ラオス北部のウドムサイ県へのJICAの協力について~第30回美弥子所長が聞く~
2026.08.28
2026年6月、首都ビエンチャンから北に約500キロ離れたウドムサイ県を訪れました。ウドムサイ県では、無償資金協力で建設予定の県教員研修センター起工式への参加に加え、県副行政委員長、県庁官房局長、産業商業局らとの面談、JICA海外協力隊員が活動している子ども文化センターも訪問しました。
今回は「美弥子所長が行く」として、ウドムサイ県におけるJICAの協力や魅力・特徴を紹介します。
ウドムサイ県は、世界遺産で有名なルアンパバーン県の北に位置しています。同県には、ワット・プラチャオ・シンカム寺院(Wat Prachao Singkham)という有名なお寺があります。今回のウドムサイ県訪問でも、お会いする方々皆から「ワット・プラチャオ・シンカム寺院はもう訪問されたか、まだであれば是非行ってみてほしい」とお話をいただきました。このお寺は、願いが叶うお寺と信じられており、県内外から多くの方がお参りに来ます。その様式は、この地域に多く住むタイルー族の影響を受けているのを見ることができます。例えば、本堂の入り口には、ラオスのお寺としては珍しく獅子が鎮座していますが、これはタイルー族が獅子や孔雀を守護動物であると信じていることに由来していると考えられています。この他、シンカム寺院のすぐ近くには、天然の温泉が湧いており、ラオスを代表するエコツーリズム施設・保護区であるナムカット・ヨーラパ(Nam Kat Yorla Pa)もあり、多くの観光客が訪れます。
ワット・プラチャオ・シンカム寺院本堂
ワット・プラチャオ・シンカム寺院本堂入り口の獅子
ワット・プラチャオ・シンカム寺院本堂
ナムカット・ヨーラパ
近年では、ラオス中国鉄道の駅ができたことにより、交通の便が非常によくなりました。また、ラオスを南北に縦断する国道13号線に加え、現在はタイ国とベトナムを結ぶ国道2号線の整備が進められており、タイの企業による大規模な工業団地開発も進められています。北部の古都ルアンパバーンと国境地帯の中間点として、ウドムサイ県はラオス北部の経済の中心としての発展が期待されています。
6月24日、教育スポーツ省ダラボン・キティパン副大臣、ウドムサイ県行政管理委員会ピライトーン・チッドマニ副委員長、小泉勉駐ラオス日本国特命全権大使の臨席のもと、「県教員研修センター整備計画(PTDC)」起工式 を実施しました。
ダラボン副大臣からは「第10次教育スポーツ開発計画(2026年-2030年)」に基づき、小学校の教育課程を「5-4-3」制から「6-3-3」制へと改編する方針に触れ、教員の質能力の向上が不可欠なこと、PTDCは教員並びに各レベルの教育行政関係者にとって、指導法の向上を図るための重要な拠点となることを期待する、との挨拶がありました。
小泉勉大使からは、現職の教員に対する継続的専門能力開発制度の取組の一環として、県教員研修センターが活用され、教員への研修機会が増えることで、教員の能力向上に資することを期待します、と挨拶をいただきました。
小林美弥子所長からは、今年、SEA-PLM 2024 regional report
(Southeast Asia Primary Learning Metrics:東南アジア初等教育学習達成度評価地域レポート)の結果が発表され、ラオスでは算数が2019年から2024年にかけて、平均スコアが上がったことを踏まえ、長年、算数の協力を実施してきたJICAとしては大変嬉しく思うと共に、JICAは国造りは人造りであると考えており、ラオスの未来を担う子ども達の育成に大きな影響をもたらす教員の研修センターとして、継続的に有効活用いただくことをラオス側に申入れました。
完工後にはラオス国内9県(※)を対象に、教員研修の質の向上と教育環境の改善が期待されます。
※PTDCは、ウドムサイ県、ボケオ県、ポンサリ―県、フアパン県、サイニャブリー県、ボリカムサイ県、カムワン県、セコン県、アッタプー県に設置する予定です。
「県教員研修センター整備計画(PTDC)」起工式
県教員研修センター建設予定地
小泉大使とともにピライトーン県副行政委員長と面談しました。副行政委員長からは、「農業分野に加え、観光・サービス産業を重点分野として発展させていきたい。特に、落花生や焼きのりなどのOTOP(一村一品)製品を海外市場へ発信するとともに、葛などの地域資源を活用したハンディクラフト製品の販路拡大にも力を入れていきたい。また、日本政府・JICAによる若い起業家や中小企業関係者が参加できる幅広い人材育成研修に期待している」とのお話がありました。最後に、副委員長が高校生の時にJICAプログラムで首都ビエンチャンに行き、JICAのプロジェクトを視察したことを懐かしく紹介してくれました。
右から7番目がピライトーン行政委員長、8番目が小泉大使、9番目が美弥子所長
子ども文化センターは、7-15歳を中心とした子どもたちを対象に、課外活動の場として、また、ラオスの伝統文化継承や情操教育を担っています。小泉大使とともに長谷川千璃隊員の活動を視察しました。長谷川隊員は、7月24日の日本祭りに向けて、約30人の子ども達に「富士山」「トトロ」そしてスピッツの「チェリー」といった日本の歌を指導していました。子どもたちは楽しそうに、長谷川さんのピアノにあわせ、日本語の歌を一生懸命歌ってくれました。
活動を説明する長谷川隊員(中央)
歌う前に発声練習をする子どもたち
隊員の話を楽しそうに聞く子どもたち
子ども文化センターの子どもたち全員と
2026年7月24日(金)に開催した日本祭りイベント。当日には、約150人の子どもたちが参加しました。音楽交流会では、有志の隊員によって結成されたメコンバンドの生演奏に合わせて、子どもたちがこれまで練習してきた日本の歌を歌いました。会場はとても暖かい雰囲気に包まれ、音楽を通して2つの国の繋がりを感じました。また日本食ブースでは、軍艦寿司、たこ焼き、もちつきでついたお餅を子どもたちに提供しました。寿司とたこ焼きは、子どもたちと一緒に作る体験も取り入れ、もちつきはCCCのスタッフにもチャレンジしてもらいました。イベント終了後には、どの日本食が1番好きだったかをアンケートしたところ、1位はお餅でした!!
