地域概況

中東

新旧の脅威が命や生活を圧迫

中東地域では、依然「アラブの春」後の混迷が続いています。イエメン、シリア、リビアの内戦の長期化、シリア周辺国での難民の固定化、コロナ禍からの経済・ 社会的な回復の遅延、ウクライナ紛争による経済や暮らしへの影響、気候変動による水不足の深刻化など、複合的な危機が顕在化しています。

迅速かつ中長期的な協力を展開

こうした背景の下、2022年度は、①3つの危機(地政学的な危機、新型コロナウイルス危機、気候変動の危機)に対する戦略的協力、②日本の政策、開発経験や日本らしさの共有の推進を柱に、迅速かつ中長期的な視点で協力を展開しました。
中東地域では、中小企業支援と雇用創出に向け、パレスチナ銀行に初めての融資を実施。シリア難民を受け入れているヨルダン政府への財政支援も行っています。イラクでは、日本の技術を活用して、環境規制に合致する高品質な石油製品の精製事業に協力しています。
また、コロナ禍により脆弱性が露呈した保健医療や社会保障体制の強化に向けて、各国での人材育成や機材供与などに加え、エジプトでのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、チュニジアの脆弱層向け社会保障の拡大、パレスチナの感染症廃棄物の処理対策に協力しました。気候変動対策についても、JICAの貢献策を検討するとともに、各国の能力強化に取り組んでいます。
日本の開発経験や日本らしさの共有については、域内12カ国でJICAチェアなどを通じて、知日派・親日派の一層の育成に貢献しています。また、エジプトで「日本式教育」に取り組む教員の能力強化を図り、51校のエジプト日本学校を拠点に日本式教育の展開に協力しています。