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ラオスJICA海外協力隊派遣60周年メッセージVol,9 伊丹 咲さん(ウドムサイ県/体育/2024年派遣)    

2025.09.17

ラオスへのJICA海外協力隊派遣は、2025年に60周年を迎えました。60周年記念のメッセージ企画Vol.9は、伊丹咲隊員をご紹介します。伊丹さんは現在派遣中で、ラオス北部のウドムサイ県で地域の小学校を巡回して体育授業の指導を行っています。今年7月には、同じくウドムサイ県で活動する隊員たちと一緒に、ウドムサイ日本祭りを開催。ラオスの子どもたちのたくさんの笑顔が咲きました。
派遣中隊員の皆さんで決めた60周年記念のテーマ「結ぶ、繋ぐ、紡ぐ」のテーマに載せて綴られた 伊丹さんのメッセージ、ぜひご覧ください。

地道に泥臭く、等身大の自分でぶつかる

【紡ぐこと】

 私は2024年1次隊として現在、ラオス北部のウドムサイで体育隊員として活動している。教育スポーツ局に配属され、平日は公立小学校を巡回しての体育の指導、休日は町のサッカーチームのお手伝いをさせていただいている。

 “任国はラオス”と決まった時のことはよく覚えている。当時、ラオスのことは名前しか知らなかった。 ラオスのことや未だに発音が難しいラオス語を学び、いざラオスへ。

小学校で授業をする伊丹隊員

 活動を始めてすぐは、私も何か成し遂げなくてはならないという思いが強く、このままでいいのかと路頭に迷うことが多かった。今まで、先輩隊員の活動の中で成果が得られたという部分しか知る機会がなかったが故に、私は何か勘違いしていたように思う。実際、協力隊の華々しく見える部分というのはほんの一部であり、日々の活動は想像以上に地道で泥臭いものだと知った。それがわかった時、“等身大の自分でぶつかるしかないなんて、なんて面白いんだ”と自分の中で何か掻き立てられるものがあった。

 巡回校の一つに、始業5分前に職員室で朝ご飯を食べ始める学校がある。最初は『もう授業が始まるのにどうして!』と思っていた。しかし、ある日の早朝、市場に行くと先生の姿があった。親の手伝いをしているという。手伝いを終えたあと、学校に来ているようだった。また、夕方には学校での勤務を終えた先生がお菓子を売り歩いていたり、子どもたちが親の店を手伝っていたりする様子もよく見かけた。

 私はこの国のことを学んだつもりが、全然わかっていなかったんだなと思った。派遣前にやりたいと考えていたことはたくさんあった。でも、現地で実際に働いている先生や、学校に来ている子どもたちと日々関わる中で徐々に思いは変化してきた。一緒に運動して、疲れたら一緒にちょっと休んで、彼らの方が何倍も今を大切に生きていて、協力隊員として派遣されておきながら、彼らに教わることの方が多いかもしれない。もっと現地の人と向き合って、彼らの求めることを知って、彼らのために何ができるか、何をすべきかを考えるようになった時、私の中で本当の活動が始まったように思う。

ある巡回校。最近は自分たちで体操ができるように

週末のサッカー指導

【繋ぐこと】

 配属先では、着いた初日からとても温かく迎え入れていただいたことが今でも印象に残っている。同僚となる方々が、かつて同じ配属先に派遣されていた隊員さんの名前を口々に言っていて、“良好な関係を築いていたんだろうな”と感じた。私もこんな先輩隊員たちのように何年経っても覚えていてもらえるよう尽力しようと決めた。

 また、借りた家の壁にはかつての隊員さんと大家さん一家が法被を着て写っている家族写真が飾られていた。配属先も同じ、借りた家も同じ。何か縁を感じてその先輩隊員の方に連絡を取ってみた。すると10年前にここウドムサイで日本祭りを行った時の写真だったということを知る。

 前回の祭りからピッタリ10年。これもまた縁だと思い、2025年、10年越しにウドムサイで日本祭りをしようと決意した。そして先日、たくさんの方の協力のもと、無事に祭りを開催することができた。前回の実行委員長であった先輩隊員もはるばる日本から駆けつけてくれた。日本とラオスを繋ぐことができた気がして嬉しかった。

ウドムサイ日本祭りでのよさこいの様子

【いつか結ばれる時まで】

 私のこれまでの活動で、はっきり成果と呼べるものはまだないのかもしれない。先述の通り、協力隊の活動のほとんどは地道で泥臭いものであり、さらに言えば孤独である。SNSで切り取られた華々しい成果の裏には、決してスポットライトの当たることのない、隊員一人ひとりがそれぞれにぶつかってきた苦難がある。

 これまでの60年間、1,000人を超える隊員たちによって紡がれてきたものは、ここラオスにたくさんある。もちろんその時にはまだ実を結ばなかったもの、目には見えないものも含めてだ。今までの隊員たちが紡いできたものを、現在活動している私たちが繋ぎ、一つの成果としていつか結ばれる時まで、残りの任期を全うしたいと思う。焦らずゆっくりでいい。ラオスがせっかちな私に教えてくれたことの一つである。そして、私が活動の中で紡いできたものも、いつか未来の協力隊員によって結ばれ、ラオスの人たちの幸せに繋がればいいなと願っている。

 数年前まで全く知らなかったラオスという国。今はこの国に派遣されてよかったなと思う。私の大のお気に入りの国になった。

巡回校4校合同で実施したサッカー大会

【編集後記】
 この企画ではこれまで協力隊経験者の皆さんを紹介してきましたが、今回の現役隊員からのメッセージはいかがだったでしょうか。隊員活動の裏には数知れない苦労がありますが、今も昔も変わらないたくさんの隊員たちの地道で、一生懸命な活動の上に、今日に至る60周年の軌跡が続いていることを改めて思いました。
 10年の時を経て再び開催されたウドムサイ日本祭りの様子はFacebookと、JICA海外協力隊の世界日記でご覧いただけます。

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