美弥子所長:「社会経済発展をもたらす指導者のためのリーダーシッププロジェクト」において、6月7日から18日まで日本での研修に参加されました。どのような学びがありましたか。
チャンタラー氏:今回初めて日本での研修に参加しましたが、多くの学びを得ることができました。観光をテーマとした内容もそうですが、アクションプランの策定方法について、現状を分析し、課題を特定した上で、その解決策を検討するという一連のプロセス自体も私にとっては大きな学びでした。研修の最後には、ウドムサイ県の観光振興に関するアクションプランを作成しました。
右から3番目がチャンタラー県庁官房局長、4番目が美弥子所長
美弥子所長:「社会経済発展をもたらす指導者のためのリーダーシッププロジェクト」において、6月7日から18日まで日本での研修に参加されました。どのような学びがありましたか。
チャンタラー氏: 今回作成したアクションプランは、東京都や埼玉県川越市・飯能市での経験も踏まえて策定したものです。ウドムサイ県をラオス北部の中心都市として発展させるため、国際基準に対応した設備やサービスを備えたホテルの誘致を目指します。また、観光資源として、温泉やコットンの栽培・加工・織物に関する農業ツーリズム、さらには塩作り体験などの体験型観光の提案も含め、地域住民の所得向上につなげていきたいと考えています。観光地として発展していくために、旅行者が安心・安全かつ快適に過ごせるインフラなどのハード面と、その土地ならではの魅力や本物の体験を提供するソフト面の両方を充実させることも重要です。
農業と観光を連携させた取組を進めることで、県の観光マスタープランや社会経済開発計画の目標達成につなげていきたいと考えています。
また、訪問した埼玉県川越市では、歴史的な街並みを保存するために、保存地区を区分しながら保全しているということを学びました。今回のアクションプランには盛り込めませんでしたが、このような保存地区の考え方も、将来的にウドムサイ県へ取り入れることができればと考えています。
美弥子所長:今回の研修を通じて作成されたアクションプランは、単なる観光振興にとどまらず、農業や地域産業の発展とも結び付いた非常に実践的な内容だと感じました。特に、コットン栽培や伝統織物、塩づくりといった地域ならではの資源を観光に活かそうとする視点は、地域住民の所得向上にもつながる重要な取組だと思います。
日本でも農業や地域産業と観光を組み合わせた地域振興の事例が多くあります。ウドムサイ県においても、豊かな自然環境や文化資源、農産品を活かした体験型観光には可能性があると感じています。ぜひ今回策定したアクションプランを実行に移し、観光マスタープランの実現につなげていただきたいと思います。
川越市の視察の様子
美弥子所長: これまで多くのJICA海外協力隊員と一緒に仕事をされてきたと伺っています。
ウンカム氏:私はウドムサイ県産業商業局に勤務しており、これまで9人のJICA海外協力隊員と一緒に働いてきました。今でも皆さんの名前を覚えており、ともに仕事ができたことを大変うれしく思っています。
美弥子所長:ウドムサイ県ハンディクラフト分野でのJICA海外協力隊員の貢献について教えてください。
ウンカム氏:JICA海外協力隊員の活動のおかげで、村落部で葛(くず)やコットンを生産している人々の収入は2倍に増加しました。観光客や販売先に選ばれる商品を作るために、「どのようなサイズが適しているのか」「どのようなデザインが求められているのか」といった点について、隊員が村人の皆さんと一緒に考えながら商品開発を進めてくれました。
また、隊員は「検品」の考え方も導入してくれました。そのおかげで、一定の品質を維持した商品を出荷できるようになり、バイヤーからの信頼獲得にもつながっています。さらに素晴らしいのは、検品を通らなかった商品も無駄にせず、それらを活用したバッグなどの商品デザインまで提案してくれたことです。単に品質管理を指導するだけでなく、商品の価値を最大限に引き出す方法まで一緒に考えてくれました。
美弥子所長:JICA海外協力隊員がウドムサイの人々とともに考え、活動し、その成果が地域の皆さんの暮らしに役立っていることを大変うれしく思います。
ウンカム氏からウドムサイ県のハンディクラフトについて説明いただく(一番左)
ウンカム氏と、隊員が考えた検品を通ることができなった商品を活かした商品