【JICA海外協力隊】ラオス国立博物館 第5回 展示室1の紹介

2023.10.06

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サバイディー。ラオス国立博物館で学芸員として活動中のJICAシニア海外協力隊員の上山です。

展示紹介シリーズの第5回は、「展示室1」の第3セクション(前ランサーン王国時代)の中で、「モン文化」や「古代クメール文化」の影響を受けた5~13世紀頃の代表的な展示品をご案内します。

(1) モン文化・前クメール(前アンコール)文化期の石造物 【写真2・3・4】

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写真2は、仏教寺院などの神聖な場所を周囲と区別する境界(結界)に標識として立てる石板(「セーマ・ストーン」と呼ばれる)と考えられます。両面に粗い仕上げの仏像と見られる彫刻があります。ビエンチャン県で見つかったものです。モン民族系文化の影響を受けた5~7世紀頃の製品とする説があります。ラオス中部地域周辺でこの頃には仏教が受け入れられたと考えられています。

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写真3は「ヨーニ」と呼ばれ、女性であることを示す身体部分を象徴化した石造物です。インド由来のヒンドゥー教では「万物を生み出す母性の神聖なエネルギー」や「豊穣多産」のシンボルとして崇拝されます。ヨーニは、男性の身体部分を象徴化した「リンガ」とセットで礼拝物としてヒンドゥー教寺院で安置されました。7~9世紀頃の製品と推定されます。

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写真4は「ソーマスートラ」と呼ばれ、清めに使われた水をヒンドゥー教寺院などの聖なる場所から外に排出するための石造りの排水設備(樋)です。先端部には「マカラ」と呼ばれるインド神話のワニに似た怪魚の頭が彫刻されています。長く尖った口を大きく開けた先端から水が流れ落ちるデザインです。マカラが彫刻されたタイプの排水設備は、古代クメール期以前の古い様式で7世紀頃のものと推定されます。いずれもラオス南部のチャンパーサック地方のワット・プー遺跡(世界文化遺産)で見つかったものです。

(2) 古代クメール文化期の石造ヒンドゥー神像 【写真5・6・7】

ラオス南部地方では、9~13世紀頃にはアンコール・ワット(カンボジア)で有名な古代クメール王朝の支配が及んでいました。

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写真5・6・7は、代表的なヒンドゥー教の神々であるビシュヌ神・シヴァ神・ガネーシャ神の石造彫刻像です。クメール王朝ではヒンドゥー教が取り入れられました。その影響下にあったチャンパーサック地方でもヒンドゥー教寺院などでこれらの神象が普及しました。ワット・プー遺跡で見つかったものです。11~13世紀頃の作品と推定されます。

ビシュヌ神像の顔つきは、古代クメール人の微笑みの表情を反映した典型的なクメール様式です。シヴァ神像は、「創造」と「破壊」を司る神とされ、ビシュヌ神とともに最も有名なヒンドゥー教神です。ガネーシャ神は、象の頭と首から下の人間の体を合体したユニークな姿です。障害を取り除く神、学問の神、富の神などとしてたいへん人気があります。

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