トンガ火山噴火・津波災害に関する研究成果発表会を開催
2022.08.12
会議名:トンガ火山噴火・津波災害に関する研究成果発表会
開催日:2022年8月12日(金)
主催:トンガ地質局、JICA
トンガ国における、火山噴火、津波災害に関し、火山、地震、津波分野に詳しい有識者にトンガに渡航いただき、これら災害の特徴等や再現性に関する研究成果発表会をトンガ首都ヌクアロファにて開催しました。トンガでは、1月15日首都から北に約65キロメートルにある海底火山フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ(HTHH)で大規模な噴火が発生しました。津波や火山により、沿岸部で建物やの倒壊や浸水、交通や通信インフラの障害、農作物のダメージ、経済発展に重要なホテル等の観光資源への影響等、甚大な被害がありました。
JICAは、復旧・復興にあたり、Build Back Better(より良い復興)にはハザード・リスクの把握が不可欠と考え、トンガにおける今後の火山噴火及びそれに伴う津波などの再現性や規模を科学的根拠に基づき想定して検討するため、有識者を招へいし、有識者検討会として、また4月1日からはJICAが行う調査への国内支援委員会として、今次災害の発生メカニズムや将来において備えるべき災害規模の評価を行っています。
8月6日より、国内支援委員3名、国内支援委員推薦1名がトンガへ渡航し、現地での調査により災害・被害状況の確認等を行って頂きました。そして、研究成果発表会では、トンガ側の災害モニタリングや対策を行う機関に対して、今後取り組むべき技術取得に関する示唆を与えるために、これら4名のこれまでの検討内容に加え、関連する研究や技術に関する紹介を行って頂きました。
東京大学地震研究所 火山噴火予知研究センター 前野深准教授
今回火山噴火による災害の発生要因は、世界各国の科学者が調査、解析、検討を行っており、様々な見解が示されております。JICAは、トンガ天然資源省地質局とトンガの技術者や政府機関職員計32名を招いて、日本の有識者による研究成果発表会を実施しました。
火山活動全般の評価を行って頂いている市原准教授は、2022年1月15日にトンガの浅海火山で発生した大爆発は、世界中で観測された一方で国内観測データはほとんどなく、隣国フィジーの1観測点における地震・気圧データを解析し、現地目撃証言や衛星画像情報と組み合わせることにより、大爆発前後の噴火の推移を推定されました。本事例、および、2021年福徳岡ノ場浅海爆発の解析結果をご紹介頂き、火山から少し離れた少数の観測点を活用して海域の火山を効率よく監視・観測する方法をご提案頂きました。
また、前野准教授は、2022年1月HTHH噴火は大規模なマグマ水蒸気爆発を伴う噴火であったと考えられることから、この噴火の特徴をまとめられ、加えて、日本国内の近年の海域火山噴火やインドネシア・クラカタウ火山での例をご紹介され、HTHH噴火との相違点と類似点を整理し、トンガの海域火山におけるハザードの考察について発表されました。
次に、火山噴火災害+対策について検討頂いている井上客員研究員より、トンガの島々の西方約70kmに並ぶ約20の火山の西暦1700年以降の活動歴から再来期間を推定し、各火山による人的・物的被害の可能性を火山性津波を含めて整理し、それら特に人的被害の軽減に必要な火山監視体制および災害対応策に関するいくつかの提案を行って頂きました。
最後に、火山性津波とサイクロンによる高潮解析を行って頂いている有川教授からは、トンガ噴火における津波の発生メカニズムは依然不明なものの、気圧波による津波、噴火爆発に伴う津波について、感度分析を行い、その結果について現地観測データとの比較を考察頂きました。そのうえで、トンガタプ島市内に対する浸水シミュレーションを実施し、その際、護岸の高さも変化させ、避難シミュレーションを実施し、避難時間の開始と人的被害に関する検討を行い、最後には、これまでの津波と人的被害の関係の事例をいくつかをご紹介頂き、今後の対策についてトンガ側とご議論頂きました。
今回参加頂いたトンガ側の技術者からは、日本側の発表は非常に興味深く、様々な分野の有識者に知見を頂いたことへの感謝の意が表されました。
さらに、8月17日には、トンガ王国国家空間計画院とJICA共催で、「Build Back Better(より良い復興)ビジョンセミナー」の開催が予定されています。JICAは、引き続きBuild Back Betterの発信を行っていきます。
噴火履歴に基づく完新世の21の火山に
ついて紹介する井上先生
津波遡上高について議論される有川先生
地質局とのミーティングの様
子
JICAトンガ支社・高島支所長とのキ
ーノートスピーチ耳を傾けるトンガ
ケーブルと天然資源省CEOと地質局
のRennie氏
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