EWARS全国会議（Pertemuan Nasional SKDR）が2024年6月12-13日にバタム島で開催されました。この会議にはインドネシア保健省をはじめ、インドネシア全土の38の州保健事務所、検査室、保健検疫所、そしてWHO、CDC、PAEI（インドネシア疫学学会）、Reconstra AIHSPなどの開発パートナーから、オフラインとオンラインで約329名が参加しました。今年のEWARS全国会議のテーマは「強力なサーベイランス、偉大なインドネシア（Surveilans Kuat, Indonesia Hebat）」でした。

光栄なことにこの全国会議の場をかりて供与式を行うことになり、EWARSフリップチャートを全国からの参加者に紹介することができました。JICA EWARSプロジェクトの坪井基行チーフアドバイザーから、保健省サーベイランス・保健検疫局長のアフマッド・ファルカニ・トリ　アドリャント氏と州保健事務所の代表者にEWARSフリップチャートが手渡され、今後サーベイランスツールの一つとして全国的に使用されることが正式に発表されました。EWARSフリップチャートの対象ユーザーは、地域保健センター（Puskesmas）、病院、検査室、保健検疫所などにあるEWARS報告ユニットの中の臨床医とサーベイランス担当者です。

EWARSフリップチャートはソフトコピー版とハードコピー版がありますが、すでにEWARSの最前線の報告機関である10,489以上のPuskesmas、1386の病院、92の検査室、51の保健検疫所に届けられ、インドネシアにおけるEWARSとサーベイランスシステムの実施強化に大きく貢献することが期待されています。

2023年初頭、JICA EWARSプロジェクトは、保健省のサーベイランス・保健検疫局と協力し、臨床医が患者に生じる徴候や症状をみてスクリーニングを実施し、EWARSが監視対象とする24の感染症に迅速に対応することができるように、疑わしい疾患をより早く簡単に判別するためのツールとして、EWARSフリップチャートを開発しました。感染症のアウトブレイクを防ぐためには、EWARSによる早期発見と迅速な対応が重要です。EWARSフリップチャートを使用することで、症例の定義と対応の感度が向上し、現場レベルでのEWARSの効果が強化されることが期待されます。さらにこのEWARSフリップチャートは、臨床医だけでなく、臨床医とサーベイランス担当者の間の調整とEWARSに対する理解をサポートし、EWARSの報告メカニズムがわかるとともに、患者さんに対しては疾患に関する一般的な情報を提供するためにも開発されました。このフリップチャートの内容は、徴候や症状に基づく症例検出のためのガイドライン、対象疾患の定義、感染拡大の可能性のある24疾患の一般情報、サーベイランス報告メカニズム、ICD-10(*1)とEWARSのコード対応表で構成されています。さらに、このEWARSフリップチャートは、地域保健センター（Puskesmas）レベルでの感染症対策のためのプライマリーサービスの統合化（ILP）の流れにも沿っていて、保健省公衆衛生管理局からもフリップチャートの活用が推奨されています。

これまで約一年間にわたるテスト使用、説明会、プロジェクトのパイロット3州（バンテン、東カリマンタン、南スラウェシ）における約2,200冊のEWARSフリップチャートの配布、改訂段階を経て、JICA EWARSプロジェクトと保健省は、臨床医、サーベイランス担当者、患者がこのフリップチャートから最大限の利益を得ることを願いつつ、自信を持って全国の保健関係者に発表し、配布を開始しました。JICA EWARSプロジェクトと保健省は、この機会を嬉しく思うとともに、各自治体、保健事務所、関係者が自分たちで印刷して使用を拡大することを期待しています。

(*1):International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems（ICD）：疾病及び関連保健問題の国際統計分類