jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

海外協力隊員の挑戦と成長            メキシコでの理学療法士の経験 佐藤隊員

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

2024.11.25

COVID19のパンデミックの影響で世界中の人々の生活は大きく変化しました。その中で、新たな挑戦に向かう人々も現れました。今回は、JICA海外協力隊員(以下、「海外協力隊」)としてメキシコシティ(メキシコ合衆国首都)にある脳性麻痺者協会(スペイン語でAsociación Pro Personas con Parálisis Cerebral、以下記事内ではAPAC)で活動する理学療法士、佐藤隊員のインタビューを通して、佐藤隊員のメキシコでの経験と成長について探ってみたいと思います。

佐藤隊員は、COVID19のパンデミックにより自分の時間が増え、社会や世界に貢献したいという思いから海外協力隊への応募を決意しました。理学療法士としての経験や個別性を大事にしたリハビリのアプローチが、メキシコでの活動にどのように活かされたのか、また、異文化の中での挑戦や困難、そしてそこから得られる喜びや成長などについても聞いてみました。

個別性を大事にしたリハビリのアプローチを心掛けている










― 海外協力隊になろうと思ったきっかけについて教えてください。
これまでの経験をどのように活かすことが目的でしたか。

佐藤隊員

佐藤隊員:海外協力隊に参加するきっかけは、JICAの存在は以前の職場に経験者の先輩がいて、将来自分もなれたらいいなと思っていました。そう思い始めて実行に移すまで約10年かかりましたが、海外協力隊に応募するきっかけはCOVID19のパンデミックにより自分の時間が増え、30歳になる前にやりたいことを考えるようになったことです。私は理学療法士としての経験を活かし、社会や世界に貢献したいと考えました。日本で約10年間、理学療法士として大人から子どもまで診てきました。そうした違いだけではなく、個々の性格や家庭環境などを考慮した、個別性を大事にしたリハビリのアプローチをメキシコでも日々心掛けていきたいです。メキシコでは個性を大切にするため、日本よりもやりやすいと感じています。そして、まずは自分が楽しく仕事をして過ごし、その延長線上に学びや幸せがあるという構造が私にとって一番理想の環境となっています。


― メキシコで実際に理学療法士として難しいと感じた場面はどういった場面でしたか。

佐藤隊員:メキシコでの活動で難しかったのは、言語の問題や文化の違いです。スペイン語でのコミュニケーションや治療指導が挑戦でした。特に、病気や症状の名前など、例えば「運動障害」と直訳しても沢山のケースがあるため、一つ一つを理解するのに大変時間がかかりました。また、子どものおもちゃや遊び方など、そうしたところも難しいです。個別性を大事にした治療アプローチを理解してもらうことも課題でした。
また、スペインの団体からの寄付で導入されたロボット治療の導入に際し、利用方法の明確な検査や、どのようにして家庭や会社に落とし込むかのビジョンが必要であり、それがないと継続して治療を行っていくのは難しいと感じたことでした。

治療のやり方を記録として残し、医療ミスの防止やよりよい治療法へとつなげたい

配属先であるAPACの様子

― 佐藤隊員が日本に戻った後でも、継続してメキシコで取り入れてほしいと思う、日本の利点はどういったところでしょうか。

佐藤隊員:現在私の所属するAPACでも取り組んでいることですが、カルテを利用した記録の大事さです。メキシコでは患者のこれまでの治療方法などを記録する習慣がなく、引継ぎなどもない状態です。そのため、これらをメキシコでも取り入れることで、医療ミスなどのトラブルも回避でき、より効果的な治療が提供されるでしょう。
また、APACではしばしば国からの支援がもう少しあればと感じる場面も少なくありません。よく耳にするのは、個人に合わせた車椅子の導入など、福祉用具への補助が多くあればと思います。施設内もスロープがないため、介助なしでは登ることができません。患者の方には自立して生活してほしいと願っていますので、仕事に行きやすい環境づくりや支援が必要です。


― メキシコに来て良かったと思うことを数点ほど挙げてください。

佐藤隊員:メキシコに来て良かったと思うことは、メキシコ人のポジティブさや温かさです。施設内での新しい治療手法の導入も調整しやすかったです。日本のような厳しい労働プレッシャーがないため、プレッシャーを感じずに自分の意見やアイディアを発信できる点も良かったです。また、人種差別のほとんどない社会環境がメキシコにはあり、異なる文化を持つ人々が協力しやすい環境を作り出しています。メキシコ滞在中、殆ど自分が日本人ということで嫌な思いをしたことはありません。

経験を積んでいけば、後から目標はついてきます!

配属先であるAPAC

― JICA海外協力隊を目指す方にメッセージをお願いします。

佐藤隊員:JICA海外協力隊を目指す皆さんへのメッセージとして、明確な目標や目的がなくても、まずは一歩踏み出してみることが大切です。経験を積んでいけば、後から目的や目標がついてくることもあります。新しい環境や人との交流を通じて成長できる素晴らしい経験が待っています。是非、自分の経験や知識を活かしつつ、積極的に挑戦してみてください。これがきっと、人生を豊かにする一環となることでしょう。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