「5S-CQI-TQMを通じた患者安全構築プロジェクト」の視察を通して

2023.07.11

JICAウガンダ事務所インターン
長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科
野本友愛

 私は大学院で途上国の保健医療を学んでいます。大学院での学びをどのように現場で活かすことができるのか、ウガンダにおける保健医療協力について学びたいと考え、ウガンダ事務所でインターンシッププログラムに参加しました。
 一方、JICAは技術協力プロジェクト「5S-CQI-TQMを通じた患者安全構築プロジェクト」を国内の全ての地域中核病院(16施設)及び選定した県病院(1施設)と国立病院(1施設)の合計18施設にて実施しています。本プロジェクトは、5S-CQI-TQM(以下、5Sカイゼン)(注)アプローチを活用して患者安全の管理体制を強化することで、対象病院の保健医療サービスの質向上を目的としています。
 インターン活動の一環として、ウガンダ西部に位置するムベンデ地域中核病院を訪問し、実際のプロジェクト活動の様子を視察しました。病院を訪問した際、プロジェクトの専門家が中心となって、患者安全に関わる医療現場が直面している問題の解決に向けたKAIZEN研修が行われていました。KAIZENとは、病院職員が認識する問題を現場主導で少しずつ継続的に改善していくために、問題を定量的に把握・可視化する手法です。病院職員は、ケーススタディを用いた講義とグループワークを通じてKAIZEN手法を一から学んでいました。参加者は主に看護師でしたが、病院長や様々な医療専門職のスタッフも加わり、活発な意見交換が行われていました。

日本人プロジェクト専門家が病院職員に向けて講義をしている様子

日本人プロジェクト専門家が病院職員に向けて講義をしている様子

KAIZEN研修では、病院職員が積極的にグループワークに取り組んでいたのが印象に残りました。また、KAIZEN手法を使うことによって、どこに問題があるのかを具体的に把握することができるため、病院内の課題解決にむけて簡単に動き出すことができると感じました。

積極的にグループワークに取り組む様子

積極的にグループワークに取り組む様子

今回の病院訪問では、病院内の各部署の視察も行いました。ムベンデ地域中核病院は、2012年にJICAの無償資金協力事業「中央ウガンダ地域医療施設改善計画」により、外来・手術棟や救急・産科棟の改修ならびに医療機材の整備が行われた病院です。さらに2016年から2021年にかけて実施された「保健インフラマネジメントを通じた保健サービス強化プロジェクト(フェーズ2)」では、5Sカイゼン活動を用いた病院内職場環境の改善、医療機材使用者に対するトレーニング等が行われました。

JICAの無償資金協力事業で改修されたムベンデ地域中核病院

JICAの無償資金協力事業で改修されたムベンデ地域中核病院

病院視察の中で特に印象的だったことは、施設や医療機材が整備から10年経った今でも適切に使われていること、5Sカイゼンの文化が継続されていることです。一般的に途上国の保健施設では整理整頓が十分に行き届いていないことが多く、患者さんに質の高い保健医療サービスを提供できない要因の一つとなっています。実際に、私自身が過去に見た途上国の他の保健施設では、床や机に無造作に置かれているカルテや定位置にないガーゼなどの衛生材料、医薬品等を見かけることがありました。しかし、ムベンデ地域中核病院ではファイルのラベリングや定位置管理、資材の先入れ先出しなどが確立され、円滑にサービスを提供することができる環境が整備されていました。

輸血液等の先入れ先出しと定位置管理が徹底されている冷蔵庫

輸血液等の先入れ先出しと定位置管理が徹底されている冷蔵庫

今後も5Sの文化を継続し、さらにKAIZEN手法を用いて、病院内の環境改善、安全で質の高いサービスの提供に取り組んでいってほしいと感じました。

(注)5S (Sort, Set, Shine, Standardize, Sustain)- Continuous Quality Improvement - Total Quality Management:日本語の「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」、カイゼン、総合品質管理。日本の産業界で開発された職場環境改善及び品質管理の手法のこと 
プロジェクト詳細情報はこちら:
5S-CQI-TQMを通じた患者安全構築プロジェクト | ODA見える化サイト (jica.go.jp)

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