風に舞う砂

2023.07.04

工藤幸介

私の任地ディレダワは、エチオピアの首都アディスアベバから東へ飛行機で1時間弱、距離にして約500kmの場所に位置する町でした。カラッとした風に砂ぼこりが舞うこの町で、私はディレダワ市の雇用促進及び食料安全保障事務所に配属されました。この事務所の主な目的は零細・小事業の支援を通して雇用を拡大し、町の失業率を低下させることでした。大麦パスタを自作販売するおばちゃんやキオスクの一人店主といった零細・小事業を営む人々を始めとする町の様々な方と関わり、いかにしてこの町の雇用拡大に貢献できるかを考え、活動する日々でした。

ディレダワは、エチオピア正教が根付くエチオピアでは珍しく、イスラム教徒が人口の多数を占めると言われます。そのため、エチオピアの食と言ったらインジェラ!ということもなく、お米やパスタ、鶏肉、羊肉がメインのほどよくスパイスの効いたソマリ料理を堪能する日々でした。また町の成り立ちもユニークで、20世紀初頭にジブチ港とアディスアベバをつなぐ鉄道の中間地点として建設されました。当時から鉄道敷設を主導していたフランス人が多く居を構えていたり、第二次世界大戦後にイギリス軍が駐屯していたりと、多くの外国人が町を出入りしてきました。このような歴史的、文化的背景も手伝ってか、ディレダワの人々は寛容であり、明るく社交的でした。

しかし、この開放的なディレダワで零細・小事業を営む人々が直面していた主な課題は、従来の商習慣にとらわれ、他の事業者との協業を行うなどの新しい挑戦に後ろ向きであることだと考えていました。そのため、新しい事業アイディアや改善策も生まれにくく、また互いの協力体制も乏しいという状況でした。このような状況を打開するべく、私たちはワークショップを開催し、事業者間の関係構築と協業を促し、問題に対する新しい解決策が生まれてくる環境を創り出そうとしました。このワークショップは、ディレダワの人々により適したものとなるよう、試行錯誤しながらも開発した参加型ワークショップのアプローチを活用したものでした。そのアプローチとは、お買い物ごっこに着想を得たもので、参加者が「事業者」という役割を演じることでビジネス活動を擬似体験するというものでした。このワークショップは、ディレダワの零細・小事業の方々だけではなく、小学校から職業訓練校までの幅広い年齢層の学生に対しても実施することができ、彼らが起業家精神やビジネスを擬似的に学ぶのに役立つ効果的な教材にもなりました。全体として、このワークショップを通して協業や新しい発想を促し、特に資本の少ない零細・小事業の方々が協力して事業の壁を乗り超える一助となることを目指して活動することができました。

総じて、ディレダワでの経験は、私にとってこれまで当たり前だと思っていた物事や思いも及ばなかったことについて改めて深く考えることのできる良い機会であり、自分自身と向き合う貴重な時間を与えてくれました。自身の持つアイディアを基に、どのように行動しカタチにしていけるのか。これは私自身の課題でもあり、その過程は大きな成長の糧となりました。カラッとした風に砂ぼこりが舞う中、当時の私が必死に得た教訓は、これからの私にもポジティブな影響を与え続けてくれることでしょう。

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事業者間の関係構築と協業を促す参加型ワークショップにて

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