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【後編】マヤ文化が根づくカラクムル市の手工芸職人

2026.03.03

本編は、 【前編】手工芸職人と歩む協力隊員・鈴木友菜さん に続く後編である

(赤い丸で囲まれた場所がユカタン半島)

 2025年5月からコミュニティ開発隊員として活動する鈴木友菜さんの任地である、メキシコ、カンペチェ州カラクムル市はユカタン半島に位置している。ユカタン半島は、マヤ文明の中心地であり、カラクムルの都市遺跡は2002年に世界文化遺産に登録された。2014年には、自然保護区も組み込まれ、「カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林 」として、複合遺産に拡大登録された。現在に至るまで、同地域ではマヤ文化の影響が強く残り、住民の一部はスペイン語に加えマヤ語を話すことができる。
 カラクムル市が抱える問題の1つとして、カラクムル遺跡以外の観光プロモーションの不足がある。その中で、鈴木さんは、手工芸分野の担当として、より多くの人にカラクムルの手工芸品について知ってもらうことを目標として活動している。カラクムル市内には、手工芸職人が働く村が複数あるが、どこも鈴木さんが普段活動している市役所からは離れている。そのため、職人が必要としている支援を知るために定期的にヒアリングに出向く。

ベインテ・デ・ノビエンブレの手工芸職人たち

 鈴木さんが普段勤務するカラクムル市役所から、車で20分ほどの場所にベインテ・デ・ノビエンブレ(Veinte de Nobiembre ※日本語で11月20日という意味)という小さな村がある。この村には手工芸職人のアトリエが点在しており、海外からの観光客が訪れることも少なくない。

1. Hilos de Vida (イロス・デ・ビダ)
 ハンモックを制作、販売している。テキーラの原料であるリュウゼツランという植物から、エネケンと呼ばれる繊維を作りハンモックを制作するのが伝統であった。現在は、エネケンを使用していないが、高温多湿のユカタン半島では通気性の良いハンモックは重宝されるため、製作は続いている。
 最近は、週に10人から15人ほどの観光客がワークショップの体験に訪れている。外国人観光客への商品の値段説明や、ワークショップ開催の際の説明をする際に、スペイン語が通じずに困ることがあるため、観光客に対応した外国語の説明書作成の必要がある。

2. Chaaku Tunich(チャアク・トゥニチ)
 María Guadalupe Tamay Camalさんは、2015年からChaak Tunich (マヤ語で「赤い石」の意)という名前のアトリエで作品の販売、ワークショップを開催している。村の近くの山から石を切り出し、そこに彫刻を施して作品を制作している。ワークショップを始めた当初は、27人の職人が集まってアトリエの運営を協力して行っていたが、だんだんと数が減っていき、今では1人で活動している。しかし、旅行会社と提携をしたことでアトリエを訪れる人の数は増え、ここ3か月は週に平均30人が体験をしている。

3. Artesano Sabio(アルテサノ・サビオ)
 Oferia Cauch Dzibさんは、2008年からお皿やキッチン用品など様々な木製製品を制作、販売している。2015年から始めたワークショップでは、木製製品の加工体験だけでなく、どのように木を植えて育てていくのかを学ぶことができるコースも提供している。ジリコテ(学名 Cordia dodecandra )というメキシコ南部、ベリーズ、グアテマラといった中米地域が原産の木を使用している製品も販売されている。ジリコテの木材は非常に堅く、耐久性があり、黒みがかった木目が非常に美しい。これらの製品は地域ならではの素材由来であるという魅力がある。鈴木さんの今後の活動でより多くの人に製品を知ってもらう機会ができることをOferiaさんは期待している。

4. Neek Ich Che(ネク・イチ・チェ)
 Mayra Luibe Dzib Mukulさんが働く場所は、父親から譲り受けた緑豊かな広々とした土地の中にある。植物や木の種を使い、鳥や動物などの飾り物、アクセサリー等を販売している。敷地内には、商品の販売を行っている小さな建物のほかに、屋外のワークショップ会場が設けられている。ワークショップでは主に以下の4種類の体験ができる。

1. 販売されているような植物の種子を使った自分オリジナルの作品作り。

2. 木について学ぶワークショップ。祖先の知恵である薬木について知ることができる。 

3. ハーブティーのテイスティング。季節によって変わる自然素材の味を感じることができる。

4. 伝統の食について学び、実際に参加者が作って食べることができるワークショップ。

コロナ禍前は多くの観光客が訪れていたが、パンデミックの影響で激減してしまった。

5. Las Amapolas(ラス・アマポラス)
 Sarita Cahuich Cahuichさんは、マヤ語でチョック・チュイ(Xook Chuy)、「十字の点」を意味する技法を使った刺繍のワークショップを行っている。参加者は、カラクムルに生息する動物の柄の刺繍を布に施し、Saritaさんが袋の形に仕上げ、持ち帰ることができる。2010年からワークショップを開催し始めた。村の人から衣服のお直しの依頼を受けることもあれば、自身で作成した服や小物の販売も行っている。ワークショップを実際に体験してみると、想像していたよりも難しく、手間暇がかかる作業であるということが実感できる。

カラクムルの魅力を広げる

 ベインテ・デ・ノビエンブレは非常に小さな村であるため、配達会社の郵送サービスが利用できず、違う町に商品を届けるためにも労力を伴う。そのため、村を訪れる観光客はベインテ・デ・ノビエンブレのような村の手工芸職人にとっては非常に重要な存在だ。また、ヨーロッパやアジアからの観光客への対応も1つの課題である。今回訪問したアトリエの職人さんたちは、村についての情報発信やワークショップ用の説明を英語作成するための支援を必要としていた。村の入り口に、看板や村内の地図を設置する、ウェブサイトを作成するなどアイデアは尽きない。
 今回訪問した5名の職人さんはマヤ系の家族を持ち、苗字もスペイン語ではなくマヤ語である。マヤの文化の継承者でもある彼らに直接会って、地元の文化を体験できるという素晴らしさを、隊員活動を通じて発信していく必要がある。カラクムルの魅力は、カラクムル遺跡だけでなく、地元の人との交流からも生まれる文化交流にもあるのだ。

編集後記
 鈴木友菜さんの活動拠点はカラクムル市役所だが、実際に村に赴いて職人さんに直接会って関係性や信頼を構築することの大事さを感じた。職人さんによっては他にも仕事をもっており、状況は様々であるが、「実際に職人さんに必要とされている支援を確りと把握したうえで、活動を行いたい。」という柔軟な姿勢が非常に重要かつ素敵であると感じた。インタビューに協力してくださった鈴木友菜隊員、本当にありがとうございました。カラクムル市での活躍を陰ながら応援しています。

(JICAメキシコ事務所 インターン:三浦友里江)

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