インドネシアにおける国レベルの感染症サーベイランスシステム(EWARS: Early Warning Alert and Response System)のモニタリングと評価活動
2025.03.06
JICA EWARSプロジェクト(感染症早期警戒対応能力強化プロジェクト)は、2025年2月24日から28日まで、インドネシアの国レベルの感染症サーベイランスシステムであるEWARSのモニタリングと評価活動を実施しました。この試みは、9カ月にわたる準備期間を経て初めての実証試験となり、東カリマンタン州において、インドネシア保健省と共同で実施されました。モニタリングと評価は、効果的かつ効率的なサーベイランスシステムを確立し維持するために不可欠であり、ひいてはインドネシアにおける感染症サーベイランスの強化に寄与します。また、世界保健機関(WHO)は2023年の評価報告書で、インドネシアに対して国および地方レベルでのサーベイランスシステムの定期的な評価を行うよう助言しており、本活動はその推奨に準じたものです。
本活動は、2024年5月にEWARSプロジェクト、保健省、およびWHOインドネシア事務所の関係者による初回会合を開催し、その後、9カ月間にわたる議論を重ねて、評価スキームの整備およびモニタリング評価シートの開発を行いました。本評価システムでは、国の当局が州レベルの活動を評価し、州が県/市を、そして県/市がプスケスマス(地域保健センター)等の報告機関の取り組みを評価します。それに合わせ、評価対象ごとに異なる3つの評価シートを作成しました。評価シートは、定性的および定量的な質問を組み合わせ、1)施設環境、2)到達目標値、3)インジケータベースサーベイランス、4)イベントベースサーベイランス、5)検査診断体制、6)データ管理、7)対応能力、8)情報共有・コミュニケーションの8つの領域から、サーベイランスシステムを評価できるよう構成されています。また、Google Formsを使用し、各評価シートに対応したオンラインデータ収集フォームも併せて作成しました。
現地評価の実施にあたり、評価対象とした東カリマンタン州の州保健局、2つの県/市保健局(Penajam Paser Utara県とBalikpapan市)、4つのプスケスマス(Penajam、Semoi II、Baru IlirとDamai)から代表者を招き、オンラインでの事前説明会を実施しました。現地活動では、開発した評価シートおよび入力フォームを使用し、事前に定められた方法に従い、インドネシアの担当者がインタビューおよびデータ入力を行いました。評価結果は、事前に準備された所定のサマリーシートにまとめられ、速やかに評価対象者へフィードバックされました。活動期間中に2回のワークショップを実施し、関係者間で課題等の共有を行い、改善点を抽出しました。その他、Balikpapan市保健局の評価に合わせて、市内全プスケスマス等の担当者が参加する会議が開催され、モニタリング評価活動の周知がなされました。
また本活動は、州保健局、プスケスマスDamai、およびプスケスマスBaru Ilir のインスタグラムにて紹介されました。
州保健局:https://www.instagram.com/p/DGc6HNJyKfL/?igsh=dWF6ZzJzeG84dGYy
プスケスマスDamai:https://www.instagram.com/reel/DGnc83QSzoU/?igsh=YjliMWN0NzVyMDJu
プスケスマスBaru Ilir:https://www.instagram.com/reel/DGk5giiSSie/?igsh=MTB3bHY1MHFyZnd2dw==
本実証試験を通じて、評価シートの改善点や今後の活動展開に関する具体的かつ重要な知見が得られました。さらに、評価は単なる評価にとどまらず、学びのプロセスでもあるという重要な教訓を確認する機会となりました。インタビューを通じた関係者間での情報交換により、評価者は現場が直面する課題や優れた取り組みに関する情報を得る一方、評価対象者はサーベイランスに関する知識を拡充しました。結果として、本活動は評価者と評価対象者の双方にとって有益と考えられ、サーベイランス強化における有用性について、参加者から5点満点中4.9の評価を得ました。また、定期的な評価活動の持続可能性についても、5点満点中4.5という好意的な評価が寄せられました。今後、JICA EWARSプロジェクトは、本試験で得られた知見を基に評価シートの改訂を行い、活動規模の拡大に向けた実施計画について保健省との協議を進めていく予定です。
バリクパパン市で開催された会議での集合写真。
モニタリング評価シートを用いたインタビューの様子。
プスケスマス(ダマイ)でのラップアップワークショップ。
プスケスマス(セモイII)でのワークショップ後の集合写真。
東カリマンタン州保健局によるInstagramへの投稿記事。
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