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- エルサルバドル国立女性病院における「科学的根拠に基づく人間的出産ケアプロジェクト」
プロジェクト名
エルサルバドル国立女性病院における
「科学的根拠に基づく人間的出産ケアプロジェクト」
協力形態
JICA草の根技術協力事業(JICA Partnership Program:JPP)
テーマ
保健医療
プロジェクト対象地域
サン・サルバドル県(国立女性病院)、
その他全国の産科病棟のある国立病院
協力期間
2018年3月~2023年4月
カウンターパート機関
エルサルバドル国立女性病院
JICA草の根技術協力事業(JICA Partnership Program: JPP)として、東京大学が実施機関として活動を行った。
その他、第三国協力機関:
プロジェクトの背景
エルサルバドルの施設分娩率は97.8%(エルサルバドル保健省, 2021)に上り、ほとんどの女性が病院で出産している。プロジェクト開始前、病院に入院した妊産婦は一人ベッドで横になり、陣痛が始まったらベッドから離れたり、飲食さえも許されない環境で“管理”されてきた。これらは決して科学的根拠に基づいたケアではなく、単なる病院の決まりとして何年も継続されてきた管理方法であった。
そのため、本プロジェクトを通してエルサルバドル国立女性病院を対象に、科学的根拠に基づく女性のニーズに合わせた出産ケアを実施することで母子にとってより安全かつ優しいケアを実現するため、院内スタッフへの研修を重ねた。
本プロジェクトでは東京大学が実施機関となり第三国であるブラジルの協力も得て、エルサルバドル国立女性病院にて科学的根拠に基づく出産ケアの実践が推進された。さらに、エルサルバドル国内では時を同じくして出産のヒューマニゼーションに関連する法律が制定されたことにより、全国の病院における出産ケアが大きく改善されつつある。
目標
【上位目標】
エルサルバドル国の妊産褥婦と新生児の健康状態が改善される。
【プロジェクト目標】
エルサルバドル国立女性病院における 妊産褥婦・新生児医療サービスが向上す る。
期待される成果
成果1:国立女性病院の医療従事者の科学 的根拠に基づいた出産の生理学的 プロセスに関する知識が強化され る。
成果2:M国立女性病院において、妊産褥婦・ 新生児への人間的なケアが、標準的 ケアとして提供される。
成果3:妊産婦の出産満足度と幸福感の向 上のために必要なプロセスや技術 が、標準的な人間的出産のケアモデルとして、エルサルバドル国内の他施設へ波及 する。
活動内容
成果1に係る活動:国立女性病院の医療従事者の科学的根拠に基づいた出産の生理学的プロセスに関する知識が強化される。
1-1. 日本人専門家が、国立女性病院の医療従事者を対象に、低リスク女性へ提供する科学的根拠に基づいた産科医療・ケアに関するセミナーを行う。 セミナーを通じて獲得した知識は、ベースライン調査、中間評価、終了時評価で評価される。
1-2. 国立女性病院の医療従事者が、国立女性病院で提供されている産科医療・ケアの実態を、科学的根拠により推奨されている産科医療・ケアとの比較を 通じて把握する。
1-3. 国立女性病院の医療従事者が、ブラジルで実施されるトレーニング・コースに参加し、科学的根拠に基づいた産科医療の理論について学ぶ。
1-4. ブラジルでの研修を受けた医療従事者は、科学的根拠に基づいた妊産褥婦・新生児へのケアを国立女性病院に適合化させ、On the Job Training (以下、OJT)を通じて、国立女性病院の医療従事者に伝えていく。
1-5. ブラジル人および日本人専門家は、科学的根拠に基づいたケアの普及を目的に、国立女性病院で実施されるプロジェクト活動を評価する。
1-6. 国立女性病院の医療従事者と日本人専門家は、ベースライン調査、中間評価、終了時評価を通じて、効果的かつ実現可能な形で人間的出産ケアの ガイドラインを適応するための、堅実で現実的なデータベースを獲得する。
成果2に係る活動:国立女性病院において、妊産褥婦・新生児への人間的なケアが、標準的ケアとして提供される 。
2-1. 国立女性病院の医療従事者が、ブラジルでのトレーニング・コースに参加し、そこで実施されている妊産褥婦・新生児への人間的ケアの実践について 学ぶ。
2-2. 国立女性病院の医療従事者が、国内トップ・レファラルの専門病院として期待される役割と需要を考慮しながら、国立女性病院独自の人間的な出産の 概念を明確に述べられるようトレーニングする。
2-3. 国立女性病院の医療従事者が、低リスク女性に対するケアとして、人間的ケアが導入されるためのアクションプラン・研修計画・モニタリング計画を 作成する。
2-4. 国立女性病院の医療従事者と日本人専門家が、人間的出産プロジェクトの進捗を、アクションプランに沿って定期的にモニタリングする。
2-5. 国立女性病院の医療従事者と日本人専門家が、妊産褥婦・新生児への人間的ケアを実践するための資機材設置等を通じて、分娩室の環境を整備する。
2-6. 女性病院のブラジルの研修参加者が主体となり、臨床研修生を対象に、妊産褥婦・新生児への人間的なケアに関するワークショップを行う。 ワークショップは、産科領域の解剖学的モデル(産科シュミレーショ人体モデル)を用いながら実施する。
成果3に係る活動:妊産婦の出産満足度と幸福感の向上のために必要なプロセスや技術が、標準的な人間的出産のケア・モデルとして、エ国内の他施設へ波及する。
3-1. 保健省は、その他の国立病院の医療従事者に人間的出産に関するトレーニングを実施する。国立女性病院は、場所や人的資源の条件が合えば、 供与された解剖学的モデル(産科シミュレーション人体モデル)を、事前に調整のうえで、保健省に貸し出す。
3-2. 国立女性病院のブラジルの研修参加者は、日本人専門家の技術的支援を受けながら、他地域の国立病院の医療従事者を対象に、国立女性病院での インターンシップの機会を提供する。
3-3. 既存の保健省ガイドライン、「産婦人科臨床ガイドライン」に現在人間的出産の概念が含まれていないため、日本人専門家は、プロジェクト進捗に 合わせ、ガイドライン改定時には追加してもらえるよう、検討を促す。
3-4. 国立女性病院等の医療従事者と保健省は、プロジェクト進捗を評価するため、日本人専門家と年に一度集まる
3-5 日本人専門家は、保健省と PAHO の承認を得て、出産に関連した WHO ガイドライン(西語版)を公的出版するほか、教育教材を開発し、 国立女性病院等の施設に配布する。
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