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ボランティアレポート「障害のある子どもたちの「自立」に向けて」

2025.06.19

名 前:戸賀沢未来
隊 次:2024年度1次隊
職 種:障害児・者支援
配属先:リロングウェLEA小学校
出身地:青森県

私は、マラウイの首都リロングウェにある公立小学校の特別支援学級で活動を行っています。特別支援学級には、知的障害や学習障害、聴覚障害、身体障害のある子どもたちが約14名通っています。現在は、チェワ語・英語・算数の授業を行ったり、職業スキルや生活スキルの獲得を目的とした、もの作りやクッキングなどの活動に取り組んだりしています。

(算数の授業で、ペットボトルボウリングを作りました。倒れたピンの数を一つずつ数えたり、1回目/2回目に倒れた数を合計したりし、数や足し算を学習しました。)

(英語の授業では、色の学習をしました。シャツやズボンは、好きな色を教師に言葉で伝えて選んだり、「文字」が示す色と同じ折り紙を自分で探したりして、制作活動に取り組みました。)

(ものづくりでは、これまで、ドアマット作りやペーパービーズ作り、紙薪作りに取り組みました。写真は、ドアマットを作っている様子です。同僚の知り合いのテーラーさんから譲り受けたチテンジの切れ端を、袋に通していきます。)

(クッキングクラスでは、マラウイのスナックを作っています。この時は、チャパティ(薄いナンのようなもの)を作りました。毎回、校長先生の奥さんがボランティアに来てくださり、子どもたちに作り方を教えてくれます。)

今回の世界日記では、この9ヶ月間の活動の中で生まれた問いや、私の考えの変化について綴ってみたいと思います。


活動の中で、ふと考えることがあります。

特別支援学級に通う子どもたちの多くは、英語で話すことが難しく、チェワ語でのコミュニケーションが難しい児童もいます。私のチェワ語も赤ちゃんレベル。簡単なやりとりはできても、気持ちや考えを深く伝えることはできません。
「うまく伝わらない」と感じるとき、子どもたちの言っていることが分からないとき、「言語」は大きな壁だと感じます。そして、その「伝わらなさ」の背景には、言語だけでなく文化の違いも理由にあると感じます。時間の感覚、人との距離の取り方、友達との物の貸し借り、授業中の振る舞い…。マラウイで彼らが学んできた「当たり前」と、日本の「当たり前」は異なります。

その中で生まれる、「伝わりにくさ」「難しさ」を日々感じながら、「障害がある子どもたちの難しさは、その子の脳の特性のみが生み出しているものだろうか」と、疑問に感じるようになりました。

言語的にも文化的にもマイノリティである私が、教員という立場で子どもたちに関わる日々。伝わりにくさの中で生活しながら、ふと、日本で関わってきた、自閉症やダウン症の子ども達のことを思い出します。「彼らもこんな難しさの中で生活していたのかもしれない」と。

そして、この立場になってやっと、「障害はその人自身にあるのではなく、環境や社会がつくり出すものだ」とする“社会モデル”という考え方が、少しだけ実感として得られた気がします。

【自立ってなんだろう。】

私の活動の軸には、「子どもたちの自立に向けて、自分にできることを」という思いがありました。できることが増えたら、「子どもたちの世界は広がる」と信じていたし、それは「将来の自立に繋がる」と思っていました。

しかし、「将来の自立」に目を向けすぎて、彼らの「今」をしっかり見られていなかったのではないかと、最近気付きました。

それに気付かせてくれたのは、紛れもなく、子どもたちです。

(できたドアマットを抱えて。)

(集中して、ビーズを糸に通しています。)

(できたペーパービーズのネックレスを身に付けて。)

(クッキングは、火を起こすところから始まります。)

(クッキングクラスで作ったものは、学校内で販売しています。)

(売上の記録もします。)

 これまでの授業を思い出したり、写真を見返したりすると、そこには、子どもたちの少しずつの、でも確かな成長がありました。

 「子どもたちのできないこと」「できるようになってほしいこと」
「授業の中で、もっと私が取り組めると感じること」「私が教えたいこと」

それらに固執するより、子どもたちがその時感じている、「楽しい」「やりたい」「できた」を大切にしよう、と今は思っています。それがきっとこの子ども達にとって意味ある経験として積み重なり、将来の子どもたちの「生きる力」そして「自立」になると思うのです。

そして、子どもたちの自立を考える上で欠かせないのが、マラウイのコミュニティにあるつながりです。当たり前のように助け合い、支え合うこの世界で、障害がある子ども達も自然に受け入れられていると感じる瞬間が多くありました。この子たちの将来を考えるとき、このコミュニティの土台があることを忘れずにいたいと思います。

【最後に】

 この9ヶ月の活動を振り返ったとき、うまくいったことばかりではありませんでした。やるせなさを感じることも多かったです。「障害」の大きさ、多さも痛感します。それでも、子どもたちとの日々の関わりの中で、彼らの頑張りを感じ、子どもたちも大人も含めた、マラウイの人の温かさや強さに助けられて、今の私があります。

 たくさんの「難しさ」に向き合いながら、でもそれ以上に、目の前に「在る」ものに感謝して、これからも子どもたちに関わっていきたいと思います。

 今日の関わりが、いつかの子どもたちの自立への一歩になると信じて。

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