所長あいさつ

コロナ禍やウクライナ情勢など、現在、我々は世界規模の不透明性と複合的危機に直面しています。こうした中で、2022年3月にJICAフィリピン事務所長の職を拝命しましたが、かかる環境下であるからこそ、強く、国際協力・連帯の役割・意義の重要性を今まで以上に感じています。JICAに寄せられる期待と責任は今までになく大きいと襟を正しています。

フィリピンと日本には60年を超える非常に長い信頼関係があります。相互理解と尊敬の上に成り立った信頼関係です。フィリピンは、現在の厳しい状況下でも堅実な経済成長のための強固な基盤を有していますが、インフラ整備、格差是正、貧困削減、地域の安定・平和、気候変動対策、災害リスクの軽減・管理、海洋協力など、共同で取り組むべき開発ニーズが非常に大きいことを目の当たりにしています。また、フィリピンは、1400社を超える日本企業の進出があるように、大きな若年人口を抱え、巨大な市場及び生産拠点としての両面で日本企業のビジネス展開に大きなポテンシャルを有しています。加えて、日本にとって、欠かすことのできないシーレーンに位置するなど、フィリピンは地政学的にも死活的に重要であり、「戦略的パートナー」としての特別な位置づけにあります。

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こうした中で、重要国フィリピンにおいて、共通の目標である「質の高い成長」、「人間の安全保障」、「地域の安定」に向けた協働を担うこととなる今回の人事異動・配置には大変光栄に思いつつ興奮しています。

ご存知のように、コロナ禍は、この美しい国にも健康危機、経済の混乱、生活の激変を引き起こしました。感染リスクの疫学的影響に加えて、経済成長の停滞や雇用への影響などがみられています。さらに、ウクライナ情勢は、資材・農作物・輸送費など各種コストの高騰を招き、フィリピンの成長戦略にも影響を及ぼしています。

この点、JICAは、予防・警戒・治療を通じた強靭な保健セクターや社会開発、そして、雇用創出も伴う包摂的で持続的な経済回復、明日の繁栄のための積極的なインフラ開発、ミンダナオの安定と発展、日本発のビルド・バック・ベターとのコンセプトに基づく災害リスク管理、多重的・多層的な能力開発・人材育成、日本企業をはじめとする投資促進・ビジネス環境改善などに、幅広く対応していく所存です。ボランティアの派遣やアカデミアやNGO間の交流を通じた一層の相互理解増進・伝統的友好関係発展にも注力します。

フィリピンの明るい未来への協力は地域・世界の安定と日本の未来にとっても有益です。

日本には、明治維新、第二次世界大戦、東日本大震災など、混乱や試練を乗り越えてきたユニークな歴史があります。そして、規律、完璧さ、チームワークといった特長・美点があります。JICAは、国際協力を通じて、日本の経験、ノウハウ、教訓もフィリピンの友人たちとしっかり共有したいと思っています。

JICAのフィリピン向け国際協力に対して、これまでの皆様のご理解とご支援に感謝しつつ、これからもお力添えを頂きたく、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

2022年4月 於マニラ
JICAフィリピン事務所長
坂本威午(さかもと・たけま)