ボランティアレポート 「足りないもの」
2024.03.26
名 前:江藤 千鶴
隊 次:2023年度1次隊
職 種:小学校教育
配属先:カブトゥ教師研修センター
出身地:福岡県小郡市
私は昨年9月から、小学校教育隊員(Expressive Arts:表現芸術科目)として、ンサルというリロングウェ郊外の村で活動しています。現在は、配属先が管轄しているゾーン内の3つの小学校を、2日交代で巡回し、Expressive Artsの授業の改善や授業運営のサポートに取り組んでいます。
先日、ある小学校で教育実習の先生が生徒達を連れてグラウンドに向かっていました。これからExpressive Artsの授業のようだったので、私もついて行くことにしました。
「これから数分で材料を集めて戻ってきて下さい。」
先生がそう指示を出すと、子ども達は一目散に走っていきました。先生に聞くと、身の回りの自然にあるものでおもちゃを作るという内容の授業でした。
グラウンドの向こうに見えるのは草むらと森林。私は心の中で「材料を集めると言っても、葉っぱと枝くらいしかないだろう。それだけの指示ではきっと子どもは何も作れないだろう。」と不安なりました。
これまで「紙で人形を作る授業」「国の課題に関するポスターを描く授業」「折り紙に挑戦する授業」などを、私が提案してマラウイ人の先生と一緒にさせてもらいましたが、できあがった作品のほとんどが「見本の真似」でした。(比較すべきじゃないのですが、)日本の同学年の子ども達と比較すると、想像力や工夫する力が足りてないな、と感じていました。
5分前後で子ども達が戻って来て、作品を作り始めました。驚くことに子ども達は、私の予想とは裏腹に、手際良く作品を作り上げていきました。草を持って来た子は、多くが人形を作っていましたが、それぞれ形が違い、オリジナリティも発揮されていました。また、少し遅れて茂みの中から戻って来た子ども達は、手に土の塊を持っていました。そして、これまた慣れた手つきで粘土のようにこねはじめ、人形や動物、飛行機などを楽しそうに作っていました。中には、葉っぱや枝と粘土を工夫して組み合わせている子もいました。
私が子ども達の元にかけより、「ナイス!」「ワーオ!」と言い作品や彼らの写真を撮ると、子ども達もニコニコ笑顔で嬉しそうにしていました。そして、次から次に「私も撮って!」「僕もできた!」と傑作を披露してくれたのです。
先生に後で話を聞くと、この創作の授業の前には、先生が製作した作品をモデルとして見せて、どんなものが作れるかについて、授業で紹介のみ行っていたそうです。
できあがった子ども達の作品と楽しそうに作品を製作している子ども達の姿を見て、私はハッとしました。そして、この子達に足りなかったものは、「能力」ではなく「経験」だったんだなと実感しました。また、日本の子ども達と無意識に比較し、「想像力や工夫する力が欠けているな」と、決めつけていた自分のことが、すごく嫌になりました。そして、便利な物が溢れている現代の日本で育った子ども達に、自然の物で何か作るよう伝えても、この日のこの子達のように動けるのかな、と思いました。
マラウイ人も日本人も、馴染みのあることは得意だけれど、普段やらないことや初めてのことは難しい。そんな当たり前のことを子ども達から思い出させてもらった1日でした。
あと1年、この授業で感じた『ハッとした気持ち』を忘れずに、子ども達や先生とたくさんの貴重な「経験」を積んでいきたいと思います。
学校のグラウンドと子ども達
草で作った作品の一部
土で作った作品の一部
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