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【JICA海外協力隊 世代と特性を超えて、つながる心:多世代交流プログラム】

2025.11.12

 2025年10月25日(土)、マレーシア・スランゴール州チェラスにある高齢者施設「ルマ・セリ・ケナガン・チェラス(RSKC)」にて、初の多世代交流プログラムを開催しました。RSKCと、近接する障害児・者支援施設「タマン・シナル・ハラパン・ジヤド・ゾルケフリ・チェラス(TSHZZC))、児童養護施設「ルマ・カナ・カナ・ミニ・チェラス(RKKMC)」、そしてJICA海外協力隊(JOCV)社会福祉分科会との共催です。

 マレーシア国内には、政府が運営・実施する社会福祉施設が多数あります。しかし、高齢者、障害児・者、児童の3施設が徒歩圏内にある地域は、全国でもこのチェラスだけです。この環境を活かし、異なる世代・特性を超えた施設入所者同士の交流の場をつくりたい。そんな思いが、RSKC所長のザムズリ・ビン・モハメド氏とJOCVとで重なり、今回のプログラムが実現しました。

     ザムズリ・ビン・モハメドRSKC所長

 参加者は、3施設合計80名です。各施設から職員も多数集まりました。JOCV10名に加え、施設職員50名以上の体制で、プログラムの実施及び参加者の支援にあたりました。
 性別と特性を混合した10名ずつ、8グループに分かれました。グループ名は、なんとJOCVの出身地や住んでいた日本の地名です。折り紙で作った色別の腕輪や、ニックネーム入りの名札を着用し、グループ内で互いに交流しやすい雰囲気づくりにつとめました。

       社会福祉分野協力隊メンバー

 開会式では、ラジオ体操を参加者・施設職員・JOCVの全員で行いました。笑顔を浮かべて一斉にラジオ体操する光景は、まさに圧巻でした。

 アクティビティは、グループメンバー全員が参加でき、自然と交流できる内容を考えました。各グループは、時間によって場所をローテーションで移動しながら、以下のアクティビティを体験しました。

【バケツカーリング】
 床にある的に向かって上下逆さまにしたバケツを滑らせ、高得点を狙うゲームです。多くの人から見つめられる中、中心の100点にバケツがおさまると、グループメンバーだけでなく、観戦していた他の人からも大歓声が上がりました。一方、バケツがひっくりかえると0点です。その時も”Alamak!” (あらまぁ!)と残念がる声が上がり、多くの人が一緒になって盛り上がっている様子を感じました。

【ピンポン玉運びリレー】
 落とし穴・上り坂・下り坂をつくったダンボールの上を、隣のメンバーに一本の棒を渡しながらゴールまでピンポン玉を運びます。ピンポン玉の動きをじっと見つめ、ゴールに到達すると、メンバーだけでなく、見守っていた職員も満面の笑顔で喜び合っていました。このゲームでは、自然と互いに声を掛け合う姿が生まれていました。

      バケツカーリング

       ピンポン玉リレー

【日本文化体験】
 我々日本人の隊員が協力することから、RSKC所長より日本の文化を教えてほしい、との要望がありました。

 浴衣体験では、はにかみながら着付けを楽しんでいる様子に、こちらまで笑みがこぼれました。浴衣とはっぴの衣装を着ながら、けん玉、ヨーヨー、輪投げで遊び、その後はグループ全員で記念撮影をしました。

 書道体験では、カラー筆ペンを使い、参加者のニックネームをひらがなで書きました。初めての日本語に集中して取り組み、書き上げた時の笑顔はとても輝いていました。

【パフォーマンス】
 昼食を前に、各施設の代表者によるパフォーマンスが行われました。RSKCの男性による歌、TSHZZCの男女混合メンバーによるマレーシアの伝統的舞踊、RKKMCの女の子たちによる現代的音楽に合わせたダンスの披露がありました。いずれも、日ごろの練習の成果をいかんなく発揮していました。会場全体が一緒になって歌い、踊り、大きな盛り上がりを見せていました。

       日本文化体験

        パフォーマンス

【アンケート】
 今回の多世代交流プログラムは初の試みということもあり、参加者にアンケートを実施しました。多様な背景をもつ参加者がいるため、回答しやすい工夫を図りました。施設ごとに色分けした丸型シールを用意し、設問1つにシールを1つ貼って回答します。回答内容を視覚的に把握できるよう、イラストも用い、さらには隊員と施設職員も回答のお手伝いをしました。集計の結果、「楽しかった」との回答が91%、「また参加したい」との回答者は98%でした。

 当日の会場の雰囲気、そしてアンケート結果からも、参加者が今回のプログラムを非常に楽しんだ様子がうかがえました。まさに、大成功!という確かな手応えを感じました。この成功は、JOCVと三施設の職員が何度も話し合い、一丸となって協力し合って作り上げた結果です。
参加者は、「社会福祉施設に入所している」という共通点があります。多様な背景をもち、地域で、家庭で、生活が難しい環境で暮らしています。その生活は、同じ世代・特性の中で成り立っています。しかし、このプログラムを通して、世代・性別・障害の有無など、異なる特性を超えた交流ができたことは、まるで小さな社会の関係を築けたかのように感じました。

 「また参加したい」という前向きな意向が得られたことからも、RSKC・TSHZZC・RKKMCの行事として、マレーシア政府が今後も継続的に開催してくださることを願っています。そしてその第一歩に、JICA及びJOCVとして関与できたことを、心から誇りに思います。
 
 また、私たちJOCVも学ぶことが多くありました。普段の活動で接することのない人々との交流は、大きな刺激となりました。この経験を自身の活動に取り組み、マレーシアの社会福祉分野への発展にさらなる協力をしていきたいと思います。

             集合写真

2023年度4次隊
小林瑞佳(高齢者介護)

※個人情報保護のため、参加者の顔には加工を行っています。

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