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【前編】手工芸職人と歩む海外協力隊・鈴木友菜さん

2026.03.03

 鈴木友菜さんは、2025年5月からコミュニティ開発隊員としてメキシコ、カンペチェ州カラクムル市役所の観光環境課・観光部に勤務している。担当は手工芸職人。地域の手工芸品を広く発信し、販売やプロモーションを通して職人の活動を支える役割を担っている。
 今回は、鈴木さんの任地を実際に訪問してインタビューを行い、実際に手工芸職人の方たちともお話しする機会を得た。前編では、鈴木さんが青年海外協力隊に応募するに至ったきっかけや、活動内容について紹介する。後編では、訪問した手工芸職人の方たちについて焦点を当てる。

本当にやりたいことを探して

 鈴木さんが協力隊を知ったのは中学生の頃。中学校の教員の1人が元隊員だったことがきっかけだったという。
 その後、大学を卒業し、観光業界で働く中で、次第に「自分が本当にやりたいことはこれなのだろうか。」と考えるようになった。経済的に余裕のある人を満足させる仕事もやりがいはあったが、心のどこかに引っかかりがあった。「やりたいことは別にあるのではないか。」そう自問したとき、思い出したのが協力隊の存在だった。家族のことや年齢、ライフステージなども含めて考えたうえで、「挑戦するなら今しかない。」と応募を決意した。

観光課手工芸職人担当へ

 当初の要請内容は観光プロモーション。しかし赴任後、観光課の中で手工芸分野を担当することになった。カラクムル市役所の観光課にはホテル、レストラン、エコツーリズム、ツアーガイドなど複数の分野があるが、鈴木さんは手工芸職人の支援を専門に担っている。
 業務は多岐にわたる。市役所のオフィスで業務をこなすこともあれば、実際に職人の方たちが働いている村へ赴いてヒアリングを行うこともある。信頼関係の構築は、活動するうえで非常に重要である。

4つの活動計画

(オフィスでの様子)

鈴木さんの現在の活動は、大きく4つに分けられる。

1. イベントの企画
 現在、手工芸職人の国際デー(3月19日)に合わせた販売イベントを計画している。作品販売だけでなく、ミニワークショップや、マヤ文化や環境について学べるスペースも設ける構想だ。単なる物販ではなく、地域の文化的背景や職人の想いを伝える場にすることを目指している。現在は参加者を募りながら、準備を進めている段階だ。

2. 手工芸品カタログの作成  
 制作中のカタログは、単なる商品一覧ではない。雑誌のような構成を目指し、職人一人ひとりの想いや歴史、顔  写真を掲載する予定だ。「この人から買いたい」と思ってもらえるような一冊にすることが目標である。現在はデザインが完成し、実際に掲載する内容をさらに詰めていく予定である。

3. ワークショップの提供
 3月6日には、地元の手工芸職人を対象とした基礎研修を予定している。講師を務めるのは鈴木さん自身だ。大学では言語コミュニケーションを学び、「伝えること」を専門としてきた。その経験を活かし、販売の基本、コミュニケーションの取り方、消費者心理の基礎といったテーマで研修を行う予定である。
 良い作品を作るだけでなく、その魅力をどう伝えるか。商品の説明の仕方、言葉選び、表情、距離感など、実践的な内容を共有する計画だ。職人の方たちが実際に必要としていることは何か、ニーズに合わせて活動していきたいと鈴木さんは語る。

4. ホームページの作成
 手工芸品の魅力を継続的に発信していくため、ホームページの作成も計画している。現在は未着手だが、カタログ制作と連動させながら、職人の情報や作品を紹介できる場を整備する予定だ。オンラインでの発信を強化することで、地域外への販路拡大も視野に入れている。

行政の中で活動する難しさ

 活動を進める中での課題も少なくない。カウンターパートである観光環境課長は多忙で、十分に話し合う時間が取れないこともある。また、観光部長の不在期間が長いことも影響している。情報共有が十分でないと感じる場面があったため、月刊の活動報告誌を作成し、WhatsAppで配信したり、市役所の掲示板に掲示したりする取り組みを行なっている。

任地での暮らし

 生活は充実しているという。自然が豊かで、星が美しく、静かで人が優しい土地。時間に対する感覚の違いなど、日本との文化差に戸惑うこともあるが、家族を大切にする価値観には学ぶ点も多いと語る。活動は決して順調なことばかりではない。それでも、自身の活動が未来につながるものになるよう、そして、行政・職人・地域の間で、持続的な仕組みをつくるための模索が続いている。

後編では、実際に鈴木さんとともに活動する5人の手工芸職人に焦点を当て、その現場の様子を伝える。

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