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ボランティアレポート「マラウイと日本の医療の在り方」

2025.05.16

名前:鷹觜 紺
隊次:2023年4次隊
職種:理学療法士
配属先:ムズズ中央病院
出身地:宮城県

私は、理学療法士としてマラウイの北部に位置しているMzuzu(ムズズ)にあるムズズ中央病院に派遣されています。そこで、主にリハビリ、業務環境の改善に取り組んでいます。マラウイに派遣され、一年が経ちました。環境には慣れてきたといえ、まだまだ驚きや文化の違い等に頭を悩ませる日々です。
 ボランティアレポートを執筆する機会を頂いたため、活動していて考えさせられたことを執筆しようと思います。
 病院に派遣され感じたことは、日本の医療とマラウイの医療の在り方の違いです。日本は医療従事者と患者さんは対等な関係にあります。また、助けられる命は全て助け、延命により例え自分の意識がなくとも長く生きることができます。対してマラウイは、医療従事者が頂点のピラミットの構図になっており、助けることができる命、難しい命の線引きがはっきりしているような印象を受けます。
 日本は、患者さんが自分の主張を医療従事者へ伝えることができます。それを元に、医療従事者は治療の目標を立てていきます。そして、多数の医療機器、医薬品、素晴らしい医療環境の元、多くの命を助けることができます。マラウイでは、患者さんが医療者に自分の意見を伝えることはほぼありません。この背景には、医療費が無料であることが関係していると考えています。自給自足で生活しているマラウイアンは税金を納めていないのに対し、会社などに就職している、スーパーなどで買い物できるマラウイアンが多額の税金を納めています。この税金を用いて医療費を賄っているため、医療従事者が頂点のピラミットの構図が出来上がってしまっています。そのため、患者さんは納税者に医療を受けさせてもらっている、納税者は医療を提供しているという気持ちが強いのか、医療従事者は患者さんの意見を聞かず、患者さんは自分の気持ち等を伝えることができない状況でリハビリを行っています。また、医療機器、医薬品等が乏しいことから、本来であれば助かるはずの命が助けられない状況が生まれてしまっています。さらに、物品の乏しさ、医療環境の不十分さが原因ではありますが、延命という選択肢がないこと、治療しても助けることができない命は時の流れに任せるのが、今のマラウイの医療です。何かできたのに...これがあれば...などと思うこともありますが、日本にいた時から自分の意識がないのに延命によって生かされる人生は幸せなのか、もし自分が口から食事が摂れなくなり、自分の楽しみが無くなった状況で今後の人生を生きなければいけない状況になったら...と考えることがありました。そんな中、マラウイに来て、マラウイでの医療現場を目の当たりにした時、自分の運命に争わない環境は人間のあるべき姿でもあり、ある意味幸せなのかもしれないと、ないものねだりにも思いますが、私はそう感じました。死というものが日本よりも身近にあるマラウイだからこそ感じられた気持ちであると思います。
 日本と医療の在り方が異なり、戸惑う場面も多いですが、微力ながら今を生き抜いているマラウイアンの力になれるよう残り1年活動していきたいと思います。

リハビリを受けている子ども

骨折後の手術を待っている間、錘により牽引している様子

義肢装具士による、義足のフィッティングの様子

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