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日本で働くことを目指して JISRの就職支援

シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(Japanese Initiative for the future of Syrian Refugees:JISR)では、大学院卒業後に日本での就職を希望する研修員に対して、就職支援プログラム及びインターンシップへの参加支援を実施しています。日本の就職活動の仕組みはとても独特なため、多くの外国人留学生にとっては新しく学ぶことや準備することが多くあります。JISR生たちは日本語学習や大学院での研究と並行しながら、就職活動に奮闘しています。

就職支援プログラム

2024年8月27日から29日の3日間、これから就職活動を控えたJISR生を対象とした就職支援プログラムを実施しました。JISR生は来日後約8か月間の日本語研修を受けた後、修士課程に進学します。多くのJISR生が新卒として就職活動を進めるため、在学中に就職活動を進めて内定を獲得することを目標とします。日本では一般的なプロセスですが、海外においては新卒一括採用の概念がない国も多く、企業側のニーズにより都度求人を出す通年採用が一般的です。このため就職活動は卒業後に始めるケースもよくあり、在学中に内定をもらう日本独特のシステムはJISR生にとって馴染みにくい特徴の一つです。採用スケジュール以外にも、日本では一般的な入社後の業務内容や勤務地の限定がない採用形態(メンバーシップ型雇用)と、海外では一般的な専門分野に特化した業務をベースにした採用形態(ジョブ型雇用)の違いに戸惑いを感じるJISR生も少なくありません。
本就職支援プログラムでは、このような日本独自の就職活動について理解を深めると共に、エントリーシート・履歴書の書き方、自身の長所・短所を把握するためのSWOT分析*1、面接相手に簡潔かつ分かりやすく受け答えするためのPREP法*2を用いた志望動機や自己PRの伝え方、日本でのビジネスマナーや企業慣行、先輩生の体験談、模擬面接といった実践的なプログラムを通じて、大学院進学前という早い段階から就職に向けた準備を支援しています。

  • * 1:SWOT分析とは、対象となる物事のStrength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)を特定して分析する手法です。
  • * 2:PREP法とは、Point(要点)Reason(理由)Example(具体例)Point(要点)という構成で相手にわかりやすく物事を伝える技法です。

参加したJISR生からは「エントリーシートの書き方がわかってとてもよかった」、「日本語が完璧ではない中でも、就職活動にどのようなステップで取り組めばよいかわかってためになった」、「SWOT分析を通じて自分の強みや弱みを発見することができた」、「面接のマナーやそのための準備について学ぶことができた」といったポジティブな感想が多数寄せられました。

真剣に講義を聞くJISR生

真剣に講義を聞くJISR生

インターンシップ

また、日本企業や仕事の内容をより深く理解するために、インターンシップの参加についても支援しています。今回はJISR生のモハマドさんにインターンシップに参加した感想についてインタビューを実施しました。

Q. インターンシップの業務内容とその感想を教えてください。

A.  株式会社サタケ(広島県)にて2週間のインターンシップに参加しました。私にとって初めてのインターンシップでしたが、初日から最終日まで多くを学ぶ機会となりました。同社は主に米等の穀物を中心とした食品全般に関わる加工機械および食品の製造販売を行っており、私は精米機械の製造部門で部品を作るための3Dソフトウェアを用いた開発業務等に関わることができました。過去に機械工学について学んだ経験と、現在大学院で学んでいるITの両方の分野を活かすことができたと思います。

Q. インターンシップを通じてどのようなことを学びましたか。

A. インターンシップ中には会社の沿革を学ぶ機会があり、1896年に創業という伝統ある会社の歴史に驚きました。また製品やサービスについては、前述の精米機械等だけでなく、「マジックライス」という長期保存できるごはんとしても雑炊としても食べられる製品について学びました。また会社組織についても教えていただき、多くの部署がありどのように業務が分けられているかを知ることができました。実際に社内でインターンシップをさせていただく中で、始業前にラジオ体操をする機会などを通じて、会社内の雰囲気を直に感じることができ、日本で働くということについて理解を深めることができました。インターンシップ中はほとんど全ての会話を日本語で行いましたので、機械に関する専門用語などについても新たに学ぶことができました。

Q. 今回のインターンシップの経験をどのように活かしていきたいですか。

A. インターンシップに参加するまでは日本の会社で実際に働くことのイメージがあまりわかなかったのですが、今回の経験を活かして自分がどのような分野で仕事をしたいかということがより明確になりました。機械のデザインや設計について興味を持つことができたので、卒業した後の仕事探しの視野が広がりました。これから自分の働き方をより具体的に考えることで、今後の就職活動に活かしていきたいと思います。

インタビューに答えてくれたモハマドさん

インタビューに答えてくれたモハマドさん

このようにインターンシップの機会は日本の企業文化の理解に加えて、JISR生自身が自分の適性、強み、関心のある分野などを明確にすることにも繋がります。そしてその後の就職活動において、志望先企業をよりよく理解し、自身の希望する業務内容や働き方に合っているか、自身のどの強みが役立てそうかなどを検討するうえでも役立ちます。
一人でも多くのJISR生が希望する仕事に就けるよう、自身に合った企業と出会えるよう、積極的にサポートを続けていきます。