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ボランティアレポート「Waiting is part of Malawian life」

2025.08.08

名 前:前田 孔規
隊 次:2024年度2次隊
職 種:コミュニティ開発
配属先:コタコタ県庁
出身地:神奈川県

マラウイでは日本での生活に比べ、待たされる機会がたくさんあります。「いやーわかるなー。」そんなマラウイ隊員の同意の声が聞こえてきます。
赴任当初はマラウイで待たされる時間にストレスを感じていました。時間通りに来ない同僚、開催予定時刻の二時間後に始まる行事、人が埋まるまで出発しないミニバス。マラウイではある種待って当然、待たせて当然のように感じられる事もありました。

特にミニバスは何時に出発するかわからず、時間通りに予定が進まないマラウイでの生活について不満を覚えていました。
私の任地はマラウイ中部のコタコタ県、首都のリロングからは市内中心地から郊外、郊外から地方都市サリマ、サリマからコタコタへと少なくとも計三台のミニバスの乗り継ぎがあり、その度に乗客が集まるまで待つ必要があります。出発してからも、待つの連続、乗客の乗り降り、警察の検問、ドライバーの買い物、などなど乗用車では四時間程の道のりもミニバスだと八時間!かかる事もザラにあります。最近では早くミニバスを出発させるために集客を手伝って現地語で「さあさあコタコタ行きのバスだよ!」だなんて集客する事もあります。

荷物もマシマシです。

パンクも日常茶飯事

ある時コタコタ県郊外で植林のイベントが開催される時に開催場所までの移動車が予定時刻を一時間遅れる出来事がありました。

’’Waiting is part of Malawian life.’’

これは、待たされる事の多いマラウイ生活に対して同僚にポロッと言った私の皮肉です。
その時は冗談として笑っていましたが、改めて考えると変に腑に落ちました。
(これが同僚の言葉でハッと気づかされた、という流れだったら、もっと感慨深かったと思うのですが…笑)
日本や先進国的な考えでは、何かをしていない時間は無駄だとか、怠惰だという考えがあって、何か生産性のある事をしないといけないと言う観念に追われているように感じることがありました。
社会人時代には得意先へ向かう時に五分後に次の電車が来るのをわかっているにも関わらず、慌てて乗車をしていた事なんかも思い出します。

でも現地のある日の出来事からそれはある種の先進国的な価値観であるように思えてきました。

通勤途中の行きと帰りで自宅付近のマラウイ人のおばあちゃんがまんじりともせずに家の軒先で座っているのをよく見かけて何をしているのか気になっていたのですが、近隣住民の英語を話す若者と歩くことがあり、その時にまたおばあちゃんが座っていて、良い機会だと思い若者を通じて何をしているのか聞いてみました。
その答えが「何もしていない。ただ座ってのんびりしているんだ」と。
その会話をした日、自宅に戻って会話の内容についてよく考えました。
何もせずに空気の匂いや風を感じたり、鳥が飛んでいる姿、雨季の時期に緑が豊かになる様から自然を感じる、こう言った時間の過ごし方はある種、人間本来の生き方なのかなとも感じました。

日本では一期一会という人との出会いを大切にする文化、価値観があります。これは対人だけではなく、流れる時間についても当てはめる事ができるのかな、なんて事を考えました。私達が過ごす一瞬一瞬、この空間、風景、感情を覚えるこの瞬間瞬間はある意味では自分自身の人生で一度きりだなと感じる。この感覚は日本の生活の忙しさのあまり忘れてしまって、おばあちゃんとの会話を通じて改めて感じさせられました。

マラウイでは時間通りに動く交通機関なんてない。だから人が遅れるのも当然だしそうなると遅れた当人も、遅れるなんて当然、といった態度。
一方の日本は世界でも有数のタイムリーな交通システムがあり、時間に厳しく、時間通りに行動するのがある種美徳であり、尚且つ当たり前の規則になっている気がする。でも効率を突き詰めた社会のシステムに人間が組み込まれた世界ともとれるし、だからこそ息苦しさを覚える人がいるのかなと思います。
もちろん効率的な日本社会を悪く言うつもりはありませんし、日本の社会の方が便利で充実した生活を送れるとも思います。
ただ半年経った今はマラウイ時間に対し、赴任した時のストレスを感じなくなってきました。それは現地での生活に慣れてきて現地文化を理解し始めたからかもしれません。
待つというある種、人生の空白の時間を、どういう感情で待つのか、イライラして、待っている対象に不満の感情を持つのか、それとも気持ちを切り替えてその時間を使って何かを感じるのか?
そのような事を現地の生活を通して考えたので共有させてもらいました。

おばあちゃんがよくみている景色

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