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日本での学びを地域の力に ― アグアスカリエンテス州に広がるJICA研修の成果 ―

2026.03.03

左からErika氏、Armin氏

 メキシコ中部に位置するアグアスカリエンテス州。 この地で、日本での学びを実践に移している2人の行政関係者がいる。 教育分野と経済開発分野という異なる立場から、それぞれがJICA研修で得た知見を現場に生かしている。

教育と産業をつなぐ架け橋に

研修中の様子

Erika氏(CONALEPアグアスカリエンテス州本部)

 23年以上にわたりCONALEP(国立専門技術教育学校)に勤務するErika氏は、州本部で連携部門長を務めている。企業と教育機関を結び、学生の実習や就職機会を創出することが主な役割だ。同州には、多くの日系企業があるため、日本企業との連携をする機会も多くあるという。
 2018年、彼女はJICAの研修に参加し、日本で1か月間、教育機関の運営改善や企業連携の在り方について学んだ。当時、同州では自動車産業向け人材育成プロジェクトが進行しており、新たな学科設立という大きな挑戦の最中にあった。

「日本の専門家の働き方は非常に体系的で、完璧主義的でした。その方法を直接学びたいと思い、研修への参加を決めました。日本での研修中特に印象的だったのは、日本企業の教育への協力体制です。多くの企業が学生を受け入れ、社内に研修部門を持ち、成果を継続的に見直している姿に大きな刺激を受けました。」

 日本での研修を終えてメキシコに帰国し、月次の成果指標レビュー、行動計画の明確化、企業代表を含む連携委員会の強化、実習人数や奨学金数のデータ管理の徹底といった、研修で学んだ事項を導入した。その結果、情報管理の質が向上し、州全体の成果を可視化できる体制が整った。導入前と比較して、報告の質や成果の把握が大きく改善した。
 しかしながら、日本企業のような学生受け入れモデルをそのまま導入することの難しさもある。メキシコでは、企業によって未成年学生の受け入れに制約がある。また、学生向けの研修プログラムを実施しても、管轄する部署の人事異動によって継続されないといった問題もある。

産業多角化への挑戦

研修中の様子

Armin氏(アグアスカリエンテス州経済開発・科学技術省)

 一方、州の経済開発を担う立場から研修に参加したのがArmin氏である。
同氏は現在、Secretaría de Desarrollo Económico, Ciencia y Tecnología del Estado de Aguascalientes(アグアスカリエンテス州経済開発局)でビジネスインテリジェンス部長を務めている。アグアスカリエンテス州の経済は自動車産業への依存度が高く、持続的成長のためには産業多角化が不可欠だ。その課題意識から、2024年にJICA研修へ参加。テーマは新産業創出、特に医療科学やグリーン水素分野だった。

「日本では、政府、大企業、スタートアップが連携し、産業エコシステムを形成していました。その構造を理解したかったため研修への参加を希望しました。」

 研修で特に実践的だったのが、「ロジックモデル」による政策設計である。目的、手段、成果の因果関係を明確化し、段階的に戦略を構築する手法だ。帰国後、Armin氏はこの手法を半導体産業開発プロジェクトに応用している。半導体は国家安全保障とも関わる高度で複雑な分野だが、ロジックモデルによりステークホルダーの役割を整理し、行政交代があっても継続可能な設計を目指している。

「計画は固定的なものではなく、生きた文書であるべきです。常に状況に合わせて、計画を修正し、モニタリングすることの重要性を学びました。」

 日本とメキシコの制度的違いから、研修で学んだようにそのまま再現できない部分もあるが、戦略設計の精度は向上した。

日墨協力の可能性

 教育分野と経済分野。立場は異なるが、二人に共通しているのは「日本での学びを地域に還元したい」という強い思いである。

「これから参加する方には、学びだけでなく、人とのつながりも大切にしてほしい。」(Erika氏)

「日本とメキシコは補完関係にあります。この協力は、今後さらに大きな可能性を持っています。」(Armin氏)

 JICA研修で得た知見は、単なる知識にとどまらない。それは、地域の教育制度や産業政策を変革する種として、根を下ろし始めている。アグアスカリエンテス州での取り組みは、日墨協力の具体的な成果の一端を示している。

・編集後記
 メキシコと日本は、日系企業が多く進出していることからも分かるように産業面では特に繋がりが強い。その中で、お互いの働き方や文化を知ることは、二国間のさらなる発展に非常に重要な機会となる。私自身、メキシコで生活する中で気づくことが多いように、実際に文化に触れることで得られることは、身となり深い学びになるはずだ。だからこそ、このような研修に大きな意味がある。インタビューに快く協力してくださったErikaさん、Arminさん、本当にありがとうございました。

(JICAメキシコ事務所 インターン:三浦友里江)

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