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【マレーシア海外協力隊の素顔に迫る!日本の柔道を世界に】

2025.10.09

 マレーシアでは、産業人材育成・環境保全・社会福祉を中心に、様々な活動を行うJICA海外協力隊を派遣しています。今回はマレーシアのペナンの道場で柔道を教えている松岡さんにお話を伺いました。新卒でJICA海外協力隊に挑戦し、柔道教育に取り組む松岡さんの熱い思いと工夫あふれる活動に迫ります。

Q. まずは自己紹介と、協力隊員に応募したきっかけを教えてください!

A. 2024年度2次隊として、2024年12月からペナンで活動しています松岡と申します。現在は、マレーシアの子どもたちや大人に柔道を教えています。

 JICA海外協力隊に応募したきっかけは、「20年間続けてきた柔道を活かせる仕事がしたい」という想いを強く持っていた時に、高校の先輩が協力隊の存在を偶然教えてくれたことです。協力隊の存在を知って、「こういう道もあるんだ」と興味を持ったんです。国際協力をしたいという気持ちがあったというよりは、柔道を軸に活動をしてみたいと思い、協力隊応募を決めました。

 私は4歳から柔道を始めて、柔道人生はもう20年間になります。高校卒業後は、母校の道場でお手伝いをして、小さい子と遊んだり、中学生と一緒に稽古をしたりしていました。ただ、本格的に柔道を教えるのは初めてで、自分がこれまで継続して取り組んできた柔道を教えてみたいと思ったのが今回の海外協力隊の挑戦でした。

Q. ペナンでの活動内容を教えてください!

 私が指導している道場には現在、4歳から大人まで、約150人の生徒がいます。クラスは大きく分けて3つあり、4~6歳のクラス、7~12歳のクラス、13歳以上の大人クラスです。12歳以下の子どもたちには私が中心となって指導し、練習メニューを考えるところから行っています。大人クラスでは一緒に練習しながら乱取り(スパーリング)を行います。一番柔道が上手な子は世界ランキングにも入っているので、その子とは本気で試合をすることもあります。

 また、道場のSNSアカウント「Budo academy」で情報発信もしています。SNSを活用することで、新しい生徒さんが増えたり、柔道に興味を持つ人が広がったりしています。SNSのおかげかはわかりませんが、実際に私がペナンに来てから1年間で50人もの新規入会者が増えました!

*松岡さんと生徒の練習風景

Q. 指導する中でやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

 一番嬉しいのは、生徒が綺麗な技で相手を投げて、最高の笑顔を見せてくれる瞬間ですね。その時に一番生徒の成長を感じるのと同時に、私の活動の成果が見える時でもあり、嬉しくなります。

 また、試合の時にコーチボックスに入り、選手が勝った瞬間に「先生ありがとう!」と声をかけてくれる時も感動します。

Q. 逆に、大変だと感じることは何ですか?

 まずは語学ですね。日本語ではすぐに伝えられる細かいニュアンスが、英語だと咄嗟に出てこないことが多いんです。特に4~6歳の小さな子には「こういう感覚でやるんだよ」という説明を言葉にするのが難しいですね。大きな子には実際に技を見せれば伝わりますが、4~6歳の子どもたちにはそれが通じません。柔道は押したり引いたりだけではなく、技の細かい感覚や繊細さを伝えたいので、マレーシアに来た当初は本当に困難でした。

 それに加えて、生徒のモチベーションを上げる方法も難しかったです。日本の柔道では「打ち込み」という同じ動作を何度も繰り返す練習があります。日本人の場合、“打ち込み100回!”と言われれば大抵全員が100回行います。しかし、マレーシアの子たちはすぐに飽きて、「もう終わった!」と止めてしまいます(笑)。

 そこで、子供たちが練習を飽きずに、打ち込める工夫が必要なんです。私は、遊びを組み合わせた練習メニューを考えました。例えば、最後の10分間は道場でドッジボールや鬼ごっこをして遊ぶ時間に設定。そうすることで、びっくりするくらい柔道中は真剣に、遊びの時間は思いっきり楽しむ、という切り替えができるようになったんです。

Q. 協力隊への参加を迷っている方にメッセージをお願いします!

 協力隊は、応募の段階ではどの国に派遣されるか分かりませんし、2年間という期間に不安を感じる方も多いと思います。でも、実際に来てみると、現地でのつながりや経験は想像以上に大きいです。語学訓練も含めて、言語を必死に学べる環境が整っていますし、人脈も広がります。もし「やってみたいけど迷っている」という方がいれば、思い切って挑戦してほしいです。私は新卒でJICA海外協力隊を選びました。新卒での参加もアリだと思います。海外での経験は、視野を大きく広げてくれますよ。

Q. 最後に、松岡さんにとって柔道とは?

 学生の頃は「試合に勝つため」に柔道をしていました。練習はきついし、勝つためだけに頑張る日々でしたね。

 でも派遣される前に柔道を一から見つめ直したとき、「柔道は勝つことだけじゃない」と気づいたんです。審判になるのも、指導者になるのも一つの道。勝ち負けを決めることだけが柔道ではない。柔道を通じて、心・技・体を磨いたり、人とのつながりや多くの学びが得られたりします。

 実際、柔道をしていなければ出会えなかった仲間や先生たちがたくさんいます。世界大会に出場する友人や、オリンピックで活躍する先生と食事をするなんてこともありました。私にとって柔道は、人と人とをつなぐ大切な架け橋なんです。こんな素晴らしい 競技がもっと広まるようにこれからも頑張っていきます!

感想:松岡さんのインタビューからは松岡さんの生徒に対する思いやりと、柔道を子供たちや世界の人々に広めたいという熱い思いを感じることができました。これからも柔道家として、柔道の素晴らしさや奥深さを広める活動頑張ってください。今回はインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました!

語り手:松岡主税さん
聞き手:JICAマレーシア事務所インターン 岩村篤 吉村紫織

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