サラワク州、サバ州にて気候変動の透明性に関するワークショップの開催
2025.08.13
JICAは、2025年8月5日、サバ州コタキナバル市にて、マレーシア天然資源環境サステナビリティ省(NRES)およびサバ州森林局(SFD)と共同で、温室効果ガス排出の透明性向上に関するワークショップを開催しました。
これは「マレーシア国 強化された透明性枠組み下での国連気候変動枠組条約(UNFCCC)国家報告書作成のための能力強化プロジェクト」の一環として実施されたもので、温室効果ガスの排出削減に関する進捗管理の重要性と、特に冷凍空調分野における排出削減の可能性についての意識啓発を目的としたものです。
マレーシアのボルネオ島に位置するサラワク州およびサバ州は、それぞれマレーシア連邦を構成する地方政府です。外交など連邦政府の専決事項を除く広い裁量権を有しており、気候変動対策にも独自の政策・戦略を打ち出しています。サバ州は2022年、SFDを中心としてSabah Climate Action Council を設立し、またサラワク州も2050年までに温室効果ガス(GHG)のネットゼロ排出の達成を目指すとともに、2025年5月には「Sustainability Blueprint 2030」を発表しました。両政府ともパリ協定6条に規定される炭素クレジットや、二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)に強い関心を持っており、今後の温室効果ガス排出削減のポテンシャルが大きいと言えます。透明性、とりわけ地域のGHGインベントリについても、サラワク州では2027年に作成を計画しており、サバ州でもこの2025年7月に州法で作成することを宣言しました。しかしながら、方法論やデータ収集には課題が多くあります。
ワークショップでは、連邦政府・サバ州政府およびJICAが、気候変動対策とその透明性についての取り組みを共有し、また今後の協力について議論しました。Frederick Kugan SFD局長は、気候変動枠組条約およびモントリオール議定書の実施のために、GHGであるHydrofluorocarbons(HFC)の排出削減が急務であること、国家の公約である2050年カーボンニュートラル実現のために正確なインベントリ作成が求められていることを強調しました。Yahati binti Awang NRES副事務次官は、2024年12月末に提出されたBTR1を提出期日までに作成するにあたっての地方の協力に感謝し、2026年末に提出される予定である、次のBTR2をよりよい報告書として作成することおよび将来に向けて、一層の協力を求めました。
ワークショップでは、冷凍空調分野およびフロン類の排出削減の重要性についても紹介されました。熱帯で、かつ経済が発展しているマレーシアのような国では、居住空間の空調、データセンターの冷却や食品等の冷凍冷蔵の需要が著しく成長しています。冷凍空調は国家のエネルギー需要で大きな部分を占めるとともに、地球温暖化係数の高いHFCをはじめとするフロン類を冷媒として多用している為、大量の温室効果ガス排出につながっています。特にHFCについては、マレーシアのようにインベントリの作成経験を積んだ国でも、排出の実態もまだよくわかっていません。新型機器の導入や冷媒の漏洩対策をはじめとする適正管理をおこなうことで、効率の良い排出削減が実施でき、快適性や食品の安全にも貢献できる、ということについて意識啓発をおこない、そのためのデータの重要性を訴えました。
サラワク州クチン市でも、2025年6月17日に同様のイベントを開催しました。これらのイベントを通じ、地方政府や民間企業との連携を強化し、持続可能な未来への貢献を果たしました。
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