基礎教育
イエメンの基礎教育の就学率は近年向上してきたとはいえ、64.3%(2005/2006)で、特に女子の就学率は53.9%と依然低いままです。またドロップアウト率も高いです。こうした問題の背景には、世帯の貧困や教育施設の未整備、教員の不足など様々な問題がありますが、女子に関しては、誤ったイスラム教観による男性との接触に対する抵抗があり、女子用の教室やトイレ、女子教員の不足も大きな要因となっています。イエメン政府は2002年より基礎教育開発戦略(BEDS)を策定して基礎教育の向上に努めており、日本は基礎教育にかかるジェンダーおよび地方格差を是正しつつ、全ての対象児童に質の高い基礎教育の提供を促進するための協力を行っています。
職業訓練
急激な人口増加にともない、若年層を中心とした、急激な労働力人口の増加に伴う高い失業率(35%;2006年;世銀)が貧困と社会不安の要因となっています。イエメン政府は、雇用機会の創出と職業訓練の拡充を掲げ、2012年までに中卒・高卒者の15%を技術教育・職業訓練校(TEVT)が受入可能とすることを目標とし、TEVT機関の強化・増設を進め、若年層の職業訓練や社会人の再訓練を通じた質の高い人材の育成に取り組んでいます。しかし、既存の職業訓練システムは供給主導型で運営されてきており、労働市場ニーズに合致せず卒業生の就業を困難にしています。このため、日本はイエメンの産業構造に留意しつつ、市場ニーズに適合した質の高い職業訓練の提供を目指して協力を進めています。
母子保健
イエメンは、乳幼児死亡率76/1,000出生、妊産婦死亡率430/100,000出生(共に2005年)、また、5歳未満児の53%(2005年)が低栄養とされるなど国民の健康状態は深刻な状態にあり、更に昨今の食糧危機により女性や子供を中心に栄養不良の深刻化が懸念されています。日本は、特に母子の栄養・健康改善に焦点を当て、その改善を目指して協力を進めています。
水資源開発管理
イエメンの降雨量は少なく水資源の多くを地下水に依存しています。近年の急激な人口増加と農業における水使用(特にカーツ栽培)の拡大などによる年間降雨量を大きく超える地下水の揚水によって、水資源の枯渇が予測されている地域が広がっており、地下水の保全や利用管理といった持続可能な水資源の活用が大きな課題となっています。国民生活に不可欠な地方給水整備は、医療保健(安全な水の提供)や基礎教育(学校トイレなど)にも密接に関係し、また農業などの生産活動にも不可欠な資源であり、限られた水資源の保全・管理・有効活用を進めるため、イエメン政府は国家水分野戦略投資計画(NWSSIP)を策定し、日本は他ドナーとともにその支援枠組みに参加しています。
JICAは2005〜2007年にかけて開発調査「水資源管理・地方給水改善計画調査」を実施し、地方給水整備計画の作成、および水資源の枯渇が予想されているサヌア流域の水資源管理にかかるアクションプランを提言しました。
農業開発
食糧の安全保障はイエメン政府にとって最も重要な課題の一つとなっています。全世帯の21.8%は食糧難に苦しんでおり、主食穀物の8割は輸入に依存しているという状況にあります。JICAは、農業機械の供与による、農業生産性の向上への支援と同時に、水不足という問題にも克服するため、近代的灌漑農業技術の導入も支援します。
電力開発
イエメンは中東・北アフリカ地域で最も電化が遅れた国であり、電力へアクセスできる人口は全体の40%、農村地域は20%と言う状況です。イエメン政府は第3次貧困削減計画(DPPR2006-10)で、2010年までに年間20%の発電力増強、電力供給の拡張(電気へアクセスできる人口を53%に向上する)を目標とすると共に、イエメンで産出される天然ガスを活用したガスタービン発電への転換、特に電化の遅れている農村地域への代替エネルギーの活用(風力、太陽光等)による供給の拡大(農村地域の電気へのアクセスを25%に向上する)を目指しています。JICAはイエメン政府のかかる取り組みに対する協力のあり方を模索中です。
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