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生活改善アプローチに基づいた東部地域地方開発能力強化プロジェクト

プロジェクト名
生活改善アプローチに基づいた東部地域地方開発能力強化プロジェクト
(通称:プロジェクトPASO)

協力形態
技術協力プロジェクト

テーマ
農業・農村開発

プロジェクト対象地域
東部地域12市町村
第1グループ:モラサン県トロラ市、ホアテカ市、チランガ市、グアタヒアグア市、ウスルタン県メルセデス・ウマーニャ市、サン・ミゲル県セソリ市
第2グループ:モラサン県サン・イシドロ市、エル・ロサリオ市、カカオペラ市、ウスルタン県ヌエバ・グラナダ市、テカパン市、サン・ミゲル県サン・アントニオ市

(2024年6月より自治体が改変され、262市から44市に減少。上記プロジェクト地域は改変前のもの。)

協力期間
2018年1月~2023年1月

カウンターパート機関
地方開発省(MINDEL)


プロジェクトの背景
 エルサルバドルでは、都市部と農村部の経済格差が問題となっている。コーヒー栽培を中心とした農産物輸出を伸ばし、経済を発展させてきたが、その過程で他中米諸国と同様に寡頭階級と貧困層との間の大きな格差が形成された。特に都市部と農村部の経済格差は顕著であり、1世帯当たりの都市部の絶対的貧困率は6.4%、相対的貧困率は23.5%であるのに対し、農村部の平均はそれぞれ10.4%、27.2%である。特に、東部地域(モラサン県、ウスルタ ン県、サン・ミゲル県、ラ・ウニオン県)は、内戦の被害が最も大きかった地域であり、長い間、開発から取り残されてきた。また、この地域は世帯収入が低いため、海外移住家族からの送金への依存度が高いという特徴もある(送金受給世帯割合は、全国で約25%、東部地域では約34%)。東部地域の貧困問題解決のため、「エルサルバドル東部地域の持続可能及び包括的開発マスタープラン」があり、社会開発を含む6つの開発プログラムで構成され、同マスタープランの下、各種開発事業が実施されている。
 当国の社会開発プログラムの実施機関であった地方開発社会投資基金(FISDL)は、国家開発5カ年計画に基づき、社会開発部地方開発課を設置し、地方開発への取組を強化した。地方開発においては、市役所の能力強化が重要であることから、FISDLは2015年7月から2年間、東部地域の6市を含む全国10市を対象に、「生活改善アプローチに基づく社会プログラム実施のための地方自治体能力強化プロジェクト」と題したパイロット・プロジェクトを実施し、持続可能かつ自立発展的な社会開発プロジェクトの実施を目的とした。このプロジェクトでは、住民グループを対象とした活動を実施し、市役所との関係強化、住民の自助努力に基づく住居改善、食習慣の改善、水源の環境改善、コミュニティ内の社会的弱者への支援、現金収入の向上といった成果を上げた。
 これを踏まえ、将来的に自立的かつ持続的な社会開発事業を実施できるようにするため、自治体に生活改善アプローチを導入することが有効であり、このアプローチに基づいた開発事業の実施能力を強化が必要と考えられた。こうした背景から、エルサルバドルにおける生活改善アプローチに基づいた、東部地域での参加型地方開発モデルを構築するための技術協力プロジェクト「生活改善アプローチに基づいた東部地域地方開発能力強化プロジェクト」が実施されている。
(2021年12月、エルサルバドル政府の政策変更により、地方開発社会投資基金(FISDL)は解散し、社会開発部門は地方開発省(MINDEL)に移管された。)


目標
【上位目標】

東部地域において、地域開発マネジメントを実施するために必要な組織的・人的能力が強化される。

【プロジェクト目標】
生活改善アプローチに基づいた計画立案を中心に据えた地域社会開発マネジメントの枠組み・仕組み(モデル)が確立される。

期待される成果
成果1:パイロットプロジェクト市に存在する(公的・民間)機関の間に、家族及び集落において自律的なプロセスを生み出すための視点として、生活改善アプローチが普及される。
成果2:パイロットプロジェクト市の社会開発に貢献する要素の一つとして、生活改善アプローチに基づいた集落開発計画作成プロセス及び集落開発計画と市開発計画の連動が促進される。
成果3:異なるレベルの計画立案(集落と市)から導き出されたニーズに基づいて公的・民間機関との組織間連携が促進される。
成果4:市職員向けの地域開発及び生活改善に係る研修計画がデザインされ、実施される。
成果5:経験の体系化から、「手引書」が作成され、その後、検証、利用される。

活動内容
成果1に係る活動:パイロットプロジェクト市に存在する(公的・民間)機関の間に、家族及び集落において自律的なプロセスを生み出すための視点として、生活改善アプローチが普及される。
1-1. パイロット市に存在する公的・民間機関のステークホルダーマップを作成・更新する。
1-2. パイロット市に存在する公的・民間機関へ生活改善アプローチを普及するために、その内容と手段を確定する。
1-3. 普及計画をデザインする。
1-4. 普及に必要なマテリアルを作成する。
1-5. 普及計画を実施・評価する。

成果2に係る活動:パイロットプロジェクト市の社会開発に貢献する要素の一つとして、生活改善アプローチに基づいた集落開発計画作成プロセス及び集落開発計画と市開発計画の連動が促進される。
2-1. パイロット市における社会開発活動プロセス(分析、計画立案、実施、モニタリング・評価)の現状確認を行い、問題点を抽出して改善計画を集成する。
2-2. 対象となる市で、集落開発計画を立案する際に使用される集落調査の既存の方法を整理してまとめる。
2-3. 「集落開発計画作成手引書」を作成・更新する。
2-4. 社会開発普及員及び集落リーダーの研修計画を作成・更新する。
2-5. 研修計画に沿って、社会開発普及員(プロジェクト担当チーム)と集落リーダーに対する研修を実施する。
2-6. 更新された「集落開発計画作成手引書」に沿って、市役所によって選定された集落において集落開発計画(PACO)のプロセスが実施される。
2-7. 集落開発計画(PACO)と市開発計画が連動する。

成果3に係る活動:異なるレベルの計画立案(集落と市)から導き出されたニーズに基づいて公的・民間機関との組織間連携が促進される。
3-1. 公的・民間機関が地域内で果たす役割と、それらの機関が集落及び市の計画の策定にどのように貢献できるかを特定する。
3-2. 集落開発計画及び市開発計画で定められた社会開発事業を実施するために、特定された公的・民間機関との調整のメカニズムを確立する。
3-3. 集落開発計画及び市開発計画において設置された5つの領域の改善に貢献するために、公的・民間機関と共に確定された活動を実施する。

成果4に係る活動:市職員向けの地域開発及び生活改善に係る研修計画がデザインされ、実施される。
4-1. 市役所プロジェクトチームの職員のために研修計画を作成し、承認する。
4-2. 研修のために、職員を特定する。
4-3. 研修計画を実施する:講習会、国内・国外における経験共有会を実施する。

成果5に係る活動:経験の体系化から、「手引書」が作成され、その後、検証、利用される。
5-1. 「手引書」作成のために、プロセスを体系化する。
5-2. 「手引書」の最終版を作成し、正式に承認する。