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【マレーシアで活躍する専門家の素顔に迫る!】 ―日本とマレーシア、そしてASEANをつなぐJICA専門家の仕事と国際協力の現在地-

2026.10.20

       (向かって左:浜田専門家、右:島津専門家)

 マレーシア日本国際工科院(MJIIT)では、日本型の工学教育を基盤に、研究・教育の発展や産業界との連携が進められています。JICAはこれまで、教育研究機材の整備や日本型工学教育の導入を支援してきました。現在は、MJIITを拠点に、日本の大学や企業、さらにASEAN各国とのつながりを生み出す「マレーシア・ジャパンリンケージオフィス(MJL)」の強化にも取り組んでいます※。

 今回は、「マレーシア・ジャパンリンケージオフィス強化プロジェクト」で活躍されている大学間連携を担当する島津専門家と、産学連携を担当する浜田専門家に、これまでのキャリアや現在の仕事内容、マレーシアの高等教育が抱える課題、そして国際協力の魅力について伺いました!

※出典:マレーシア日本国際工科院マレーシア・ジャパンリンケージオフィス強化プロジェクト | ODA見える化サイト

Q:まず、お二人の現在の仕事内容を教えてください!

A: 島津さん:

私は、主に大学間連携を担当していて、日本の大学やASEANの大学とMJIITとの連携を促進し、将来的な協定や共同研究、学生交流などにつながる機会をつくるような活動を行っています。

MJIITに来る前は、タイを拠点とした「AUN/SEED-Net」※というJICAの高等教育の技術協力プロジェクトに約8年間携わっていました。SEED-NetにはASEAN各国の大学が参加しており、日本の大学とのネットワーク構築や連携促進に取り組みました。また、東ティモールでは約3年間、東ティモール国立大学工学部教員の教育能力向上に関する支援に携わりました。今回は、私にとって高等教育分野で携わる3件目の案件になります。

※参照:大学間ネットワークの構築で国際頭脳循環を実現|JICA MAGAZINE | 広報誌 JICAマガジン

浜田さん:

私は、主に産学連携を担当しています。企業と大学をつなぎ、双方のニーズや強みを結びつけることが主な役割です。日本企業や在マレーシア日系企業が求める人材像や研究ニーズをMJIITに伝えたり、MJIITの研究・教育の取り組みを企業に紹介したりしながら、具体的な連携につながる機会をつくることに努めています。技術協力プロジェクトの経理も担当し、他にも来訪者対応やイベントの調整など、さまざまな業務を並行して対応しています。

MJIITの専門家になる前は、2004年のJICAフィジー事務所にボランティア調整員として赴任したことがJICA事業に携わった最初であり、そのあとキルギス共和国日本人材開発センター※の技術協力プロジェクトに合計7年以上、専門家として携わりました。

※参照:キルギス共和国日本人材開発センター(KRJC) | 事業について - JICA

Q:お二人は、なぜ国際協力の仕事を選んだのでしょうか?

A:島津さん:

高校生の頃から、漠然と国際協力に関心がありました。大学進学後は、NGOのスタディツアーに参加や海外で語学研修などを通じて、国際協力の理解が深まる中で、少しずつ関心が深まっていきました。

大きな転機になったのは、アフリカのガーナで海外協力隊として活動した経験です。現地の高校で数学と化学を教えていました。首都から車で数時間離れた地域で、停電や断水も珍しくない環境でしたが、現地の人たちは私を温かく迎えてくれ、食事を作ってくれたり、慣れない土地での生活を気遣っていただいたことは、今でも強く印象に残っています。

現地では支援する立場でありながら、実際には私自身が多くのことを学び、自分が現地の人たちから多くのものを受け取ったからこそ、自分も何か貢献したいという思いが強くなりました。この経験が、現在まで国際協力の仕事を続ける原動力になっています。

浜田さん:

私は短大を卒業した後、5年間公務員として働いていました。その中で、もっと新しい世界を見てみたい、自分の視野を広げたいという思いから退職し、イギリスへ語学留学しました。

