10月7日はラオス教師の日~第8回美弥子所長が聞く~
2024.10.07
10月5日は「世界教師デー」、10月7日はラオスの「教師の日」です。
JICAラオス事務所の教育セクターでは、無償資金協力、技術協力、JICA海外協力隊(JOCV) 等の様々なスキームを通して、ラオス全国で初等教育から高等教育レベルまで人材育成事業を行っています。
また、JDS(人材育成奨学計画※1)等の長期研修事業を通して、若手行政官等を日本の大学院に留学生として受け入れています。ラオスにおける卒業生は累計662人にのぼります。
プット・シンマラヴォン教育・スポーツ大臣も、東北大学の修士課程を修了されており、日本留学経験者の一人です。そのプット大臣から、JICAについて以下のとおりお話しいただきました。
プット・シンマラヴォン教育・スポーツ大臣:
教育・スポーツ省(MOES)では人材育成を非常に重視しており、私たちはJICAの貢献を高く評価しています。
特に、教育政策アドバイザーの長岡康雅専門家は、教育スポーツ省の「一員」として、いつも政策レベルでの貴重なご助言をいただいており、省内一同感謝しています。
また、「ラオス国初等教育における算数指導力強化プロジェクト」(iTEAM2)を通じた初等算数教育への協力、「産業発展のための工学人材強化プロジェクト」(HUGETECH)を通じたラオス国立大学工学部への継続的な技術協力を支援いただいています。この他、「教員養成改善計画」、「ラオス国立大学工学部施設機材整備計画」等の無償資金協力により、ラオス全国の教員養成校(TTC)の施設整備や大学工学部の施設・機材の改善など、初等教育から高等教育まで幅広く、人材育成支援に携わっていただいております。
プット教育・スポーツ大臣と美弥子所長
大臣からのコメントに対して、JICAラオス事務所小林美弥子所長は「人材育成は、その国の土台であり、経済成長・社会開発の根幹と考えています。JICAは引き続き、教育セクター含め、人材育成を重視し、支援を進めていきます。」と語りました。
今回は「美弥子所長が行く」として、ビエンチャン県教育現場、バンクン教員養成校(TTC)にて活動中のJICA海外協力隊、及びTTC、付属小学校のカウンターパートの先生方からお話を伺いました。
来年2025年のラオスJICA海外協力隊派遣60周年を目前に、改めて人材育成の大きな役割を果たしているJICA海外協力隊事業をはじめ、バンクンTTCでの様々なJICA関連の協力について紹介します。
【参加者】
ドンケオ クンポム 校長 (ドンカムサンTTC付属小学校)
ビエンサイ サーモンティー 先生(ドンカムサンTTC: JICA海外協力隊カウンターパート)
山本 佳奈 隊員(JICA海外協力隊:小学校教育)
【ファシリテーター】
小林 美弥子 所長 (JICAラオス事務所)
バンクンTTCの先生方と山本隊員、美弥子所長
小林美弥子所長(以下、美弥子所長):本日は、「教師の日」にちなみ、バンクンTTCの先生方に、JICA教育分野の協力についてお話を伺いたいと思います。
最初に、現在配属されているJICA海外協力隊(以下、JOCV)の山本佳奈隊員です。山本隊員の活動状況について教えてください。
ドンケオ クンポム校長(以下、ドンケオ校長):山本隊員には、TTCでの活動に加えて、付属小学校1年生から5年生の算数の授業にもアシスタントとして入ってもらっています。
具体的には、授業の中で子どもが理解できているところ、できていないところを抽出してもらい、各授業で教え方などのアドバイスをいただいています。
ビエンサイ サーモンティー先生(以下、ビエンサイ先生):私がTTCで働いている間に、現在の山本隊員を含めこれまで3人のJOCVを受け入れてきました。継続的に派遣される隊員らのアドバイスを通じて、実際に授業を実施するうえで、計画から実践するまでのプロセスが改めて重要であるということを実感しています。
TTC付属小学校の先生と一緒に授業をする山本隊員
数について学ぶ小学生
美弥子所長:山本隊員により、どのように授業は改善されたと思われますか。
ドンケオ校長:山本隊員の活動により、特に授業でのICTの活用が進みました。これは、先生のみならず、児童にも大きなインパクトを与えています。
日本の民間企業であるEPSON社からプロジェクターを貸与いただき、よりインタラクティブな授業が可能となり、児童の学ぶ姿勢の改善もみられます 。
結果的に、2023年度にドンカムサンTTC付属小学校独自で実施した調査によれば、これまで一クラス約35人中平均で10人は授業を理解できていなかったのが、7人まで減少していているという結果がでています。
ICT活用が十分でない先生もいますが、山本隊員の授業を実際にみて、「ぜひ自分も活用したい!」と熱心に指導を受けています。
EPSON社のプロジェクターを活用した授業
美弥子所長:EPSON社とJICAは2022年3月から包括連携協定を締結しており、JOCVによる「算数学び隊」の一環としてJOCVが配属されている小学校にEPSONのプロジェクターを貸与いただき、子ども達の基礎学力向上のために活用されています。ラオスでも実際に現場で活用されていることを自分の目で見ることができ、大変うれしく思います(※2)。
山本隊員:「算数学び隊」の活動として、算数共通テストを行い、子どもたち一人ひとりの苦手分野のフィードバックを行っています。共通テストの結果をみてみると、特に四則計算演習、時計、グラフ、統計に苦手意識を持っている児童が多いことがわかりました。苦手分野に重点を置きながら、プロジェクターを活用して、楽しく学べる授業を意識して活動しています。
美弥子所長:バンクンTTCではJOCVの派遣の他、「教員養成改善計画」(無償資金協力)によるTTC付属校の新築と、教育用機材の整備、技術協力としてiTEAM2による算数教科書の指導等様々な支援を行っています。これらの協力は、バンクンTTCでは実際、どのように役に立っていますか。
ドンケオ校長:JICAによるTTC付属校の新築と教育用機材の整備には大変感謝しています。付属校の入学希望者は例年約100名ほどだったところ、新しい校舎が建設されたことにより、今年度は180名にまで増加しました。
また、iTEAM2による教員研修は、先生達が算数教科書・指導書を活用するための能力向上の機会となっており、教員自身のモチベーション向上にもつながっています。
新しい校舎で学ぶ児童たち
山本隊員:隊員の活動としても、教員研修を積極的に実施しました。TTCでは夏休み中に現職教員のスキルアップ研修が必須となっていますが、その研修の一部のコマで、同じビエンチャン市にあるドンカムサンTTCに配属されている小学校教育隊員と共同授業を行いました。配属先のTTCだけでなく他のTTCの教員にも参加してもらうことができました。
私たち隊員にとっても技プロiTEAM2による教科書・指導書活用の研修はとても参考になるもので、現場レベルでの連携を今後も意識していきたいと思います。
美弥子所長:皆様、本日は貴重なお話ありがとうございました。
ICTを活用した授業
英語の授業でもICTを導入
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