トルコ全土で活躍する文化財修復の専門職員へ「考古学的研究及び観光開発のための遺物修復保存」セミナーを開催
2024.08.09
2024.08.09
文明の十字路、トルコ。ヒッタイト、コンマゲネ、ウラルトゥ、ローマ、セルジューク朝トルコ、ビザンツ、そしてオスマン朝トルコと、古代から現在までの様々な文明の史跡や歴史的遺産の宝庫であるトルコは、文化財を観光資源として活用しつつも、同時に守っていかなければならない使命を負っています。また、2023年2月に発生したトルコ・シリア地震やその後の洪水では、数多くの文化財も被災し、修復保存のための専門家育成が急務となっています。
2024年7月29日―8月2日の5日間、アンカラにて、トルコ文化観光省の文化財修復専門職員(木製品、染織品修復専門家)41名を対象とする文化財修復保存セミナーを開催しました。本セミナーは技術協力事業「考古学的研究及び観光開発のための遺物修復保存」の一環として、大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト等でもJICA専門家として活動された、石井美恵専門家(佐賀大学・染織品修復保存)、岡田靖専門家(東京藝術大学・木製品修復保存)、松島朝秀専門家(高知大学・保存科学)の3名の専門家をトルコに派遣しての開催となりました。
トルコには10か所以上の文化財修復保存ラボラトリーがあり、今回のセミナーには、全国のラボと博物館に所属する専門職の政府職員が集まりました。彼ら・彼女らの現場では博物館収蔵品だけではなく、宗教施設や民家など、博物館の外にある文化財にも対応することが求めらる、文化財の「お医者さん」となるため、幅広い知識や対応が求められています。今回のセミナーでは、木製品・染織品・保存科学を融合させ、文化財の細胞レベルの構造を学ぶとともに、一般の訪問者の目線でアンカラの民俗学博物館を訪問し、博物館展示や所蔵庫での保存環境における課題を考える「気づき」を促すワークショップを行いました。研修生は機材を使用しながら温湿度や保存環境について測定・協議し、分析の考え方、保存環境の改善についての手法を学びました。日本での最新の修復保存方法が紹介されるとともに、なぜこうするのか、という背景や考え方も伝えられました。
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