エルサルバドル一村一品運動(OVOP)は次の世代へ
2024.01.11
2023年12月10日から20日にかけて、JICA一村一品運動(One Village One Producto Movement、略称:OVOP)広域アドバイザーの内河友規専門家により、国内東部と西部の2地域(ラ・ウニオン県ポロロス市とサンタアナ県カンデラリア・デ・フロンテラ市)において、市連合などの自治体関係者や生産者向けに「OVOPコンセプト・手法普及セミナー」が開催されました。
当国においてOVOPは、2009年からエルサルバドル小零細企業庁(CONAMYPE)が主導し、JICA海外協力隊やJICA専門家等による10年以上に及ぶ技術支援を受けて全国への普及が達成されました。現在もJICA課題別研修「地域振興にむけた地域ブランディング」や「道の駅による道路沿線地域開発」コースの帰国研修員や地域に根差すOVOP生産者によって継続実践される中で、新たな地域にその理念や手法を普及させることを目的に、本セミナーは開催されました。
本セミナーでは、内河専門家によるOVOP基礎理念の講義と併せて、JICA帰国研修員により、日本で学んだ手法、その国内への応用事例、実績などを元に作成された「活動計画(アクションプラン)」も報告、その後、セミナー参加者との間で地域での実践に向けた活発な意見交換も行われました。
またセミナー後には、講師となった専門家や帰国研修員、海外協力隊員らと共に、開催近隣地域に存在する地域の有形、無形の資源を視察する場を設けました。ここでは、将来的にOVOPが目指す「地域のブランド化」に貢献するような特産品や観光資源の発掘に努めました。今回視察した地域でも他国や他地域には無い「唯一無二」の地域資源が多く埋もれていることが把握されました。
OVOPではその販売・PR戦略として、地域資源の歴史的背景や地域的特色を礎とする「地域アイデンティティ」を前面に打ち出すことで、産品や観光資源の「付加価値化」や「差 別化」を図ります。また産品(モノ)だけを販売対象にするのではなく、地域に存在する人財(ヒト)や体験(コト)もOVOPの重要な地域資源として捉えます。
今回視察した地域でも「地域アイデンティティ」が明示された「モノ・ヒト・コト」にたくさん出逢えました。
現在は、主に地域で生産され、同じ地域で消費される「地産地消」が販売の中心ですが、将来的にOVOPの付加価値が普及・認識されれば、都市部や海外の消費者に向けての「地産都消」や「地産外消」、更には米国に移住したエルサルバドル移民向け「ノスタルジック・マーケット」やその望郷観光となる「ディアスポラ・ツーリズム」も有望な市場として期待されます。
そのためには、提供される特産品や観光サービスの品質面での向上はもちろん、OVOPの特質である地域アイデンティティを打ち出したパッケージやラベルデザインの開発、更には内外の消費者に向けたPRと営業も待たれるところです。
当国のOVOPは、既にCONAMYPEと言う中央省庁による理念や手法の啓蒙・普及期(OVOP第1世代)を終え、地方自治体や地域生産者による実践期(OVOP第2世代)に着実に進んでいると考えられます。今回のセミナーや視察を通じて、OVOP発祥の地、日本の大分県と同様に、OVOPの発展過程として「通常進化」し、次世代に受け継がれていることが把握されました。
今後は、2024年に予定される自治体大規模構造改革と首長の刷新を踏まえ、新首長や自治体職員らへのOVOP理念の理解と、OVOPの実績普及を目指した研修やセミナーなどの開催が望まれます。
これら研修には、日本人専門家だけではなく、当国で熱意を持って取り組む帰国研修員や地域のOVOP生産者自身が、各々の知識や経験、専門性 に応じて講師として参加することが期待されます。そうすることで、日本のスタイルだけではなく、地域に根差し、地域の課題に柔軟に対応出来るOVOPの普及・実践体制が育まれると考えるからです。
大分県から生まれた漢字の「一村一品運動」が、当国で横文字「OVOP」として独自の進化を遂げ、定着・発展し、さらに中南米諸国で展開するOVOPのパイオニアとなることを願ってやみません。(了)
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