ボランティアレポート「任地での葛藤と攻略法」
2024.04.19
名 前:小牧 萌
隊 次:2023-1
職 種:栄養士
配属先:マチンガ県 ディストリクトホスピタル
出身地:神奈川県
私の任地はマラウイ内でも非常に暑い地域です。任地に赴任したのは1年の中でも最も暑い時期でした。生命の危機を感じ最低限の生活を整えることはなんとかできましたが、活動に精を出すなんてとてもできる状況ではありませんでした。病院の小児病棟の一角にあるNRU(Nutrition Rehabilitation Unit)で活動のスタートを切ったのですが、常にヒーターに囲まれているかのような暑さ。周りを見渡すたびに、自分以外の人間はなぜまともに生きていられるのか?と考えずにはいられない日々でした。活動を終えて家に帰ると、少しでも“涼”を感じられるものを探し、壁や床にくっつくこともしばしばでした。そんな環境下で、消耗を最小限に抑えて過ごす工夫として一番役に立ったのは水浴びです。起床後、お昼休み、帰宅後、就寝前に。計4回浴びます。また、日の出前に一番気温が低くなると分かってからは、朝型生活を手に入れました。これまでの人生で幾度となく体内時計の設定変更を試みたものの全戦全敗。しまいには、私には向いていない!朝型になろうなんて今後二度と考えるものか!とまで思う超ド級夜型人間の私がです。そのくらい生きることに必死でした。
私の任地での生活はかなり多くの人に囲まれています。病院敷地内の寮が自宅であり、一つ屋根の下男女合わせて20人程と暮らしています。それぞれを隔てるのはドア一枚のみ。そのため、外出・帰宅の際の挨拶は欠かさないし、部屋にいると分かれば食事を一緒に囲み、何か困ったときにはすぐに助け合えます。疲れ切って社交的になれない時には厄介ですが、それでもこの距離感には感謝しています。任地での生き方が右も左も分からない頃からいつも側にいてくれ、酷暑・断水・停電をどう凌ぐのか、過酷な環境下でどう楽しむのか、病気やトラブルのときには心配してくれ、たくさんのことを教えてもらい助けてもらっています。寮を出ても病院職員、患者さん、患者さんを世話するご家族に囲まれる環境です。マーケットでは特に、私の存在はとにかく目を引き、あちこちから声をかけられます。「チャンチュウー(中国人をはじめとするアジア人を蔑視する言葉)」、「〇×△☆♯♭□※~…(中国語のふざけた話し真似)」ときます。お金を貸してほしいともよく言われます。しかも任地は比較的人口が多い!…つまり、このチャンチュウー攻撃を放つ人口が多く、日々ストレス過多なのです。しかし彼らに誤った認識のままでいてほしくない!貴重なこの機会に日本を知ってほしい!と思い、できる限りの訂正と世界平和のための活動にも細々と精を出しています。
私の任地での日々はカウンターパートなしには語れません。赴任当初から「ここがあなたのオフィスだよ。」「このメンバーがあなたのチームメンバーだよ。」などと最初から一貫した態度で、右も左も分からないことだらけの私に対して最大限のサポートをしてくれていると感じます。活動を有意義なものにするためには現地語の習得が不可欠+マラウイの現地レベルの生活に触れる必要があるだろうと、日々現地語でのコミュニケーションを図ってくれたり、自宅に積極的に招いてくれたりします。現地語、英語共に言語が課題の私に対して、口頭だけでは難しい詳細なやり取りはWhatsApp(日本でいうLINEのようなアプリ)でのメッセージ交換で対応してくれたりもします。弱音を吐露すると「遅い進歩も進歩だよ。」と。体調を崩し活動に行けないことを悔やむと「すべての出来事には意味があるよ。」と。ものすごくありがたくて、ものすごく親切なのです。ところが親切すぎて、もらった親切に応えないと申し訳ない!と苦しくもなります。日に日に分かってくる自分にできることなんてちっぽけだということ。もっと言語が堪能で、もっと物怖じしない性格で、もっとチャレンジ精神があって、もっともっとー。挙げたら本当にキリがありません。どうやったってもう返せないくらいたくさんのものをもらいすぎています。理想と違う自分を嘆いても事態が変わることなんて決してない。分かっている。分かっているけれど…。私はまだ、この葛藤についての攻略法は見つけられていません。任期が終わるその日まで葛藤し続けるのかもしれません。けれど、それでいい。それがいい。その方が、最後の最後まで精一杯頑張れる気がするから。早いもので任地に来てから半年が経過し、残りの任期は1年3か月となりました。引き続き甘えられるところは甘え、ひたむきに活動に励みたいと思います。そうすることが私にできる最大限の恩返しだと信じて。
寮のメンバーと
近くのマーケットの様子
ニュートリションオフィスのメンバーと
病院裏の線路と夕焼け
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