30年の時を超えた心の旅 ~JICA筑波へのエルサルバドル帰国研修員の再訪~
2024.06.04
1993年9月から12月まで3か月間、JICA研修「自然災害防災科学・技術コース」にエルサルバドルから参加したJose Ricardo Medaさん(69歳)が、ご子息(David Meda)と一緒に、防災科学研究所及びJICA筑波を再訪しました。
防災科学研究所への表敬訪問
エルサルバドルは1980年から1992年まで12年間にわたる内戦があり、約75,000人の犠牲者、50万人を超える米国移民が発生し、エルサルバドルの社会や家族は分断されました。そんな内戦復興最中のエルサルバドルからJICA研修に参加したMedaさんは、日本において火山避難システム、地震や津波の観測システム、洪水対策などの様々な防災技術を学び、帰国後の防災啓蒙活動に取組み、エルサルバドルの再建の一翼を担いました。日本滞在時には、横浜で開催された国連防災世界会議に参加した際、ご成婚直後の雅子妃殿下(当時は皇太子妃)とお言葉を交わす機会に恵まれたそうですが、あまりに緊張し過ぎて自己紹介以上のお話はできなかったと、懐かしそうに振り返っていました。
防災科学研究所にて専門家の説明を受けるMedaさん
30年前に研修に参加した際のMedaさん
何故、30年の時を越えて、再び日本、筑波を訪問したかったのかを質問したところ、Medaさんは、「日本人の温かいホスピタリティに触れたこと、日本文化が大好きになったこと、そんな日本にもう一度訪問することを人生の目標として頑張ってきた。今回、息子と二人で戻ってこれ、私が学んだ場所を息子に見せることができることを、とても嬉しく思う。」と答えました。
Medaさんは研修から帰国後、エルサルバドルJICA帰国研修員同窓会(ASEJA)の立ち上げの創設メンバーとして奔走したほか、大学における防災講演会、文化行事(生け花、折り紙、日本食)、日本語教室などの開始に尽力しました。また、内戦後に派遣を再開したJICA海外協力隊員の皆さんとの交流も行ったとのことです。
JICA筑波では高橋所長を表敬訪問し、今回の再訪について語るとともに、エルサルバドルJICA帰国研修員同窓会創設30周年を記念し、JICA筑波が数多くのエルサルバドル研修員を受入れてきたことへの感謝プレートが寄贈されました。
感謝盾の寄贈
訪問を終えたMedasさんは「防災研究所とJICA筑波を再訪できてとても嬉しい。彼らと当時の思い出や経験を話し、自分に自信を持つことができた」と語りました。同行したご子息Davidさんによると「父はこの再訪を心待ちにしていた。日本では私たちの訪問を、敬意をもって受けてくださり、できる限りの対応をしてくれた。忘れられないイベントになった」とのことでした。
世界にはMedaさんのように日本で受けた研修をきっかけに日本ファンになり、帰国後に日本の技術や文化を広めてくれている帰国研修員たちが大勢います。たった一度の訪問を何十年も忘れずに、長年に渡り日本のサポーターであり続けてくれている彼らは、私たち日本人の大切な仲間です。防災研究所のような技術研修実施機関、JICA筑波のように研修員受入全般を管理している国内機関、関係する多くの人々のホスピタリティが、こういった信頼と友情を築いています。
JICA筑波で親子二人の記念写真
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