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ソーシャルワーカー・平林隊員の視点から見た   メキシコの課題と魅力

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

2024.11.25

平林隊員は、自身の好奇心に導かれて海外協力隊に参加した経験を持つ方です。メキシコ・メキシコシティの青少年研究所(スペイン語でInstituto de la Juventud de la Ciudad de México 以下、「INJUVE」)でのソーシャルワーカーとしての活動や青少年との関わりを通じて、異文化体験や課題について深く考察してきました。今回のインタビューでは、平林隊員がなぜ海外協力隊に参加しようと思ったのか、メキシコでの活動で直面した困難や魅力、そして今後の展望について詳しく語っていただきます。また、メキシコの現状や地域の課題についても触れ、海外協力隊を目指す方へのメッセージをお届けします。是非、平林隊員のメキシコでの貴重な体験や見解に耳を傾けてみてください。

異質なものを知り、
自分の世界を広げたい

平林隊員

― 平林隊員が海外協力隊になろうと思ったきっかけについて教えていただけますか。これまでの経験をどのように活かすことが目的でしたか?

平林隊員:自分の好奇心に従って生きることがきっかけでした。社会人としての経験を海外で活かし、キラキラした世界に飛び込みたいと思いました。以前大学院では文化人類学的視点から論文を書いた経験もあり、異文化体験を通じて異質なものを知り、そして自分の世界を広げたいと考えました。


― メキシコで実際にソーシャルワーカーとして難しいと感じた場面はどういった場面でしたか?

平林隊員:ソーシャルワーカーとして個人の問題に対して分析し、社会の問題と結びつけることが難しい場面がありました。特に言葉の壁や文化の違いがコミュニケーションを困難にしました。日本でもある問題が、更に言語の問題で難しさを感じました。生徒たちが言葉ではなく別の手段でコミュニケーションをする、non verbal communicationなども最初は難しく感じましたが、慣れてくると理解できた時に喜びと嬉しさが出てきました。メキシコ人の方はおおらかで皆さんフレンドリーなため、日本にいる時より居心地の良さを感じています。

若者を取り巻く環境を理解し、包括的な支援・アプローチが必要

― 日頃、メキシコの若者と関わる機会の多い平林隊員ですが、メキシコと日本の若者の違いはどういったところにあるでしょうか?

平林隊員:メキシコの若者たちは非言語コミュニケーションをより多く使います。また、日本の青少年よりも自分の主張を言葉で表現し、リラックスしています。また、メキシコは貧富の差があるため、その地域や環境によっても異なる特徴があります。私のいるメキシコシティは都市化しており、交通網も発達しているため、若者たちが受けているものが違うのではないかと思います。 「この子たちはこうなんだ」というレッテルや思い込みをもたないように心がけています。海外協力隊としての活動が終わり、日本に帰国したあとに日本の若者たちがどう映るのか。異文化体験によって自国のことを知るという面白さも生じてきます。

― メキシコ政府の援助が少ないこと、障がい者施設なのにバリアフリーになっていない、ソーシャルワーカーの人手不足、施設を離れた後の若者のフォロー不足など、様々な課題があるようですね。これらについてどのように感じていますか?

配属先であるINJUVEでの活動の様子

平林隊員:これらの課題はどれも深刻であり、特に地域の青少年にとっては大きな影響を与えています。メキシコ政府や関連機関による支援が必要不可欠です。また、施設やサービスのバリアフリー化や施設を出た後のフォローアップの充実が急務です。障がい児施設でのクラスは大学で心理学や社会学を専攻している生徒がボランティアで受け持っています。大学に障がい児専門の教育を学ぶカリキュラムも導入したほうがいいのではないかとも考えました。
また、障害を持つ若者の保護者の方と話すチャンスがあれば増やしていきたいです。私の持った印象としては、あまり子どもたちに手厚い感じではなく、「障害を持ったあなたを私は受け入れている」といったものでした。実際、どのように考えているのか、保護者も含めた包括的なあプローチをもっと進めていくことが出来ればと思います。

メキシコは豊かな文化を持つ国!非日常的な体験は自分の成長に必ず繋がる!

配属先であるINJUVEに掲示されている張り紙
「Nothing them without them」「Include me」
意訳「彼ら無しでは何もない」「私も含めて」

― メキシコにいらっしゃる前と、実際に赴任になった後でイメージは変わりましたか。どういったところに惹かれましたか?

平林隊員:メキシコに赴任する前は治安の面が心配で、私の両親も心配していましたが、実際に来てみると普通の生活が送れることがわかりました。気候も良く青空の広がる日が多く、快適に過ごすことが出来ています。また、メキシコの豊かな文化や料理にも惹かれました。タマレス(tamales)やパン・デ・ムエルト(pan de muerto)など、食によって季節や行事を感じます。そうした行事だけではなく、普段から家族で過ごす時間を大切にする文化にも暖かさを感じています。


― 最後に、JICA海外協力隊を目指す方にメッセージをお願いします。

平林隊員:是非チャレンジしてほしいです。非日常的な体験が自己成長に繋がることを信じています。困った時は助けを求めることも大切です。必ず誰かが手を差し伸べてくれます。自分の世界を広げるために一歩踏み出してみましょう。

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