そこで、チャリティショップでボランティアとして働く中で、Oxfam※の活動やフェアトレードという考え方を知りました。それまで知らなかった国際協力の世界に触れ、「こういう仕事があるのか」と興味を持ったことが一つの転機となりました。

帰国後は大学に3年次編入し、国際関係や開発を中心に学びました。さらに交換留学を利用しイギリスに渡り、開発学を学ぶ中で、この分野で仕事をしてみたいと思うようになりました。卒業後、国際協力に関わる仕事を探す中でボランティア調整員に応募し、JICAの仕事に携わることになりました。

※参照:About Us | Oxfam International

Q:JICA専門家というと、会議や資料作成をイメージする人も多いと思います。実際の一日はどのようなものですか?

A:島津さん:

大学での会議も比較的長時間に及ぶことが多く、一部の会議では3時間ほどかかることがあります。また、大規模なイベントの前には、関係者との調整や準備に多くの時間を使います。イベント終了後も、報告書の作成やフォローアップが必要です。

私自身、着任して間もない時期に、1週間程度の日本出張を経験しました。MJIITでの仕事は、単にデスクワークとして資料を作成するだけではなく、多様な関係者と直接コミュニケーションをとりながら調整を行い、次の連携につなげていく仕事だと感じています。

浜田さん:

決まったルーティンは、ほとんどありません。日本の大学や日系企業から来訪者があれば、その都度、準備や面談の調整を行いますし、イベントや会議への参加など、急な依頼に対応することもあります。

MJIITには、日本の大学関係者や企業関係者など、さまざまな方が訪れます。来訪者との面談、イベントの調整、資料作成、経理など、複数の業務を同時に進めることが多く、その時々の状況に応じて優先順位をつけながら対応しています。

Q:大学間連携は、なぜ重要なのでしょうか?

A:島津さん:

一つの大学だけで課題に対応するよりも、複数の大学がそれぞれの知見や経験を持ち寄った方が、より効果的な解決策、研究成果を生み出せる場合があります。日本の大学とMJIITが連携することで、共同研究や学生交流などさまざまな可能性が広がります。

MJIITには、日本の大学関係者が多く訪れます。最初は視察や情報交換であっても、それが将来的な大学間協定や共同研究の種に発展することも少なくありません。そのため、誰がいつ訪れ、どのような関心やニーズを持っていたのかを適切に記録、共有し、継続的な関係構築につなげていくことが重要です。

MJLは、そうした情報を一元的に管理するとともに、大学や企業との連携を調整する窓口としての役割を担っています。名称には「マレーシア・ジャパン」が含まれていますが、その役割はマレーシアと日本だけをつなぐだけではなく、ASEAN各国の大学や企業も含め、様々な大学がこれまで接点を持っていなかった相手とつながる橋渡し役となることを目指しています。

Q:産学連携には、どのような意義がありますか?

A:浜田さん:

企業は、大学を卒業後に社会で活躍できる人材を求めています。一方、大学は教育や研究を担う役割があるだけではなく、社会や産業界の変化を踏まえた人材の育成も重要な役割です。しかし、両者の認識にギャップが生じ、企業が求める人材と、大学が育てる人材の間にミスマッチが生じる可能性があります。

そのため、MJIITでは、企業関係者からカリキュラムへのアドバイスを受けて、AIをはじめ産業界で必要とされる知識や技術などの急速な変化に対応できるように取り組んでいます。企業の声やニーズを教育に生かしていくことは、学生が社会で活躍するための重要な取り組みとなります。

また、企業が抱える課題と、大学が有する研究設備や専門知識をつなぐことも重要な役割です。企業が単独で研究を進めるよりも、すでにその分野で研究している大学と連携することで、より効率的かつ効果的な成果を生み出す可能性があります。企業と大学が互いの強みを生かすことで、双方にとってメリットのある協力関係を築けると考えています。現在は、マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)※とも連携しながら、企業への情報共有やイベントへの参加呼びかけを行っています。将来的には、技術協力プロジェクトの支援に頼ることなく、MJIIT自身が企業との関係を継続・発展させられる状態を目指しています。

※参照:The Japanese Chamber of Trade & Industry, Malaysia - (JACTIM)

    MJIITの入り口に掲示されている産業界との連携先

Q:マレーシアの高等教育には、どのような課題がありますか?

