メダン市と横浜市の協働によるメダン市の水の安全保障の強化
2025.08.21
多くの都市の中心部において、安全な水への安定したアクセスは極めて重要ですが、メダン市も例外ではありません。インドネシアは2025年までに安全な水供給を100%達成するという目標を掲げていますが、北スマトラ州水道公社(Perumda Tirtanadi) が管轄する地域の給水率は現在80%を下回っています。
この給水率の低さに加え、処理水量の不足、低水圧、設備の老朽化、配水管理の不備の問題もあります。24時間給水だけでなく、基本的な水へのアクセスが不十分な地域もあります。さらに、既存の浄水場は原水の濁度が高く、適切な水質を保てず、水需要においついていないという課題もあります。
これらの喫緊の課題を受け、1987年以来、横浜市水道局はメダン市を管轄する水道事業体(現北スマトラ州水道公社/PERUMDA Tirtanadi)と長年協力してきました。(横浜での研修プログラムや災害復旧支援を含む)。この協力関係に基づき、北スマトラ州水道公社は、2016年と2017年に、配水・浄水の課題に取り組むため、横浜市水道局に改めて、技術支援を要請しました。
2023年4月から2026年4月まで実施されているこのJICA草の根技術協力事業は、メダン市の配水管理システムの整備と浄水処理行程の改善を目指しています。適切な配水管理システムを構築し、水処理効率を向上することで水処理損失を削減し、給水能力向上を目指します。これらの活動を通じて、職員の能力向上も目的としています。
北スマトラ州水道公社のエルウィン・プトラ社長代行は、本事業を支援する強い意思を表明しました。本事業の活動においては、若手とベテラン職員が協働する技術チーム内で、知識の共有と効率的な人材育成を促進する仕組みになっています。知見習得のための日本での研修への職員派遣もあります。2023年の最初の研修では、横浜市水道局の事業について広く学び、2回目の2024年は現場での技術を学ぶことに焦点をあてました。2025年 8月に予定されている3回目の招聘では、横浜の現在の水道事業を理解し、配水管理、浄水処理の取組みについて理解を深め、両者で、プロジェクトの目的を達成するためのディスカッションをします。
配水問題に関して、本事業の重要な取組が、ブロックシステムの導入です。配水をブロック化することで、ブロックへの水の流入と流出を正確に把握することができ、各ブロック内の水圧、消費量に関するデータが可視化されます。これにより、水圧を適正化し、効率的な配水を実施し、水漏れや違法な配管接続の迅速な特定・効率的な修理が可能になります。将来的には、北スマトラ州水道公社の水運用改善、計画、資源配分のための意思決定を支援する取組となることが期待されます。
浄水処理に関しては、ベラワン川を水源とするスンガル浄水場をパイロットサイトとして活動が行われます。プロジェクト活動には、この浄水場での処理方法、処理水質、施設・設備管理の評価が含まれます。また、薬品注入、運転プロセス、および施設の構造もレビューします。さらに、チェックリストを含む浄水場の運転・維持管理の手順も共同で見直します。最終的には、横浜市水道局は、効果的な水処理と施設改善のための最適な運転・維持管理方法を提案する予定です。
このパートナーシップを通じて、北スマトラ州水道公社は水に関する課題に取り組み、全国的な目標である安全な水へのアクセス100%達成を目指していきます。
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