シリアルバーを通じて難民も消費者も元気に!

2023.07.11

世界では、紛争や自然災害等により1億人以上の人々が強制的に避難せざるを得ない状況に置かれています。ウガンダにおいても、約150万人の難民を隣国のコンゴ民主共和国や南スーダンなどから受け入れており、その受け入れ人数はアフリカで最大規模です。一方、昨今の経済情勢や世界全体での難民の急増等により国連や民間NGO団体など人道支援機関による難民への緊急支援が減少傾向にあることから、滞在が長期化している難民の生活維持が大きな課題となっています。そんな中、民間ビジネスやそのイノベーションが難民支援に対して果たす役割に注目が集まっています。

以上の背景を踏まえ、JICAはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や首相府(Office of the Prime Minister)の協力の下、現地企業によるシリアルバーの開発・販売等を通じて難民とその受入れコミュニティの生計向上や難民問題の認知度向上を目指す「Travel Beyond Bars」プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、企画競争を経て選定された現地企業「Zahra Food Industries」(以下、「Zahra社」)が難民と受入れコミュニティからシリアルバーに必要な原料(例えば蜂蜜、パイナップル、トウモロコシ、ピーナッツ等)を一定量調達し、これらをシリアルバーに加工して販売することにより、難民とその受入れコミュニティにも新たな収入をもたらすことを目指しています。シリアルバー市場は、世界的な健康志向の高まりと多忙なライフスタイルを背景に過去4年間で4.6%の成長を遂げる等、今後も需要が高まることが期待されています。Zahra社はJICAやUNHCRの協力も得つつ、シリアルバーの最大市場である米国での販売を念頭にシリアルバーの開発と商品化、および米国市場でのテストマーケティングによる実証を行うこととしています。

蜂蜜農家

蜂蜜農家

トウモロコシ農家

トウモロコシ農家

世界難民の日である2023年6月20日に、商品開発における重要なイベントの一つであるZahra社によるシリアルバーの試食会にJICAウガンダ事務所が参加してきました。商品候補となっているラインナップは「カシューナッツ&チア」と「マカダミアナッツ&モリンガ」の2種類。最初に試食した「カシューナッツ&チア」は、パイナップルの甘酸っぱい味わいがサクサクしたコーンフレークやナッツと溶け込んだ充実した食感、そしてチアシードによるナッツ風味が食欲を満たします。次に試食した「マカダミアナッツ&モリンガ」は、マカダミアナッツの柔らかい食感に加え、モリンガやかぼちゃの種などが混ざりヘルシーな味となっていました。最終的に商品化されるのはどちらになるかまだ決まっていませんが、いずれのラインナップもウガンダ西部にあるチャングワリ難民居住区から原料全体の50%以上を調達しているそうです。Zahra社の社長であるQuresh氏は約5年前にZahra社を立上げ、ドライフルーツなどのオーガニックでヘルシーな食品の製造・販売をこれまで行ってきました。Quresh氏は「Travel Beyond Bars」プロジェクトについてこう語ります。「現場に行くと難民の方々は現在計り知れない困難に直面していますが、それでも彼女/彼らの生きる強さを感じ、そして、いつも素敵な笑顔を見せてくれます。こうして社会的にインパクトのあるビジネスの可能性をJICAと共に探る機会を得たことを大変嬉しく思っています。」

シリアルバーの試供品

シリアルバーの試作品

試食会の様子

試食会の様子

2023年12月に予定されているグローバル難民フォーラムでは日本とウガンダを含む6カ国が共同議長国を務めることが決まっており、国際社会や様々なステークホルダーが連携して難民問題を解決していくことが求められています。JICAはこれまでも難民支援の政策立案を支援する日本人アドバイザーの派遣、難民受入県・影響県における地方行政の開発計画策定能力向上への支援、さらにはコメ作りへの技術指導を通じた生計向上等の支援を行ってきました。これらに加え、Zahra社と連携して進めている「Travel Beyond Bars」プロジェクト等を通じ、難民及びホストコミュニティを包摂したビジネスの推進についても協力を進めていきます。

Zahra社のQuresh社長

Zahra社のQuresh社長

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