを作製し、作製したエキス、フラクションのin vitroでの抗原虫活性スクリーニングを行う。
3-3. in vitroで原虫増殖阻害濃度(in vitro で 1 mg/ml 以下の原虫増殖抑制濃度 基準(IC50 値)を満たす)を行い、その部分の活性成分を単離し、構造を決定する。
3-4. 単離した活性化合物のin vitroおよびin vivoで抗原虫作用の評価を行う。
3-5. エルサルバドルにおいて成果 3 に掲げられた研究テーマを進めるための研究計画を立案する。