A:島津さん:

マレーシアの大学は、世界大学ランキングを非常に重視しています。ランキングが向上すれば、優秀な学生や研究者を集めやすくなり、大学の国際的な評価や知名度も高まります。そのため、ランキングを意識すること自体は自然なことです。一方で、ランキングを上げること自体が目的化してしまうと、研究の質がおろそかになるリスクもはらんでいます。だからこそ、数値だけでは測れない、地道で質の高い教育や研究をどう積み重ねていくかが重要だと考えています。

MJIITでは、研究室を中心とした教育や、「信頼」「配慮」といった日本型教育の考え方を取り入れています。こうした取り組みは短期間で成果が見えるものではありませんが、学生と教員の関係づくりや主体的な学びを支える重要な要素です。日本の教育の良さをそのまま押しつけるのではなく、マレーシアの環境に合う形で共有し、長期的に根づかせていくことが大切だと考えています。

ランキングのような目に見える成果だけでなく、教育と研究の質を着実に高めていくことが、MJIITの持続的な発展につながるのではないかと考えています。

浜田さん:

STEM分野※を志す若者が減ってきていることも、課題の一つです。これは日本にも共通する課題だと思います。MJIITでは、中学生や高校生を対象にしたSTEMワークショップを開催し、工学や科学技術の面白さに触れる機会を提供することで、こういった分野に関心を持つような次世代の人材育成にも取り組んでいます。

一方で、マレーシアには、女性エンジニアが多いという強みもあります。日本と比べて工学分野に進む女性も多く、男女比がほぼ半々となるケースも見られます。また、多くの学生や研究者が英語で教育や研究活動を行っており、海外の大学や企業とも連携しやすい環境が整っていることから、教育のハブとして大きな可能性を持っています。

※科学・技術・工学・数学(Science, Technology, Engineering and Mathematics: STEM) の4分野のこと。

Q:最後に、これから国際協力を目指す若者へメッセージをお願いします!

A:島津さん:

マレーシアの人々は、日本がこれまで行ってきた支援に対して、とても感謝してくれています。そして、その成果を自分たちの力で次の世代や他の国に還元したいという思いを持ってくれています。

マレーシアは、すでに多くのことを自分たちで進められる国です。その中で、日本人として、JICA専門家として何ができるのかを考えながら、自分の役割を探していきたいと思っています。相手の力を信じ、必要なところで一緒に取り組むことが、これからの国際協力には重要だと考えています。

浜田さん:

私からは、特に女性の皆さんに向けてメッセージを送りたいと思います。国際協力に関心を持つ女性や女子学生の中には、結婚や出産とキャリアの両立について悩む人もいると思います。しかし、働き方や暮らし方には、実際にはいろいろな方法があります。私自身も、まっすぐ一つの道を歩いてきたわけではありません。

「やりたい」という気持ちがあるなら、最初から諦める必要はありません。いろいろな経験を重ねながら、自分に合ったキャリアを探していけばよいと思います。国際協力の世界には、現場で活動する以外にも、大学や企業、行政など、さまざまな関わり方があります。ぜひ一歩踏み出して、挑戦してほしいです。

         インタビューの様子

聞き手(インタビュー後の感想) :

両専門家の技術協力プロジェクトでの活動は日本からマレーシアへ一方的に知識や技術を届けることではありません。MJIITとMJLの組織能力の強化を通じて、大学、企業、学生、そしてASEAN各国の人々が互いの強みを持ち寄り、新たな教育・研究・産業の可能性を生み出すことです。国際協力は、支援する側とされる側に分かれるものではなく、ともに学び、成長し、次のつながりをつくる活動なのかもしれません。


語り手:島津専門家・浜田専門家

聞き手:JICAマレーシア事務所インターン 
山田のぞみ 佐藤美友

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