所長あいさつ

JICAモロッコ事務所長の川端智之(かわばたともゆき)です。2024年3月に事務所長として当地に着任いたしました。

皆様はモロッコと聞いてどのようなイメージをお持ちになるでしょうか?映画「カサブランカ」の知名度は今も健在ですが、精巧なモザイク模様の手工芸品や建造物、マラケシュのジャマ=エル=フナ広場の蛇遣いや熱気、あるいは近所のスーパーで買ったタコがモロッコ産だった、といったことを思い出す方もいらっしゃるかと存じます。モロッコは昔も今も魅力と活気溢れる国ですが、モロッコと日本の類似点・繋がり、現在のモロッコについてもう少しご紹介させて下さい。

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モロッコはアフリカ大陸の北西端に位置し、ジブラルタル海峡を挟んでヨーロッパと目と鼻の先という地政学的な要衝にあります。アラビア語の国名にある「マグリブ」は「日の没する処」の意(「日の出る処」日本と対をなす)、ローマ時代より栄え、古都フェズの建設は8世紀末(日本の平安京建設と同時期)、現首都ラバトの主要な建造物は12世紀末(日本では鎌倉幕府発足)、といった日本の歴史を所々連想させるような時代の変遷を有し今に至ります。

現在では著名な観光目的地としての魅力はそのままに、地中海に面した街タンジェでは大規模な港や工業団地が開発され、欧州向けの自動車・航空産業が成長する等、製造・物流拠点としても注目を集めています。タンジェ~カサブランカ間の350kmを2時間強で結ぶアフリカ発の高速鉄道は2018年に開業、主要都市を結ぶ高速道路網も整備されています。また、イスラム穏健派としての独自の地位は健在であり、近年は仏語圏を中心としたアフリカ諸国との関係を急速に強化し、経済・政治ともに地域における有力な国として存在感を高めています。

モロッコの一人当たりの所得は3,000ドルを超えるレベルに達していますが、他方、教育・医療等における大都市と地方部の格差是正、若年層を中心とする高い失業率改善等の課題を依然抱えています。昨今では気候変動による降水量不足の傾向が顕著であり、農業や社会全般への影響が深刻となっています。

JICAは従来、基礎教育や母子保健といった分野での技術協力を実施する一方、高速道路、鉄道、灌漑施設、上下水道等のインフラ建設のための資金協力を数多く実施してきました。大西洋と地中海に面して豊富な漁業資源を有するモロッコへの水産分野での協力は1970年代以来脈々と続いています。累計約1,200人に達する海外協力隊(ボランティア)の方々の活動やモロッコ人研修員の日本への派遣もモロッコと日本の確固たる信頼醸成に大きく寄与しています。

2030年のサッカーワールドカップ共催が決定しさらに活気づくとともに、様々な社会課題への取り組みが急務であるモロッコに対し、JICAとしても様々な形で協力を行うことにより、今後のモロッコの一層の発展に寄与することはもちろん、より多くの日本の個人や企業の皆様がモロッコにご注目頂きぜひこの魅力と可能性に溢れる国にお越し頂けるように尽力したいと存じます。

モロッコ事務所
所長 川端 智之